Windows 11特需はもう終わり? PC市場を待ち受ける“2026年の厳しい現実”:「AI PC」は受け皿になるか(1/2 ページ)
Windows 10のサポート終了に伴うWindows 11への移行の需要を受け、2025年のPC市場は伸張したが、2026年には成長が鈍化する可能性もある。
2025年のPC市場は、クライアントOS「Windows 10」のサポート終了を受け、「Windows 11」に移行する需要の恩恵を受けたが、そうした需要が一巡すると状況は厳しくなるかもしれない。2026年には特需が収束する可能性があり、PCベンダーは過去数カ月の売り上げ増が一過性のものだったと受け入れる覚悟が必要だという見方もある。
PC市場を待ち受ける"厳しい現実"
調査会社Contextによると、2025年10月のWindows 10のサポート終了を受け、欧州におけるエンドユーザー向けのPC市場は大きく伸びた。特に英国では同年10月、デスクトップPCの売り上げが前月比48%増加。ノートPCの売り上げも前月比26%増加した。Contextは、成長をけん引した主な要因としてWindows 11への移行を挙げている。
タブレット端末も副次的な恩恵を受け、売り上げは前月比21%増となった。テレワークとオフィスワークを組み合わせる「ハイブリッドワーク」の需要などが影響した。
Contextの上級リテールアナリストであるジェームズ・ベイツ氏は「Windows 10のサポート終了は、直近10年で最も強力な買い替えの要因の一つになっている」と述べる。「買い替えを先延ばしにしていたエンドユーザーは、自身のデバイスを安全に利用するために新しいOSに更新しなければならないことに気付いた」(ベイツ氏)
ベイツ氏は「特に目立つのは、エンドユーザーがより高性能なデバイスに買い替えようとしていることだ」と指摘する。「単に古いデバイスを置き換えるのではなく、最新のソフトウェアを利用でき、ゲームやクリエイティブ用途のワークロードに耐えられるデバイスを購入している」とベイツ氏は言う。このことはPCの性能に対する期待が高まっていることを示している。
高性能なデバイスへの需要は、特にゲーマーやクリエイターから寄せられた。優れた処理性能や冷却性能、長寿命を備えたデバイスを求める動きがエンドユーザーの間で目立った。
加えてPCメーカーは「AI PC」を積極的にラインアップしている。AI PCとは、人工知能(AI)技術関連のタスクの処理に特化したPCのことだ。欧州のエンドユーザーは、NPU(ニューラル処理装置)と呼ばれるAIの推論処理を高速化させるプロセッサを搭載したPCを好む姿勢も見せ始めている。
とはいえ、エンドユーザーにとってPC購入の決め手は、Windows 11への移行の需要、より高性能なデバイスへの買い替えによるもので、AI関連の要素はそれらの次だ。一部のアナリストは、PCベンダーが期待するほどには、AI関連の要素がPCの需要をけん引している段階には至っていないと強調する。
Windows 11への移行の需要が一巡し、エンドユーザーが長寿命のデバイスに買い替えると、PC市場の急成長は短命に終わる可能性があると、アナリストは警鐘を鳴らす。
Contextは、2026年はWindows 10のサポート終了といった要因がないため、PCの買い替えのサイクルがより一般的な複数年の期間に戻ると予測している。
「Windows 11への移行の需要が消えれば、PCベンダーはAI PCを購入する必然性を強調する必要がある。エンドユーザーは、説得力のあるメリットを期待するだろう。PCベンダーが2026年に向け、今回の特需をより持続的な需要に転換できるかどうかが課題だ。PCベンダーがAI PCの価値を伝え、実際に提供できるかどうかによって、市場が勢いを維持できるか、あるいは急激に反転するかが決まる」(ベイツ氏)
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