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「静かな退職」より深刻? 部下が知らぬ間に病んでいく「静かな崩壊」の正体:5人に1人が陥る「静かな崩壊」の実態【前編】
従業員が仕事への意欲を徐々に失い、やがて燃え尽き症候群や退職を招く「静かな崩壊」が広がりつつある。似た言葉の「静かな退職」とは何が違うのか。
「静かな崩壊」(Quiet Cracking)は、職場でじわじわ広がっているトレンドだ。従業員が仕事への意欲を徐々に失い、不満が募り、燃え尽き症候群や退職につながる現象を指す。従業員研修プログラムを提供するTalentLMSが米国の従業員1000人を対象として、2025年3月に実施した調査によると、54%が何らかの「静かな崩壊」を経験したことがあり、5人に1人は「頻繁もしくは継続的に経験している」と回答した。
似た言葉の「静かな退職」(Quiet Quitting)は、従業員が必要最低限の仕事だけを黙々とこなし、積極的に成果を追わないことを指す。これに対して静かな崩壊は、表面化しにくい現象だが、同様に悪影響をもたらす。
「静かな退職」より深刻? 「静かな崩壊」の違い
静かな崩壊は、従業員の満足度がゆっくりと、しかし確実に低下し、退職につながることを意味する。ガラスにひびが入るように、静かな崩壊は表面下で進む。静かな退職は、従業員が仕事との間に明確に距離を置く行為であるのに対し、静かな崩壊は徐々に仕事への意欲が失われていく現象だ。両者の特徴を整理すると、以下の通りになる。
静かな退職
- 必要最低限の仕事だけをこなす
- ワークライフバランスを求めることが動機になる
- 職場との感情的な結び付きが弱い
- 最低限の生産性は維持される
- 意図的な行動である
静かな崩壊
- 時間とともに不満が積み重なっていく
- 欠勤が増えたり、燃え尽き症候群が起きたりする
- 創造性やモチベーションが低下する
- 生産性や能力も低下する
- 意図的な行動ではない
静かな崩壊は組織にはびこる可能性がある退職のトレンドだが、静かな退職とは異なり気付かれにくい。
次回は、静かな崩壊が起きている理由を解説する。
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