「週3出社」でも多過ぎる? エンジニアが突き付ける“許容限界”のリアル:強制出社が招く離職危機
「オフィス回帰」の号令はエンジニアの退職を招く恐れがある。調査で判明した「週3回」という分岐点。開発現場の離職を防ぎ、生産性を最大化するための“納得感のある”出社ルールとは。
セキュリティやチームの協調性を高めることを目的に、一部の企業は「オフィス回帰」を進めている。しかし不用意な「出社強制」は、労働市場で引く手あまたなITエンジニアの離職を引き起こす「経営リスク」になり得る。
ソフトウェアテストサービスを手掛けるSHIFTが2025年10〜11月に実施したエンジニア3192人に対する意識調査からは、エンジニアをつなぎ止めるための“条件”が見えてくる。エンジニアはどのような条件なら離職せず、自らオフィスに向かってくれるのか。
満足度8割が5割に急落 データが示す「週3出社の壁」
調査によると、出社頻度とエンジニアの満足度の間には明確な相関関係があることが分かった。
首都圏のエンジニアにおいて、現在の出社頻度が「週1、2回」または「月1回以下」の層では、約8割が今の働き方に「満足している」と回答した。ところが出社頻度が「週3、4回」以上に増えると、満足度は約5割にまで急落する。企業が「週3回以上の出社」を一律にルール化した瞬間、エンジニアの半数が不満を抱く状態に陥る可能性があるということだ。
実際の勤務実態としては、首都圏と地方の間に大きな差がある。首都圏の回答者は「週2回以下の出社」が過半数を占めており、現状の働き方を手放したくない心理がうかがえる。これに対して、それ以外の地域では「週3回以上」の出社が過半数を占める。
「作業」は自宅、「協業」はオフィスという使い分け
エンジニアは「オフィスに行くこと」自体を否定しているわけではない。調査データを読み解くと、彼らがオフィスに求めているのは「強制された座席」ではなく、「特定の機能」であることが見えてきた。半数以上の回答者が「オフィス出社した方が仕事がしやすい」と感じる場面として、以下の3つを挙げている。
- 上司、部下やプロジェクトメンバーが出社しているとき(53.3%)
- 新しいプロジェクトのキックオフや複数人での目標設定をするとき(52.3%)
- 後輩のトレーニングをするとき/新しい業務を教えてもらうとき(51.0%)
一方で、「自宅で集中できないとき」(33.1%)という理由は3割にとどまる。ここから導き出される最適解は、コーディングやドキュメント作成といった「ソロワーク」はテレワークで実施してもらい、キックオフや教育といった「コラボレーション」の場面では出社を促す運用だ。オフィスの役割は、「個人がPCに向かって作業をする場所」から、「チームの熱量を共有し、複雑な情報を共有するための『連携ハブ』」へと変化している。
「自律的な選択」がモチベーションの源泉
エンジニアが出社に対して前向きになる最大の条件は「自律性」にある。調査では68.2%の回答者が「出社日や時間を自由に選べること」を条件に挙げており、これは「快適なオフィス」(44.8%)や「通勤手当、出社手当などの報酬」(42.4%)を大きく上回る数字だ。
企業が設計すべきなのは、「週○回出社」といった一律のルールではない。セキュリティとインフラを整備した上で、業務フェーズや個人の状況に応じてエンジニア自身が働く場所を最適化できる仕組みだ。
採用戦略としての「セキュリティ投資」
企業がオフィス回帰を進める理由として「セキュリティ確保」がある。一方で本調査が示唆するのは、セキュリティを理由に出社を強制すれば、自由な働き方を求める優秀な人材を取りこぼす可能性だ。
このジレンマを解消するには、セキュリティ投資を「守りのコスト」ではなく、「人材獲得のためのインフラ投資」だと捉え直す必要がある。オフィスと同等のセキュリティ水準を在宅勤務でも確保することで、居住地にとらわれない人材活用を実現できる。これは単なる技術的な解決策にとどまらず、場所を問わずに優秀な人材を獲得するための経営戦略だと言える。
今後の人材戦略において、企業は「出社かリモートか」という二元論から脱却すべきだ。強固なセキュリティを前提に、高度な技術で「場所の壁」を取り払い、場所によらず成果を出せる「戦略的なハイブリッドワーク」を実現することが、競争力を高める近道になる。
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