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「PCと同じ対策」では無防備? モバイルを狙う“見えない脅威”の防ぎ方2026年のモバイルデバイス注目トピック7選【後編】

PCのセキュリティ対策は万全でも、業務用のモバイルデバイスが攻撃者の侵入口になる事態を避けるにはどうすればよいのか。2026年に必須となるモバイル脅威対策(MTD)と、インフラ刷新の急所を解説する。

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 企業のモバイルデバイス活用は、単なる業務効率化の手段を超え、事業を支えるインフラへと進化した。スマートフォンやタブレットが現場から経営層まで浸透する一方で、PCとは異なるセキュリティリスクや通信の課題も浮き彫りになっている。

 ランサムウェア(身代金要求型マルウェア)対策やEDR(Endpoint Detection and Response)の導入など、PCに対するセキュリティ投資は惜しまない企業でも、モバイルデバイスの保護となると、途端に脇が甘くなりがちだ。攻撃者は、PCよりもガードが緩くなりやすいモバイルデバイスを狙っている。モバイルデバイスが社内LANへの「裏口」となり、大規模なインシデントを引き起こすリスクが浮上している。

 本稿は、2026年に向けてITリーダーが注視すべき7つのモバイルデバイス分野のトレンドの中から、セキュリティと基礎技術に関連する重要トピックを解説する。

5.MTDが企業の優先事項に

 モバイルデバイスはPCとは異なる攻撃対象領域(アタックサーフェス)を持つ。企業はPCには強固なセキュリティ対策を導入していても、モバイルデバイスのセキュリティは手薄になりがちなのが現状だ。こうした背景から、モバイルデバイスは攻撃者にとって非常に魅力的な標的になっている。無線通信機能や物理的な接続手段を持つモバイルデバイスは、スミッシング(SMS<ショートメッセージサービス>を利用したフィッシング)、セキュリティ機能の解除、セッションハイジャックなど、モバイルデバイス特有の脅威にさらされている。これらの脅威はいずれも、企業ネットワークへの侵入を許すリスク要因になり得る。

 デバイスやネットワークに存在するデータを保護するために、企業は2026年以降、モバイル脅威対策(MTD)の優先度をこれまで以上に高めるようになると考えられる。MTDツールは、OSを問わずさまざまなモバイルデバイスを監視し、悪意のある活動の兆候を捉え、リアルタイムで検出、警告する。EMMツールや管理ソフトウェアと連携してモバイルデバイスを保護したり、検出した脅威を自動的に修復、排除したりする機能を備えるMTDツールもある。

 モバイルデバイス特有の脅威に対抗するためにモバイルセキュリティへの投資を優先する企業は、攻撃の一歩先を行き、資産を守る準備が整っていると言える。MTDツールはそのプロセスを支援する重要なツールだ。

6.プライベート5Gの利用拡大

 「プライベート5G」とは、企業や自治体が自らの敷地内に構築する、専用の5G(第5世代移動体通信)ネットワークのことだ。通信事業者の公衆網とは独立しており、ネットワーク所有者がアクセス権をコントロールできる。低遅延かつ大容量の通信が可能になるという点で、エンドユーザーへのメリットも大きい。これらの利点から、製造、エネルギー、鉱業、物流、医療、教育といった、高速で信頼性の高い接続が不可欠な業種において、特に有用だ。

 セキュリティ面でのメリットもある。プライベート5Gは公衆インターネットから隔離されており、全ての通信が暗号化される。接続するためには許可されたSIMカードが必要になるため、未許可のデバイスをネットワークから排除し、企業の資産やデータを保護できる。

 こうした背景を踏まえると、2026年は企業が5G導入への投資計画を本格化させる年になるだろう。5Gの周波数帯や機器への投資、コンテナ化、マイクロサービス、プライベートクラウドといった関連技術の採用も進むはずだ。

 この動きは企業のモバイルデバイス戦略にも影響を与える。5Gネットワークでは、有線接続されたPCではなく、自由に動けるモバイルデバイスが主要なエンドポイントになる。5Gネットワークでの利用を前提としたモバイルデバイスの導入に当たっては、以下の要件を検討するとよい。

  • SIMカードを用いた認証機能
    • パスワードではなく、配布された専用のSIMカードを物理的な鍵としてネットワーク接続を許可する仕組みを備えていること。
  • 専用周波数帯への適合
    • 通信事業者が使用する公衆網とは異なる、プライベート5G専用に割り当てられた周波数帯の電波を送受信できること。

 スマートフォンやタブレット以外も管理対象になり得る。監視カメラ、自律走行ロボット、環境センサーといった、特定の業務用途に特化したIoT(モノのインターネット)機器も管理が必要だ。

7.モバイルデバイスでの業務を支えるモダナイゼーションが加速

 市場調査会社Mordor Intelligenceは、アプリケーションのモダナイゼーション市場は2031年までに679億ドルに成長すると予測している。この成長の背景にはアプリケーション、特にモバイルデバイス向けアプリケーションのモダナイゼーションが、企業に目に見える成果をもたらすことがある。

 アプリケーションのモダナイゼーションとは、古いソースコードを整理、再構築し、レガシーなオンプレミスシステムをモダンなクラウドネイティブシステムに移行することを指す。具体的には、ソースコードを記述しない「ノーコード」やほとんど記述しない「ローコード」での開発、UX(ユーザー体験)の刷新、CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)パイプラインの改善といった取り組みがある。

 レガシーシステムのモダナイゼ―ションによって、企業は業務プロセスを最適化し、業務効率を高め、顧客体験を向上させることができる。システムの老朽化に伴う無駄な出費や業務(技術的負債)を削減し、ビジネスのアジリティー(俊敏性)と回復力(レジリエンス)を強化することも可能だ。

 モダンなアプリケーションは、レガシーなアプリケーションと比較して以下の利点がある。

  • セキュリティの向上
    • 企業データの保護や規制基準に適合させやすい。
  • 連駅の容易さ
    • 他の社内システムや外部サービスと連携させやすい。
  • 保守性の高さ
  • マイクロサービスアーキテクチャの採用によって、機能ごとの修正、更新がしやすい。

 アプリケーションのモダナイゼーションは、システム運用に大きなメリットをもたらす。近いうちに「選択肢の一つ」ではなくなり、生存をかけた「必須要件」になるだろう。モダナイゼーションを進める企業が成長する一方、後れを取った企業は停滞を余儀なくされるはずだ。

結論

 企業のモバイルデバイス活用は、業務を効率化し、イノベーションを加速、競争上の優位を築くための強力な武器になる。

 ただし、モバイルデバイス分野は新技術によって日々変化している。企業のリーダーはこれらのトレンドを知ることに加えて、それを自社の戦略として具体化する行動力が不可欠だ。デバイス群に対するID主導のガバナンス、MTDツールの導入、共有デバイス利用の整備といった取り組みに優先順位を付けることが重要になる。変化の方向性を正しく理解し、迅速に動く企業こそが、「モバイルファースト」の世界で成功をつかめるだろう。

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