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Oracleの人員削減が示すAIの代償 IT部門を襲うインフラ費高騰の死角AIプロジェクトの4割が頓挫

過熱するITベンダーのAI投資。その回収コストは、将来的な利用料高騰として企業に跳ね返る恐れがある。Oracleの人員削減や「AI導入の4割が頓挫」というGartnerの予測から、IT部門が打つべき予算防衛策を読み解く。

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人工知能 | Oracle(オラクル) | IT投資


 2026年、IT業界を席巻するAI(人工知能)ブームの裏で、各社が描く成長計画にほころびが見え始めている。

 経営層から発せられた「最先端のAIツールを導入して業務効率化を図れ」との号令は、IT部門を苦しめている。そのAIツールを支えるインフラの裏側で、ベンダー各社がどれほどの「リスク」を抱え込み、それが将来企業の予算増としてどう跳ね返ってくるかを直視することを忘れてはならない。

 顕著な例が、Oracleの動向だ。同社が2026年3月に実施した2026年度第3四半期(2025年12月〜2026年2月)の業績発表によれば、クラウドインフラ事業の売上高は2025年度同期(2024年12月〜2025年2月)比84%増の49億ドルと好調だ。Meta PlatformsやNVIDIA、OpenAIなどの大口顧客からの需要を満たすため、2026年中には450億〜500億ドルを社債と株式発行で調達し、AIインフラ投資に注ぎ込む計画を立てている。

 一方で借入金は増大している。通信社Bloombergは2026年3月、OracleがAI技術のワークロードを処理するためのデータセンター拡張計画を推し進める中で、数千人規模のレイオフ(一時解雇)を計画していると報じた。「ソースコードを生成するAIモデルの効率が飛躍的に向上したことで、より少ない人員と短い時間で、より多くのソフトウェアを開発できるようになった」とOracleは主張する。

 これは投資家や大手ITベンダーの内情にとどまる話題ではない。ハイパースケーラー(大規模なクラウドサービス事業者)が、AIアクセラレーター(AI関連の処理を高速化するハードウェア)を備えた高度なデータセンターの構築に巨額の資金を投じ、その費用を回収するために頼りにしているのは、他ならないユーザー企業のIT部門や事業部門が支払う「予算」だ。

「AIプロジェクトの4割が頓挫する」時代、IT部門はどう予算を守るか

 Oracleが実施しているAIアクセラレーターへの投資に関連して、同社のAIデータセンターの収益性について質問が出た。これに対し、同社の共同CEOを務めるクレイ・マグワイク氏は「粗利益率は30〜40%の範囲になると見込んでいる」と答えた。

 マグワイク氏によると、Oracleの顧客は、安全でプライベートな手法を用いて、最良のAIモデルと自社の社外秘データを連携させることへの関心を強めている。自社で独自の大規模言語モデル(LLM)を一からトレーニングするよりも、このアプローチの方が普及していると同氏は語る。

 マグワイク氏は次のように指摘する。「当初は、大半の企業が独自のLLMに特殊な学習を施すと考えられていたが、実際はそうではない。現在普及しているのは、優れた既存のAIモデルを採用し、それを自社の非公開データと安全に連携させる手法だ」

 ただし他のクラウドベンダーと同様に、Oracleも自社のクラウドインフラで顧客にAI技術を実行させる必要がある。マグワイク氏によれば、同社は「自社ハードウェアの持ち込み」や「顧客による前払い」といった新しい資金調達モデルを導入した。これによって、Oracleは追加の借り入れや株式発行によるキャッシュフローの悪化を招くことなくインフラを拡張できるという。この調達モデルは、既に290億ドル規模の契約の獲得に寄与したと同氏は説明する。

 Oracleをはじめとするクラウドベンダーが答えを出さなければならない疑問がある。この成長が現実的なものか、サステナビリティー(持続可能性)があるのか、それとも単なる業界の誇大広告に過ぎないのかという点だ。調査会社Gartnerによると、企業はAI技術の能力について知識を深め、より現実的な視点を持つようになった。誇大宣伝を真に受けず、ビジネスの価値に焦点を当て始めているという。

 Gartnerが2025年6月に発表した予測によれば、費用の高騰や不明確なビジネス価値、不十分なリスク管理などが原因で、2027年末までにエージェンティックAIプロジェクトの40%以上がキャンセルされる見込みだ。

 一方で、Gartnerが2025年7月に発行した2025年版生成AIのハイプサイクルでは、マルチモーダルAI(複数形式のデータを処理できるAIモデル)などの技術が、導入対象になり得る潜在的な企業層(ターゲットオーディエンス)の5〜20%に浸透し、企業に「変革をもたらす価値」を提供する可能性が示唆されている。

 これらの革新的な事例は、ROIの期待を上回るだけではなく、新たな収益源や競争優位性など、企業に変革的な価値をもたらしている。「これらの傑出した企業は、持続的な競争優位性を築く準備が整っている」と、Gartnerのシニアディレクターアナリストであるロベルタ・コッザ氏は付け加える。

 しかしコッザ氏によれば、こうした変革的な活用事例は影響力はあるものの、まだ浸透し切ってはいない。Gartnerは、何がこれらの特定の事例を成功に導いたのかを理解するための調査に注力している。この事実が示唆するのは、AI技術が企業にどのような変革をもたらすのかについて、依然として不確実性が存在することだ。

 2025年12月、投資会社The Bank of New York Mellon(BNY)はレポートにおいて金融機関UBSとJPMorgan Chaseの数値を引用し、1兆5000億ドルのAI関連の負債が社債市場を圧迫し、変動性を高める可能性があると指摘した。BNYでシニア投資ストラテジストを務めるセオドア・ベア・ジュニア氏は、「過去のドットコムバブルや通信網構築の時代と類似しており、インフラからの見返りが期待に後れを取った際のリスクを示唆している」と記した。

 AI技術は弾ける運命にある「バブル」なのか。Gartnerの予測が示すように、エージェンティックAIプロジェクトの4割が期待されたビジネス価値を証明できずにキャンセルの危機に直面している。そうした中で、IT部門や事業部門の責任者は、自らがどれだけの資金を投じる覚悟があるのかについて、現実的になる必要がある。

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