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そのストレージは“時代遅れ”? AI導入で直面する「想定外の問題」なぜ今ストレージのモダナイゼーションが必要なのか

AI技術の台頭によって、従来のストレージ構成が限界を迎えつつある。高度化するサイバー攻撃や急速に変化するサプライチェーンにおいて、企業が次期インフラ選定で目を向けるべき5つの傾向を解説する。

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人工知能 | IT投資 | ストレージ


 企業のストレージ戦略は、アプリケーションとデータを保存、管理、保護するために、十分な容量と処理能力、適切な回復力(レジリエンス)を確保することに主眼を置いてきた。かつてストレージの役割といえば、データを安全に保存し、必要な時に取り出せる「容量」と「信頼性」を確保することだった。

 しかし、その「当たり前」の前提が覆されようとしている。もちろん、これらの要件は重要だが、それだけでは現代のビジネス要求に応えることはできない。AI(人工知能)ツールの爆発的な普及、巧妙化するサイバー攻撃、予測困難な経済状況。こうした多方向からの圧力が、これまでのインフラ構成に限界を突き付けている。それを受けて、企業は自社のインフラを見直し始めているのだ。

IT戦略の成否を分ける「5つの要因」

 Informa TechTargetの調査部門であるOmdiaが2026年4月に公開した調査レポート「Research Report: The Storage Modernization Imperative」は、こうした負荷がすでに大きな影響を及ぼしていることを浮き彫りにした。モダナイゼーションの必要性はかつてないほど高まっており、調査対象者の80%が、ストレージのモダナイゼーションはシステム全体の有効性にとって極めて重要だと考えているのだ。

 この調査は2025年後半に北米の中規模および大規模企業のITインフラ担当リーダー449人を対象に実施された。以下では、調査から明らかになった主要な5つの傾向を紹介する。

1.AI技術が依然としてストレージの話題の中心を占める

 事業の中心としてAIツールを導入し、適用範囲を広げようとする企業が増えるにつれて、そうした企業は新たな機能を必要とするデータやインフラの課題に直面しがちだ。独自のデータを用いて大規模な推論処理を実現しようとする企業において、この傾向は顕著だ。

 調査から、AI技術がストレージ予算を押し上げる最大の要因であり、処理性能の向上が最優先の課題であることが判明した。加えて、ストレージインフラを広範なデータシステムと集約、連携させることは、技術面だけでなく組織面でも大きな壁になっている。調査では、データ活用チームとインフラ運用チームの関係を「非常に協力的だ」と表現する回答者はおよそ3分の1にとどまった。AI技術への投資から価値を引き出そうという重圧が高まる中、両チームの緊密な協力体制が成功の鍵になるだろう。

2.ストレージ戦略はますますハイブリッドになる

 一般的な企業では、SAN、NAS、HCI、SDS(ソフトウェア定義ストレージ)、クラウドサービスなど、多様な形態を併用している。その中でも、2026年現在はハイブリッドクラウドが主流の運用モデルだ。これは過去の傾向からの顕著な変化を示している。オンプレミスストレージかクラウドサービスかを問わず、企業システム全体にわたってストレージとデータを一元管理することの重要性が広く浸透した結果だと言える。

 データがハイブリッドクラウド全体に分散している現状を考えれば、この変化は驚くべきことではない。AIツールがクラウドサービスとオンプレミスサーバをまたいで稼働する「ハイブリッドワークロード」として定着したことで、システム全体を統制するデータ制御層(コントロールプレーン)の必要性が高まった。

3.ストレージの自由度がかつてなく重要になっている

 ストレージの構成と、ソフトウェアを稼働させるインフラとの関係は劇的に変化している。企業はこれまで特定の仮想化ソフトウェアやクラウドベンダーの製品、技術に合わせて標準化することで、システムを単純化してきた。しかし2026年現在は、以下の要因によってますます高い適応力が求められている。

  • 複数のハイパーバイザーを使い分ける必要性
  • 従来の仮想化技術に加えて、コンテナを扱う必要性
  • データの所在を自国内に限定する「データ主権」の要件に適合するインフラの必要性

 かつて、こうした構成の自由度を求めれば、引き換えに運用の複雑さが増すという課題があった。しかし、1人の担当者が幅広い領域を担う「ITジェネラリスト」の時代において、データセンターからクラウドサービス、エッジ(データの発生源の近くにあるデバイス)にまでインフラが広がる中、複雑さを言い訳にすることは許されない。

4.セキュリティは事業継続に不可欠である

 ストレージシステムがサイバー攻撃の標的として狙われやすいという点も調査レポートは強調している。回答者の半数以上が、自社のオンプレミスにある主要なストレージがサイバー攻撃に対して脆弱(ぜいじゃく)だと考えていると答えた。企業のストレージ購買担当者が次期ストレージの購入に際してセキュリティ機能の強化を優先することは妥当な判断だ。特に物理的なストレージの保護と、そこに保存されたデータの保護を両立する手段が強く求められている。

 サイバー攻撃の手口が巧妙化する中、IT資産を保護し、攻撃を受けた際にも迅速に復旧させる能力は、もはやIT部門だけの問題ではなく、経営上の必須要件だ。しかし、具体的にどのような手法で対処すべきかについては、意思決定者の間でも明確な正解が見いだせていない。この領域における教育と、最新技術への理解を深めることが急務になっている。

5.将来のインフラ要件が不確実になるにつれ、調達手法も進化する

 2026年現在、IT部門はオンプレミスストレージの調達に、従来の設備投資(Capex)やリースモデルを利用している。しかしAIツールのように将来のインフラ需要が予測しにくい用途が増えたことで、従来の買い切りモデルは適合しにくくなっている。

 その結果、意思決定者は不透明な状況下でも自由に動けるよう、新たな調達手法を検討し始めている。その中で中心となるのが運用費(Opex)を重視する手法であり、「as a Service」モデルの導入を検討している。これに対してストレージベンダーもここ数年、こうした要望に応える手段を急速に拡充させてきた。顧客の要求が激しく変化し続ける中、調達モデルのさらなる進化は避けられないだろう。


 近年のインフラ構造の転換はさらに加速している。企業の資産であるデータを保存、保護するというストレージの根本的な役割に変わりはない。しかし、多方面から押し寄せる要求に応えるため、現代のストレージ構成にはこれまで以上の役割が期待されている。それは、より安全で、より知的で、何より適応力が高いシステムであることだ。

 意思決定者が直面している想定外の難題もある。世界的なサプライチェーンの混乱によって、メモリなどの部品の価格が高騰し、調達までの期間が長期化している問題だ。こうした負の圧力も、皮肉なことにストレージ最新化の必要性を際立たせる結果になっている。

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