平均勤続年数はわずか6年
IT業界の女性は10年でいなくなる――「9割が離職」の裏にある本当の理由
IT業界で働く女性の多くが「居場所のなさ」やメンタルへの悪影響を感じ、短期間で離職を選択している。異業種への人材流出が止まらない中、彼女たちを追い詰めている職場の「見えない壁」とは何か。
華やかで成長著しいIT業界。しかしその裏側には、せっかくIT業界に足を踏み入れた女性の約9割が、10年以内にこの業界から姿を消しているという事実が潜んでいる。
セキュリティベンダーAkamai Technologiesの調査によると、英国のIT業界における女性の過半数(57%)がキャリアの最初の5年以内にIT業界から離れ、87%が10年以内に離職している。平均勤続年数に換算すると、わずか6年強にすぎない。
なぜ、これほど短期間で人材が流出してしまうのか。調査からは「条件さえ整えばIT業界への復帰を希望する」女性の切実な本音も透けて見える。彼女たちは職場の何に絶望し、何を求めて去っていったのか。
なぜIT業界を去ってしまうのか
この調査は2026年2月末から3月上旬にかけて、Akamai Technologiesの委託を受けた調査会社Censuswideが実施した。対象となったのは英国全土の18歳以上の成人女性1500人で、このうち1000人はIT企業での勤務経験がある、または非IT企業でIT専門職に就いていた経験があるものの調査時点ではその職を離れている人、500人は一時離職を経た後、IT企業への復職を果たした人だ。
Akamai Technologiesで欧州・中東・アフリカ(EMEA)地域のマネジングディレクターを務めるナタリー・ビリンガム氏は次のように述べる。「こうした調査結果は、あらゆる世代の女性がIT業界でどうキャリアを築くかについて、英国のIT業界が今まさに前向きな影響を与えられる絶好のチャンスにあることを示している」
「昇進の機会や自由度の高い働き方、適切な給与水準を提供することで、技術革新の最前線に立つIT部門のリーダーは、IT業界に大きな変化をもたらすことができる。定着率を高め、管理職の多様性を育み、女性が活躍できる条件を整えられる」(ビリンガム氏)
英国のIT業界で女性の数が伸び悩んでいることは、今に始まったことではない。採用という難しい課題をクリアできたとしても、なぜ人材が定着しないのか、その理由は過去の調査でも複数判明している。
目標となる身近なロールモデルの不在に加え、昇進の機会の乏しさや働き方の自由度の低さが、女性がIT業界から離れる理由としてよく挙げられる。調査では、直接的な離職理由のトップはワークライフバランスの欠如(42%)だったが、離職の背景にある複合的な要因としては、多様性を受け入れる企業文化の欠如が大きく影を落としている。
52%の回答者が、「自分の居場所がないと感じた」ことが離職の決断に影響したと感じている。40%は、「管理職に男女の多様性がないこと」を指摘している。
74%が、離職の判断に影響した要因として「昇進の機会の欠如」を挙げた。そのうち19%は、それがIT業界から離れる決定的な理由だったと述べている。
IT業界で働く女性にとって、自由な働き方は継続的な課題だ。家庭での介護や育児などの負担が男性に比べて女性に不当に重くのしかかっている中、働き方の自由度が低い職場では仕事との両立ができず、離職を余儀なくされる場合がある。
調査において、IT業界から離職した女性の過半数(56%)は「労働時間の調整が難しいこと」が離職理由だと答えた。15%は「自由度の高い働き方ができなかった」こと、42%が仕事と私生活の調和である「ワークライフバランスの欠如」を主要な離職理由のトップに挙げている。これは、IT業界から離れる主な理由として、極度の疲労による「燃え尽き症候群(バーンアウト)」や「メンタルヘルスへの悪影響」を挙げた19%の女性の回答とも関連している。
スキルがあれば異業種に転職しやすい欧米の労働市場の背景もあり、IT業界を離職した女性のうち、13%は金融業界に、13%は教育業界に転職し、12%は医療業界で働くことを選んだ。一方で、15%は調査時点では就業していない。
職場への不満からではなく、自らの前向きな意思でIT業界を離れた層もいる。「完全に自己都合」と答えた割合は35%、「おおむね自己都合であり、現在の就業状況に満足している」と答えた割合は31%だった。「IT業界に復帰する予定はない」と答えた女性も一定数存在する。
ただし「条件次第ではIT業界への復帰を前向きに検討する」という回答も39%に上った。給与や昇進の機会、自由な働き方、給与などが主な検討要因になっている。離職した女性の38%が「出社と在宅を組み合わせる『ハイブリッドワーク』」を、37%が「時短勤務やジョブシェアリング(1人のフルタイム労働者が担当する職務を、2人以上が分担する働き方)などの自由な働き方」を復帰の条件として求めている。
実際に離職後にIT業界へ復帰した女性のうち、52%が「給与の増加」を理由に挙げた。「新たな昇進の機会」「ワークライフバランスの改善」を理由に復帰した割合が、それぞれ同率の43%だった。復帰を果たした女性の90%は「少なくともあと2年は働き続ける可能性が高い」と述べており、復職後の定着率の高さがうかがえる。
プロフェッショナル人材の復職支援(リターンシップ)を手掛ける団体Career ReturnersのCEO、ヘーゼル・リトル氏は次のように話す。「今回の調査結果によって、第一線への復帰を望む中堅層の女性が何を求めているのかが浮き彫りになった。条件がそろえば約4割が復帰に前向きであることは励みになる」
「人材定着には昇進への道筋(キャリアパス)が不可欠だが、復帰を望む女性に対して、まずは業界へ戻るための明確な支援体制を企業が用意することも重要だ。復帰と昇進の両方の道筋を企業が構築することで初めて女性が戻り、成長し、定着できる条件を整えられる」(リトル氏)
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