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GoogleやMetaの足かせに データセンターへの投資を阻む“電力不足以外の問題”相次ぐ建設計画の延期

アジア太平洋地域でデータセンター建設に向けた投資が盛んだ。しかし、GoogleやMeta Platformsといった主要企業には、深刻な電力不足とさらなる障壁が立ちはだかっている。資金があっても解決できない問題とは。

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 私たちが日々当たり前のように利用している生成AIやクラウドサービス。その背後では、膨大なデータを処理するための巨大な施設「データセンター」がフル稼働している。コンサルティング企業Deloitte Touche Tohmatsuの予測によれば、2030年までにアジア太平洋地域(APAC)におけるデータセンター投資額は8000億ドルに達する見込みだ。

 しかし、この建設ラッシュは世界の送電網が持つ限界と衝突している。GoogleやMeta Platformsをはじめとする大手IT企業は、AIブームをけん引するために新たなデータセンターを建設しようとしている。この動きにおける最大の懸念事項はもはや「建設用地の確保」や「税制優遇」ではない。「十分な電力をいかに確保するか」という、物理的な制約だ。

お金で解決できないデータセンター建設問題

 デジタル制御やエネルギー管理を手掛ける多国籍企業Schneider Electricでサービス運用担当シニアバイスプレジデントを務めるジャン・クリストフ・モロー氏は、APAC企業におけるITを活用したビジネスの拡大において、電力確保が最重要課題になっていると指摘する。

 モロー氏は「2026年現在のデータセンター建設地の選定基準は、電力を確保できる場所であるかどうかだ」と語る。MicrosoftやGoogleといった大手IT企業が一斉にデータセンターの建設を計画しているものの、十分な電力がなく、施設の拡張すら困難を極めている。

 この課題の規模は前例がない。国際エネルギー機関(IEA)の報告書によれば、2022年に460TW(テラワット)hだったデータセンターの世界的な電力需要は、2026年までに1000TWhを突破すると予測されている。これは日本の総電力消費量に匹敵する規模だ。

 APAC全域で、電力の逼迫はすでにデータセンターの建設に影を落としている。主要なIT拠点であるシンガポールでは国土の狭さもあり、電力供給の制約からMeta Platformsなどの主要企業が建設計画の延期を余儀なくされた。情報通信メディア開発庁(IMDA)など、国のインフラを厳格に管理するシンガポール政府機関は、新規電力割り当てのスケジュールや供給制限の都合上、企業に対して「実質的に2028年までは提供できる十分な電力がない」と宣告しているという。

 こうした背景から、自前で発電設備を整えるデータセンター事業者が目立ってきた。彼らは敷地内の発電機や、施設内で電力を自給自足する小規模な電力網(マイクログリッド)、大型バッテリーを用いた蓄電システムなどに投資している。米国では安定した電力を確保するため、専用のエネルギー施設や小型モジュール炉(SMR:次世代の小型原発)の活用を検討する主要企業も現れた。

未開発地域でのデータセンター建設

 依然として電力を活用できる余地がある市場では、データセンター事業者やハイパースケーラー(大規模クラウドベンダー)が、既存のしがらみがない未開発地域(グリーンフィールド)での新規建設に熱視線を送る。

 インドでは、自国データの国内保存を義務付ける規制強化を背景に建設ラッシュが起きている。同国の大手コングロマリットReliance Industriesは、AIインフラ構築に今後7年間で10兆ルピー(約1098億ドル)を投じる計画を発表した。Microsoftも2026年半ばに同国で4番目かつ最大規模のデータセンターリージョンを開設する見込みだ。

 中東、特にサウジアラビアや湾岸諸国もデータセンターの激戦区になっている。脱石油依存を目指す国策のもと、政府系ファンドの膨大な資金援助を受けた主要企業が、GW規模の超巨大施設の建設を提案するケースが相次いでいる。

 モロー氏によれば、新規の投資家は巨額の資金を簡単に用意できる一方で、データセンター運営の深い技術的知見を持たない。そのため、資金を現実のインフラとして形にするには、エンジニアリングパートナーへの依存が避けられないという実態がある。

データセンターの徹底的な効率化

 深刻な電力不足は、IT業界全体にデータセンターの効率化を迫っている。Schneider Electricのエンジニアは、施設建設において各部門が孤立して動く従来の「縦割り構造」を打破しようと試みている。

 これまで、冷却システム、サーバなどのITインフラ、配電網はそれぞれ独立して設計されてきた。しかし今では、それらを緊密に連携させ、一元的に監視することで、消費電力の無駄を極限まで徹底的にそぎ落とさなければならない。

 有望な手段が直流(DC)電力の活用だ。一般的な送電網の大部分は交流(AC)電力で稼働しているが、コンピュータが使う直流電力に変換する過程で大きなエネルギー損失が生じる。

 シンガポールを拠点とするST Telemedia Global Data Centres(STT GDC)などのデータセンター関連企業の一部は、直流電力で稼働するデータセンターを試験導入している。潜水艦の直流エネルギー網を管理してきた経歴を持つモロー氏は、この仕組みが大幅な効率向上をもたらすはずだと期待を込める。

 世界情勢というより大きな枠組みで捉えると、地政学的な問題や部品調達の障害が重くのしかかる。再生可能エネルギーへの移行ペースは国によって異なり、ウクライナ情勢などに端を発するヨーロッパのエネルギー危機は、一部の国に石炭火力発電所の再稼働を決断させた。モロー氏はこの石炭回帰を「現代における最大の戦略的失敗」と批判する。その上で、太陽光発電や蓄電技術を駆使し、環境負荷を抑えるサステナビリティー(持続可能性)を業界の揺るぎない指針に据え続けるべきだと強調する。

 とはいえ、データセンター拡張の前に立ちはだかる最大の障壁は人材だ。最新のデータセンター設備は専門性が高く、電力不足と同じくらい施設の建設を遅らせる深刻な人手不足を引き起こしている。

 「電力の話は頻繁に出るが、人材について語られることはない」とモロー氏は警鐘を鳴らす。市場で冷却技術の専門家を見つけるのは困難を極めるという。「配管作業は計算通りにはいかず、長年の経験や勘に頼る職人技だ。優秀な溶接工を探すだけでも一苦労だ」と同氏は述べ、現場の切実な実態を訴える。

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