情シスの8割超が「触りたくない」システムを保有 負の連鎖を断ち切るには?:SaaS導入で逆に手作業が増加?
最新のクラウドサービスと既存システムの連携ができず、担当者が手作業でデータを処理する事態が多発している。属人化、ブラックボックス化したレガシーシステムが、現場にもたらしている「闇」とは。
度重なる改修によってプログラムの構造が複雑化し、ソースコードを1行直しただけでどこに致命的なエラーが出るか分からない――。そのような「可能な限り触りたくない」「改修要望が来ると憂鬱(ゆううつ)になる」システムを抱える企業が8割を超えていることが、システムベンダーのNTTデータビジネスブレインズによる調査で明らかになった。
2026年4月17日から4月18日にかけて、NTTデータビジネスブレインズは全国の情報システム実務担当者221人を対象に、レガシーシステムに関するアンケートを実施した。その結果、システムの老朽化が単なる技術的負債にとどまらず、現場の担当者に強い拒絶反応や心理的疲弊を強いている実態が浮き彫りになった。
事業部門が最新のSaaS(Software as a Service)を導入しても古いシステムと自動で連携できず、結局は情報システム部門が手作業でデータを移し替えるといった矛盾も生じている。企業を根底から支えるはずのシステムが、逆に事業成長の足かせになっている現状と、その打開策を読み解く。
ドキュメントと実態が完全に乖離してしまっているシステム
担当者がシステムを触りたくないと感じる最大の要因は、中身が完全にブラックボックス化していることにある。企業が運用している主要システムにおいて、設計書などのドキュメントと実際のプログラムが「ほぼ完全に乖離(かいり)している」または「存在しない」と答えた割合は半数近くに達した。「部分的に一致していない」を含めると8割近くになり、保守運用においてソースコードを1行ずつ解読する非効率な作業を強いられている。
特定のベテラン担当者が急に退職した場合の影響について、「一部のサブシステムやツールが回らなくなる恐れがある」が59.8%、「基幹システムを含む複数の重要システムが停止する恐れがある」との回答は15.6%に上った。古いプログラミング言語や独自の技術で作られたシステムは若手への引き継ぎが極めて困難であり、全体の7割以上で特定の個人に依存した綱渡りの運用がなされている。
キャリアへの危機感と労働環境の悪化
レガシーシステムの保守運用を続けることで、ITエンジニアとしての市場価値が下がると感じている担当者は7割を超えた。現場のエンジニアは新しい技術や開発手法を身に付けたいと考えているものの、他人が書いた古いプログラムの解読に時間を奪われている。「このままではレガシーシステムしか扱えない人材になってしまう」という焦りが、モチベーションの低下や優秀な若手の離職を誘発している。
新しいクラウドサービスと旧システム間にデータ連携の仕組みがないため、データのダウンロードや手作業での加工といったアナログな無駄が発生している企業も7割以上に上る。こうした手作業の増加に加え、バックアップや復旧の仕組みが不十分なことによる障害対応の長期化が、夜間作業や休日出勤を常態化させている。約7割の担当者が月に1回以上の休日出勤や夜間作業を強いられており、肉体的および精神的な疲弊が高まっている状態だ。
抜本的な刷新とインフラの再構築へ
経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」対策の進展について、「ほぼ対策はできている」企業はわずか7.5%にとどまった。最も多かったのは「現場の努力でなんとか運用を回している」企業であり、多くが現場の気合と根性による延命処置に依存している現実が明白になった。経営層の号令とは裏腹に、予算や人材の確保が伴わず現場にしわ寄せが来ている。
解決策は、現場への丸投げをやめることだ。経営層はITインフラの刷新をコストではなく事業継続のための最重要投資と位置付ける必要がある。システムの棚卸しを実施し、捨てるべきシステムは廃止してクラウドサービスに移行することで、現場のエンジニアが守りの保守から攻めのインフラ構築に時間を使える組織づくりが急務だ。
現場の実務担当者が本来の価値創造に注力するためには、プログラミング知識がなくても現場主導でシステムを構築できるノーコード/ローコード開発ツールなどを活用し、自由度が高い業務プロセスを再構築することが解決策の一つとなる。レガシーシステムからの脱却を先送りせずに最新ツールを取り入れる企業こそが、深刻化する人材不足を乗り越え、持続的な成長を実現できる。
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