7割がコスト増を実感
VMware離れがやっぱり加速 2500台のVM移行に挑む製造大手から学ぶ現実解
Broadcomによる買収後、VMwareユーザーの72%がコスト増に直面している。契約更新期を迎え、HPEやNutanixといった代替候補への移行が本格化している。移行期間中の二重課税的なコスト負担というわなはあるが、浮いた予算をAI投資へ回すなど、インフラ刷新を戦略的機運と捉える動きも加速している。
VMwareからの「大移動」が、ついに現実のものになろうとしている。
2023年11月に米Broadcomによる約690億ドルのVMware買収が完了して以降、ユーザー企業はコスト増、製品やライセンス体系の変更、サポートの質の低下という課題に直面してきた。しかし、長年投資してきたプラットフォームからの移行は口で言うほど容易ではない。特に契約期間中のユーザーにとってはなおさらだ。だが現在、多くの契約が満了時期を迎えつつある。ユーザー企業は代替案を積極的に模索しており、その大半がコスト削減を主な目的としている。
Informa TechTargetの調査部門であるOmdiaが2025年に実施した調査によると、BroadcomによるVMware買収後、ライセンスモデルの変更によりコストが増加したと報告した企業は72%に上っている。
VMwareの競合各社の中には、この好機を逃すまいと移行に向けたインセンティブを提示する企業もある。HPEは、条件を満たす顧客で最大1年間のライセンスを無償提供する「プラットフォーム移行プログラム」を通じ、より多くの顧客を獲得したい考えだ。
NutanixやStorMagicなどのベンダーに加え、OpenStackやProxmoxといったオープンソースプロジェクトもVMwareの代替候補として浮上している。例えばNutanixも、条件を満たす顧客に1年間のライセンスを無償提供する移行インセンティブを打ち出している。
Broadcomの担当者は、本件についてのコメントの要請に応じなかった。
数年越しの移行プロセス
2026年6月に開催されたイベント「HPE Discover 2026」では、複数の企業がVMwareからの移行を計画中、あるいは既に開始したと明かした。
デンマークに拠点を置く世界的な製造企業のDanfoss(ダンフォス)は、大規模なVMware移行のさ中にある。同社はワークロードをHPEの「HPE Morpheus Software - VM Essentials」(以下、VME)へと移行させている。その理由はコストだけではない。
Danfossのシニアバイスプレジデント兼CIO(最高情報責任者)を務めるスーネ・トルンボ・バーストラップ氏は、「これは当社全体のデジタルバックボーンについてのアーキテクチャの考え方に深く関わっている」と話す。「そのバックボーンで、必要な時に、必要な場所で、最も効率的にワークロードやデータにアクセスできるようにしたいと考えている」(バーストラップ氏)
ITインフラ部門の責任者を務めるイェッペ・アゲルバク・クリステンセン氏によると、今回の移行対象は同社の仮想マシン(VM)環境にある約1100台のサーバだ。移行先のプラットフォームは、デンマークにあるデータセンターノード全体で2500台以上のVMをサポートするという。移行は2025年春から段階的に開始しており、2027年末までに完了させる予定だという。
クリステンセン氏は米TechTargetへのメールで次のように述べている。「この移行はインフラの簡素化と標準化を進め、将来のワークロードや拡張のニーズに備えるための重要なステップだ。当社の仮想化環境は、多くの環境が混在し透明性が低く、拠点間での一貫した管理が困難になり、複雑さが増していた。同時にコストも上昇しており、現在の構成を維持することは難しくなっていた」
Danfossのインフラの大部分は既にHPE製品で稼働している。バーストラップ氏はHPE Discoverで、「VMEと『HPE GreenLake』の組み合わせは汎用性が高く、AIワークロードへの備えにもなる」と語った。
VMEの実力
バーストラップ氏は、HPEが提示したVMEのビジョンを高く評価している。HPEは同イベントで、ハイブリッドクラウド向けのセルフサービス型プロビジョニングと、可観測性(オブザーバビリティ)および運用機能を組み合わせた「Morpheus Software」の新機能を発表した。
新機能の「HPE Morpheus Orchestration Copilot」は、ワークロードのプロビジョニングを自動化し、オーケストレーションするものだ。また、ユーザーは「HPE Zerto Software」による継続的なデータ保護機能を使い、VMwareからHPEのVMへとワークロードを移行できる。
調査会社TheCube ResearchおよびSmuget Consultingのアナリスト、ロブ・ストレッチェイ氏は、HPEは必要な要素を数多く備えていると指摘する。
「MorpheusのKVMスタックやコンテナスタックは、VMwareほど高度ではない。セキュリティなどで劣る部分はあるだろうが、ライセンスコストの面でそれを補えるはずだ」(ストレッチェイ氏)
HPEの最高技術責任者(CTO)であるフィデルマ・ルッソ氏は基調講演で、移行は机上では魅力的に見えるが、往々にしてコストの「二重負担」が生じると指摘した。
「新しいプラットフォームへの投資と移行を進めている間も、全てのアプリケーションを稼働させ続けるために古いプラットフォームの料金を支払わなければならない」(ルッソ氏)
調査会社Moor Insights & Strategyのアナリスト、マイク・レオーネ氏は、HPEのプラットフォーム移行プログラムについて、移行のハードルを下げるための賢明かつ実用的な方法だと評価する。
レオーネ氏は米TechTargetへのメールで、「本当の試練は、大規模な移行をいかにスムーズに完遂できるか、そして本番環境への移行後もコスト削減効果が持続するかどうかだ」と記した。
この状況をどう切り抜けるべきか
アメリカンフットボールチームのDallas Cowboys(ダラス・カウボーイズ)でCIOを務めるマット・メシック氏は約1年前、VMwareのコストについて窮地に立たされていたという。
メシック氏はHPE Discoverの分科会で、「最優先で解決すべきは、Broadcom買収に伴う状況への対応、つまりこの状況からどう抜け出すかだった」と振り返る。その時、同氏はVMEに出会った。
移行によってコストに余裕ができたことで、最終的に同氏は「HPE Private Cloud AI」の導入を試みることになった。
「全てが完璧にうまくいった」とメシック氏は語る。
ニューオーリンズ市の公共安全サポートサービスおよびリアルタイム犯罪センターのディレクターを務めるロス・ブルジョア氏にとっても、VMwareからの移行は将来的なプロジェクトの候補だ。
ブルジョア氏はHPE Discoverで米TechTargetに、「今の契約期間が終了次第、市場にあるあらゆる選択肢を検討するつもりだ。価格が大幅に上昇すると予測しているからだ」と語った。
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