SMBのセキュリティポリシーはこう作る【前編】
有事のために……ポリシー作りのキホンを伝授
セキュリティポリシーの全体像や目的を理解したとしても、それをどのようにして決めたらいいのか分からないというSMBユーザーも多いだろう。ここでは、ポリシー作りの基本的なアプローチを説明する。
基本セキュリティポリシーの作り方
先の記事「『情報が漏れた、どうすれば?』というときのためのポリシー」ではセキュリティポリシーの概念や目的について説明したが、今度はいよいよ作成のフェーズに入る。
セキュリティポリシーは一般にトップダウン方式で作られることが多いが、ボトムアップで作っていってもいい。重要なのは、実際にネットワーク、インターネットを業務上利用している多くの人の意見を聞き、会社全体がどのようなビジネスを行っているのか、過不足なく把握することである。そのためにも、まずはポリシーを作成するチームメンバーを召集しよう。その際、メンバーは同じ部署のみから選んではならない。なぜなら、セキュリティポリシーは、業務内容、部署などによって異なる場合があるからだ。
例えば、外出先から社内ネットワークへのアクセスは、経理の部署では無用であっても、営業マンができないと業務に支障を来すかもしれない。また、出荷担当の部署は、昔から使っていた独自のソフトウェアで通信しているかもしれない。いきなりアクセスを禁止されたら、業務を遂行することができなくなる。従って、できるだけすべての業務を網羅したメンバーを集めることが望ましい。
メンバーが集まったら、先に検討を進めよう。なかなかメンバーが決まらないのであれば、身近なITスタッフで始めてしまおう。そして、まず草稿として作成しても構わない。メンバー集めに時間を取られるのも不要なことの1つだ。とにかく、ここからはメンバーがテーブルを囲んで、じっくりと腰を落ち着けて検討していく必要がある。
事業要求を書き出す
ポリシーを書き始める前に、自分の会社は何をしているのか、まず会社全体の業務内容を頭に描き、事業要求全体をあらためて書き出す必要がある。4月に入社したばかりの新入社員のような気持ちで、再度調べてみるとよい。ある程度の規模になると全体を把握することが困難になってくるので、意外な発見があるかもしれない。
また、会社の事業が各種ISOの規制など特定の法規制の制約を受けている場合がある。その際は、それを順守するためのセキュリティポリシーが必要になるので、一通り理解しておかなければならなくなる。またその際、規制に準拠できなかった場合の罰則も理解しておこう。その罰則規定を基に、どの程度のセキュリティをかける必要があるか、適切な優先順位を設定することができる上、ポリシーを守らない社員に対して規律を要求する度合いを測ることができる。このほかの事業課題については、自ら問いかけて作っていく必要がある。
事業要求を書き出す場合の例
- どのようなサービスが要求され、どの程度のセキュリティで提供されるべきか
- 社員がインターネットや電子メール、イントラネットサービスをどの程度利用しているか
- 遠隔地から内部ネットワークへのアクセスが必要か
- Webサイトへのアクセスを全員に許可する事業上の必要があるか
- 顧客がインターネット経由で、技術サポートや受注処理といった内部データにアクセスしているか
上記の事柄などについて、繰り返し「事業上必要なのか?」と尋ねていくようにしよう。中でも注意したいのが、「どのようなサービスが要求され、どの程度のセキュリティで提供されるべきか?」という項目である。
というのも、ここでは併せて、各サービスで扱っている情報の重要性をかんがみていただきたいからだ。事業規模や業種の違いで差はあれども、事業で扱う全データは想像するよりも膨大な量に上ることだろう。これは、事業要求を書き出すに当たって誰もが実感することだ。しかし同時に、すべてのデータを同じセキュリティレベルで保護する必要はないことにも気付くだろう。中には、保護対象から外す項目も出てくるかもしれない。手間は掛かるが、繰り返し「事業上の必要性」を念頭に切り分けていこう。事業上の必要性は、セキュリティポリシーを策定するに当たり、最も重要な決定要因だからだ。
セキュリティポリシーの構成
セキュリティポリシーの構成は、「基本セキュリティポリシー」とその下位ポリシーから構成される。全社的に1つのセキュリティポリシーを適用する場合もあれば、事業部ごとにセキュリティポリシーを変えて運用する場合もあり得る。
基本セキュリティポリシーとは、当該セキュリティポリシーの枠組みを示すものである。また、そこにはその下位に位置する個別の「利用規定に関するセキュリティポリシー」のリストと説明が含まれる。
基本セキュリティポリシーを作る
基本セキュリティポリシーでは、まず下記の項目について明確にしておく必要がある。
(1)ポリシーの対象範囲
(2)ポリシーを作成した目的
(3)ポリシーの責任者
(4)ポリシーの範囲
(5)ポリシー違反に対する罰則規定
(6)ポリシーを実施、規制する担当者
(7)ポリシー適用者
(8)ポリシーに列挙されるそのほかの文書
(9)ポリシーの変更について
(10)ポリシーの見直しについて
まず(1)は、当該セキュリティポリシーが全社共通のものか、特定の事業部向けか、または特定のマシン室に当てはまるのか、それらを明確にする。(2)は、セキュリティポリシーを作成した目的に当てはまるが、その際、これを作成することで何が得られるかを明確にできればなおよい。また(3)は、ネットワークセキュリティの責任者を記載する。セキュリティポリシーの運用に責任を持つだけではなく、セキュリティポリシーが有効で妥当であるかどうか、判断および維持していかなければならない。
そして(4)は、地域や組織、対象とする資産について記述する。さらにポリシーが適用されない地域、組織、資産についても明確にする。(5)(6)を決定するには、人事担当や管理職の同意が必要になるだろう。また(7)は、社員全員が基本であり、例外を認めるべきではない。しかし、運用していくと、どうしても例外が必要な場合が発生するので、例外規定を設けなければならない。もちろん、それが一時的な適用で終わることもあるので、定期的に見直す必要がある。
(8)において、基本セキュリティポリシーはほかの文書の枠組みも規定する。関連する文書についても記載しておく。また(9)は、セキュリティポリシーを運用していくと、どうしても変更したい内容が出てくることを想定している。その場合に、どのように変更を行うか定義する。例えば、「どのタイミングで、誰が責任を持って行うか」という内容だ。
(10)は、セキュリティポリシーの定期的見直しの頻度を記述しておく。頻度としては、1年では長すぎ、1カ月では短すぎるので、大体3カ月おきを目安とするのがよい。もちろんこの間隔にとらわれず、「必要に応じて」ポリシーの見直しを実施する方がさらに望ましい。
続く後編では、個別の利用規定に関するセキュリティポリシー策定の手順について解説する。
<筆者紹介>
五十嵐史夫
ウォッチガード・テクノロジージャパン セキュリティスペシャリスト
メーカーやベンダーでファイアウォールを中心としたセキュリティ製品の検証や導入支援に従事し、現在ウォッチガードにおいてUTM製品のエンジニアリングを担当。
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