自社に最適な仮想デスクトップ技術はどれ? 3つの方式を解説用途や目的で選ぶ仮想デスクトップ

仮想デスクトップを実現するための手法や製品はさまざま。自社に最適な仮想デスクトップの導入手法とは?

2015年06月29日 10時00分 公開
[ITmedia]

仮想デスクトップを実現する3手法のメリット/デメリット

 仮想デスクトップの技術として現在主流なのがサーバ側でデータやアプリケーションを集中管理し、画面イメージだけをクライアント端末に転送する画面転送方式だ。その実現手法は次の3つに大別される。

図1 3つの仮想デスクトップ方式

 1つ目は、コールセンターなどの定型業務向けに考案された「ターミナルサービス方式」である。この方式は1つのサーバOSを複数ユーザーで共有することから、管理工数を大幅に抑えられ、かつ、適切なサーバ選定を通じて集約率を高めた効率的な運用ができることがメリットだ。その半面、OSが1つであるため、多様なアプリケーションや周辺機器の利用が想定される業務環境では、それらとOSとの互換性が課題となる。

 この問題に対応した2つ目が、クライアントOSを仮想環境で稼働させる「仮想PC方式」だ。VDI(Virtual Desktop Infrastructure:仮想デスクトップインフラ)ともいわれるこの方式では、サーバ上で稼働する複数の仮想マシンを、デスクトップ仮想化ソフトウェアを用いて端末ごとに1つずつ割り当てる。ユーザーは論理的に1台の端末(OS)を占有して利用できることから、定型業務以外にも幅広い活用を見込むことができる。ただし、ユーザーごとに異なるOS環境を個別に管理する必要があるため、ターミナルサービス方式よりも管理負荷が高くならざるを得ないことも理解しておくべきであろう。

日立製作所 ITサービス事業部
クラウド本部 クラウド事業推進部
主任技師 嶽山康則氏

 一方で、OSのみならずハードウェアまで占有して利用する3つ目の手法が、個々のクライアントPCの代替としてブレードサーバを1台ずつ割り当てる「ブレードPC方式」である。この手法の最大のメリットは、仮想デスクトップを意識した運用を必要としないことだ。日立製作所(以下、日立) ITサービス事業部 クラウド本部 クラウド事業推進部の嶽山康則氏は、「ブレードPC方式はいわばクライアントPCをデータセンターで集約管理するものと位置付けられる。そのため、ハイパーバイザーなどの新たな知識習得を必要とせず、また従来の運用を踏襲して管理できることから、短期導入の実現では最適といえる」と説明する。

図2 部門、用途、目的によって適する方式を提案

仮想PCを選択すべきこれだけのメリット

日立製作所 産業情報システム営業部
パートナービジネスグループ
主任 小菅一憲氏

 これらを理解した上で、より適切な選択をするために日立が挙げるのが管理性である。上記3つの方式はいずれも従来のPCより管理が容易になるが、中でも仮想PC方式は仮想マシンをファイルとして扱えることから簡単にバックアップが可能だ。また、仮想PC方式のメリットはこれだけにとどまらない。「最新のOSでは動作しないアプリケーションも、仮想マシンに旧バージョンのOSをインストールすることで実行環境を整備することができる。既存のIT資産を活用する上でこのメリットは見逃すことはできない。ひいてはIT予算の有効活用にもつなげられる」と日立 産業情報システム営業部 パートナービジネスグループの小菅一憲氏は解説する。

 もちろん、小規模かつ予算が限られているケースでは、システム全体の整備コストを安価に抑えられるブレードPC方式から始めることも有効だ。そこで確認された効果を踏まえ、仮想PC方式の利用を社内に訴えることで導入を円滑に進めることができるだろう。

サーバ環境をVMwareで仮想化しているならVMware Viewがおすすめ

 また、デスクトップ仮想化ソフトウェアの選定も重要だ。代表的なものには、Microsoft Virtual Desktop Infrastructure(VDI)、VMware View、Citrix XenDesktopなどがある。日立はデスクトップ仮想化ソフトウェアの選定に当たっても次のようにアドバイスする。「運用コストの削減を目的にサーバ仮想化の環境整備に乗り出す企業は相次いでいる。その場合、ヴイエムウェアのVMware vSphereによって仮想化基盤を整えているのであれば、VMware Viewをいわばアドオン感覚で追加することで、容易かつ低コストでVDI環境を整備することが可能」(嶽山氏)。さらに、VDI環境では端末とサーバ間における画面の転送プロトコルが端末の使い勝手を大きく左右する。VMware Viewは従来の「RDP(Remote Desktop Protocol)」に加え、より高性能な画面描画プロトコル「PCoIP(PC over IP)」も標準実装するなど、業務現場での利便性を高める工夫が凝らされている。

 一方で、Windows Server 2012の登場で話題のMicrosoft VDIを選ぶメリットについては次のように述べる。「マイクロソフトのWindows Server 2012では従来よりも仮想化機能が大幅に強化され、仮想マシンの管理性も高められていることが検証を通じて確認できている。ユニファイドコミュニケーション基盤のMicrosoft Lyncsなどのソリューションとも技術的な親和性が高く、ワークスタイル改革のためにそれらの採用を検討しているのであればMicrosoft VDIも有力な選択肢」(嶽山氏)。このように、事前に収集すべき情報は決して少なくなさそうだ。

“適材適所”の統合環境で現場の多様なニーズに対応

日立製作所
システム基盤ビジネス本部
基盤ソフトウェアビジネス部
技師 久保田 良治氏

 これまで述べてきたいずれの手法や製品を用いても仮想デスクトップには特有の課題が残されているという。クライアント環境の使い勝手の低下が、その仕組み故に避けられないことだ。日立 システム基盤ビジネス本部 基盤ソフトウェアビジネス部の久保田 良治氏は、「現場のニーズに合致した導入手法を採用するとともに、システムの一部に従来のPCを残すといった工夫も必要となる」と強調する。

 当然ながら、企業規模が大きくなれば現場のニーズは多様化する。全社導入を考えると、特定の手法だけでニーズの全てを満たすことは困難である。そこで日立が今、提案に力を入れているのが、各手法を柔軟に組み合わせて仮想デスクトップ環境を実現する“適材適所”の統合環境の整備である。

 実は日立では、約10年前から自身でも仮想デスクトップの利用を推し進めてきた。そのユーザー数は2012年度中にグループ会社全体で9万人に達する見込みだ。実体験で培ってきた多様なノウハウが、統合環境の実現における同社の武器だ。

 仮想デスクトップではネットワークが必須であるため、十分な帯域確保が欠かせない。また、多数の仮想マシンが稼働するだけに、システムの安定稼働は業務上最も重要となる。このように、仮想デスクトップ環境の整備に当たっては考慮すべき課題がとても多い。だが、「ユーザーとして長年あらゆる仮想デスクトップの実行環境を運用している日立であれば、シンクライアントの『FLORA Seシリーズ』からWindows PC、スマートデバイスまでの豊富な端末に応じて、これまでの運用ノウハウや見込まれる効果などを踏まえた、最適な統合環境の見極めや構築が可能だ。そのために、日々あらゆるベンダーと共同で検証作業(※)にも取り組んでいる」(嶽山氏)

※ 「仮想デスクトップ導入前に検証すべき4つのポイント」を参照

図3 端末と実行環境の選択肢が豊富、適材適所の活用が可能《クリックで拡大》

 また、統合システム運用管理ツールの「JP1」を採用すれば、システムの安定性の確保のみならず、仮想化基盤を含めたシステム全体の運用業務の見直しも可能となる。つまり、日立は企業の仮想デスクトップ利用を提案から運用まで一貫して支援する役割を担えるわけだ。

 幅広い製品群とパートナーとの連携により、企業に最適な仮想デスクトップソリューションを提供する日立。同社の果たす役割は、これからますます大きくなりそうだ。


提供:株式会社日立製作所
アイティメディア営業企画/制作:TechTargetジャパン編集部/掲載内容有効期限:2015年9月10日

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