人気のSurfaceシリーズに比較的低価格な「Surface 3」が登場した。Atomプロセッサーを搭載するが製品の質感や使い勝手は従来製品と変わらない。「Windows 8.1」搭載のプレミアム端末を見る。
一般的に低価格のタブレットやノートPCで使われているチップセットを採用しているとはいえ、米Microsoftの「Surface 3」はプレミアムな端末だ。市場にはもっと安価な選択肢がたくさんあるが、それでもSurface 3には499ドルという基本価格を支払う価値が十分にある(法人向けは6万8800円から、個人向けは8万1800円《いずれも税別、以下同じ》)。
Surfaceという名称は踏襲しているが、それ以外の点は全て変化している。サイズもデザインもチップセットもOSも全て先行機種とは違う。
こうした変更により、Microsoftの新タブレットSurface 3は今では、市場のその他何十種類ものWindowsタブレットやノートPCとの共通点が増えている。裏を返せば、これまでSurfaceシリーズはそれほど独特な製品だったということだ。その独自性のため、市場での成功には至らなかった。
米TechTargetは「Surface 2」と「Windows RT」を高く評価した。どちらの端末にも際立った長所があり、パフォーマンスと生産性も当時の他の端末と比べて遜色なかった。だがどちらの端末も、ユーザーや開発者からプラットフォームの成功に必要な支持を得ることはできなかった。そこで、Microsoftは恐らく、後継モデルでは搭載OSを変更するという正しい判断を下したのだろう。
だが結論に行く前に、Atomを搭載する新しいSurface 3をもっと詳しく見てみよう。Surface 3は完全版の「Windows 8.1」64ビット版を搭載している。
2014年に発売された「Surface Pro 3」を10%ほど小さくすれば、Surface 3になる。ファンレスな薄型タブレットで、ディスプレーサイズは10.8インチ。本体サイズは約幅267×奥行き187×厚さ8.7ミリで、重量はわずか622グラムだ。
Surfaceシリーズの仕上がりはこれまで常に業界最高クラスのクオリティを誇ってきたが、それはSurface 3でも引き継がれている。マグネシウム合金製のボディには高級感があり、デザインも素晴らしい。最薄でも最軽量でもないが、Surface 3ほど携帯性とクオリティのバランスが取れているタブレットは、Surfaceシリーズを除いて他にはない。この点は、毎日のようにヘビーユースしても変わることはなく、恐らく1年たっても新しいデザインに見えるはずだ。しかも、キックスタンドはあまりに便利で、他のどのタブレットにも付いていればいいのにと思うほどだ。
Surface 3は10.8インチのディスプレーを搭載し、解像度は1920×1280。1インチ当たりのピクセル数は約213ppiと、Surface Pro 3よりも3ppi少ないだけだ。アスペクト比がSurface Pro 3と同じ3:2なのも評価できる。
Surface 3はサイズの割に小ささを感じない。デスクトップを散らかしてもスプレッドシートを多用しても決して窮屈な感じにはならない。10点マルチタッチに対応し、Microsoftが買収したイスラエルN-Trigのスタイラスペンをサポートする(別売)。
ディスプレーの発色は暖色寄りで、白がわずかに赤みがかっている。最大輝度に設定すれば、このクラスの他の端末と同程度にはぎらつきを抑えられ、「Microsoft Word」など、ハイコントラストの設定で十分に使える。ただし、快適ではない。
Surface 3では電源ボタンと音量ボタンが本体上部に配置され、本体下部にはマグネットでキーボードを接続するための端子が用意されている。本体右側側面には、上から順に、Mini DisplayPort、フルサイズUSB 3.0ポート、Micro USBポート、3.5ミリのヘッドフォンジャックがあり、microSDカードスロットはキックスタンドを開けたところにある。
Atomを搭載する大半のWindows 8.1タブレットはMicro USBポートを1つ装備し、充電とアクセサリ接続の2つの役割を果たす。Surface 3には、歴代のSurfaceモデルと同様、複数のポートが装備されているのはうれしいことだ。Micro USBポートでの充電が可能になったのはますます素晴らしい。Surfaceの他のモデルには全て、米Appleの「MagSafe」に似た、独自のマグネット式充電アダプターが付属している。確かにハイエンドな技術ではあるが、標準規格を使える有用性の方がはるかにありがたい。
Micro USBポートはホストの役割も果たす。適切なMicro to Fullケーブルを使えば、キーボードやマウスといったアクセサリをMicro USBポートにつなげられる。有線接続を行うためのUSBイーサネットアダプターもサポートする。
Surface Pro 3では音量ボタンは左側側面に配置されているが、Surface 3ではその位置が本体上部に移り、使いやすくなっている。Surface Pro 3では、左側側面にある音量ボタンをひんぱんに押していると、タブレット本体が右に移動してしまっていた。Surface 3のように上から下へと押す方がはるかに理にかなっており、タブレットは安定する。
Surface Pro 3と同様、Windowsボタンは横表示時の右側に配置され、ペン使用時にうっかり手のひらが触れても反応しないよう、無効化できるようになっている。
正面を向いたスピーカーは、予想に違わず凡庸だが、個人で楽しむには十分だ。ただし、それはこれまでレビューしてきたタブレットの99%に当てはまることだ。少なくとも、Microsoftがスピーカーを正面に配置したのは正解だ。
Surface 3は象徴的なキックスタンドも含め、従来のSurfaceシリーズと同じデザイン要素を採用している。Surface Pro 3のキックスタンドは無段階で好きな角度にタブレットを固定できるが、Surface 3のキックスタンドは3段階の角度に調節できる。
ユースケースの99%には、3段階の角度で十分だ。キックスタンドは頑丈でしっかりした作りになっており、角度が固定されるとカチッと音がするので安心だ。さらにMicrosoftは安全のためのメカニズムを採用し、もしうっかり誰かがキックスタンドに体重をかけるようなことがあっても、さらに広い角度に開くようにすることで、壊れないようにしている。
Surface 3はIntelのクアッドコアプロセッサ「Atom x7」(2Mバイトキャッシュ、1.6GHz/最大2.4GHz)を採用している。「Cherry Trail」という開発コード名で呼ばれていたこの第5世代チップセットを採用する主要端末はSurface 3が初めてだ。うわさされているところでは、Atom x7は処理性能は第4世代のAtomプロセッサと同程度だが、グラフィックス性能が従来より向上しているという。
この点は実社会での利用で証明されているようだ。Atom x7はまずまずのユーザー体験を提供でき、スタート画面ではIntelの「Core」プロセッサと同程度に動作し、デスクトップ画面では日常のタスクを上手く処理する。ゲームもかなりやってみたが、「Portal」などのクラシックゲームから「Shovel Knight」などのインディーズゲームまで、どれも問題なく実行できた。
ただし、Atomプロセッサには限界もある。「Google Chrome」は重くなることがあり、特に複数のタブを開いているときはそれが顕著だった。同じことが「Microsoft Excel」の複雑なスプレッドシートにも言いえる。Surface 3が本格的な動画画像編集のための端末でないことは明らかだ。
Surface 3はベンチマークテストのスコアも上々だった。前世代のAtomタブレットには大きく差を付け、Intelの新しい「Core M」プロセッサを搭載する米Appleの「MacBook」や「Lenovo YOGA 3 Pro」には及ばなかったものの、その差はわずかとなっている。もちろん、Intelの「Core i」プロセッサが大差でトップに付けている。
ベンチマークテスト「PCMark8 Home Accelerated」では、Web閲覧や動画ストリーミングから文書の入力、ゲーム再生まで、一般的なタスクでPCの総合的な性能を計測する(スコアが高いほど性能も高い)。
ベンチマークテスト「3DMark 11」では、ゲームでの全体的な3Dグラフィックス性能を計測する(スコアが高いほど性能も高い)。
ベンチマークテスト「wPrime」では、プロセッサの性能を比較する(単位は秒数。スコアが低いほど性能は高い)。
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