現場主導型のアプリ構築を可能にする「ビジネスマッシュアップ」:Googleマップとの連携だけがマッシュアップではない
Googleマップとの連携が有名なマッシュアップだが、企業の業務アプリケーション構築での利用も増えつつある。一般的なマッシュアップとの違いは何か? その導入メリットや普及への課題を解説する。
一般的にマッシュアップというと、インターネット上に公開されている情報やWebサービス、APIなどを組み合わせて「1つのWebサービスや機能のように見せる」ことを指すことが多い。
また、マッシュアップと聞いて連想されるものとしてGoogleマップの地図情報とレストラン情報のデータを組み合わせたり、個人のブログ内に商品検索結果を一緒に表示したりするようなWebサイトを思い浮かべる人が多いだろう。
その一方で、ビジネスの現場においても、マッシュアップは「業務アプリケーションの構築手法」として採用され始めている。しかし、この場合のマッシュアップとは、企業Webサイトの所在地情報の横にグーグルの地図を表示させることではない。
企業向けのマッシュアップとは一体何だろうか?
本稿では、企業向けマッシュアップを「ビジネスマッシュアップ」(以下、BM)と称して、一般的なマッシュアップとの違いやその導入メリット、普及への課題について解説する。
ビジネスマッシュアップとは?
マッシュアップという言葉には「混ぜ合わせることから転じて、既にあるものを利用して新しいものを作り出す」という意味がある。
BMとは、マッシュアップ手法を用いて「人」「データ」「プロセス」を結び付けた「業務ワークフロー」を構築することを指す。すなわち、CRM(Customer Relationship Management)やERP(Enterprise Resource Planning)など、個別のアプリケーション機能そのものではなく、それらをコンポーネントとして組み合わせて、自社に最適な業務ワークフローシステムを構築することだといえる。
BMが普及すれば、業務ワークフロー構築の今後の主導権は、IT部門のエンジニアではなく、ビジネス部門の担当者(例えば、営業や人事、マーケティング部門などの担当者)に移行していくと予測される。現場のビジネスパーソンが、自ら業務フローのアプリケーションを構築するスタイルが、今後、組織内におけるIT活用のスタンダードとなるだろう。
BMにもさまざまな種類がある。例えば、社員の休暇申請や承認、商談に関するディスカウントなどの承認用といった、業務プロセスを一括管理するアプリケーションが挙げられる。このように「承認待ち」「承認済み」というような「状態(ステータス)」を持ったデータを処理するアプリケーションを、ほかのマッシュアップと区別するために「プロセスマッシュアップ」と呼ぶこともできる。
BMは現場のビジネスパーソンが主導権を握るという点で、IT部門のエンジニアが中心となって企業内システムを構築する「エンタープライズマッシュアップ」とは異なる。また、ビジネスの現場で必要な業務プロセスを構築するという点で、単なる「データマッシュアップ」とも異なる。
マッシュアップの種類 | 概要 | 状態の有無 |
---|---|---|
プロセスマッシュアップ | 状態を持ったプロセスを処理する。業務ワークフローを処理するBMはこれに当たる | あり |
データマッシュアップ | 複数のデータを組みわせて表示する。複数のデータベースを参照して統合リポートを出すビジネスインテリジェンス(BI)ツールなど | なし |
ポータルマッシュアップ | 複数のサービスやデータを1つの画面に読み込んで表示する | なし |
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