業務現場を強くする、部長のためのBI活用:部長のためのBI活用講座【最終回】
BIの定義を実現するためには一体何が必要だろうか。連載の最終回となる本稿では、なぜBIが企業に必要とされるのか、BIを使いこなすために必要なことは何かを考えていきたい。
本連載で何度も記述してきたが、一般的にBI(Business Intelligence)は「データを基に事実を可視化して、適切な意思決定や具体的なアクションを行うことにより、ビジネスに価値(売り上げ、生産性、企業価値)をもたらすこと」と定義される。この定義を実現するためには一体何が必要だろうか?
不況下でもBI投資には積極的な日本企業
2008年米国発の100年に一度といわれる厳しい経済環境下において、国内のIT投資はどの調査資料を見ても厳しい状況にある。特に新規の大型プロジェクトが大きな影響を受けており、凍結や延期という話をよく聞く。また、企業のIT予算の大部分を占める既存システムの運用費の見直しなども積極的に行われている。しかし、このような状況下でもITの積極的活用として注目されているのが、以下2項目を目的としたBIツールの活用だ。
- ITの利用による積極的な生産性や効率化の追求によるコスト削減
- 厳しい環境だからこそ、ITを利用して積極的な売り上げ拡大や企業競争力強化を実現したい(特に顧客に着目した活動)
そのため、この経済環境下においてもBIツールに対する企業の需要は確実に伸びている。既に企業の中にはさまざまなシステムがあり、日々データが蓄積されている。これらを活用しない手はない。
「データを活用する」とはどういうことか
本連載の第1回「営業部長、SFAデータを本当に使えていますか?」では、データを活用しない営業部長の例を挙げた。営業現場の状況を把握する際、データではなく営業リーダーの言葉を信じてしまったために売り上げ見込みを誤り、その結果何の手も打てなかった営業部長の例だ。
必要なのはデータを見ることではなく、データが表現している事実を読み取ることだ。例えば、最近売り上げが急激に落ちてきている商品があるとする。その場合、どんな行動を起こすべきだろうか。「商品価格の値下げ」「キャンペーンの実施」「顧客へのダイレクトメール配信」「営業力の強化」……。これらの実行案をやみくもに思い浮かべたとすると、先ほどの営業部長と同じである。
原因を特定せずに実施した対策は「賭け」と同じ
事実をつかむためには、これまでの売り上げ状況のデータを分析する。その分析に基づいて、売り上げの急激な低下の原因の仮説を立てる。そして別の角度でデータを分析し、その仮説が正しいかを検証する。まずは原因の特定が重要だ。原因を特定せずに対策を立てるのは、いわゆる「賭け」と同じである。環境の変化が少ない時代なら過去の経験を基に原因の仮説を立てるという方法が有効だったかもしれないが、環境変化が非常に多い現在では、その方法は使えない。
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