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「目的」と「時間」からつかみ取るIT投資のベストプラクティス中堅・中小企業を導く「IT投資羅針盤」【第1回】

中堅・中小企業がIT投資を検討するときに抜け落ちている視点がある。それは、投資における“方向”と“位置”を把握するということ。この2つを見いだすと、投資対効果は飛躍的に大きくなる。

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 前回の連載「実践! 中堅・中小企業のための賢いIT投資」では、「中堅・中小企業の現場にとっての現実的な投資対効果」という点を踏まえて、政府やベンダーによる支援制度やリース/レンタルの活用方法を紹介したり、SaaS(Software as a Service)と自社内運用のどちらが投資対効果の観点で有効かといった比較を行った。

 その続編となる本連載では、中堅・中小企業にとって今後有効と思われるIT投資のトピックを具体的に取り上げ、「実際問題として何をしたらいいのか?」というテーマでさらに深く切り込んでいく。各回で取り上げる主なトピックとして、

  • IPテレフォニー
  • サーバ仮想化
  • クライアントPC管理
  • 複合機活用

を予定している。いずれもコスト削減と業績改善の双方に有効な手段であるが、それを認識して実践している場合とそうでない場合とでユーザー企業の業績差が大きいソリューションでもある。つまり、IT投資の実践的なノウハウを示す上では最適な題材といえる。

 早速、具体的なトピックの解説に入りたいところだが、第1回となる今回は、連載の大きな前提として読者に常に意識しておいていただきたい事柄について説明する。これは、各回に共通するテーマである。

混同される「by ITの投資」と「for ITの投資」

 ITに対して投資をする場合、その理由(目的)は大きく2つに分けられる(図1)。1つは、「自社の本業に寄与するIT活用」だ。CRM(顧客関係管理)を導入して顧客応対の品質を向上させたり、商談の成約率を高めたりといったものはこれに相当する。ITが本業改善の手段であるという意味合いから、ここでは「by ITの投資」と呼ぶことにする。そして2つ目は、「ITのためのIT投資」である。ITを安全かつ効果的に活用するためには、それを補助する仕組みが必要になることが多い。PCからの情報漏えいを防止するためのセキュリティ対策がその一例だ。「ITのための」という意味合いから、ここでは「for ITの投資」と呼ぶことにする。

図1
図1 IT投資には目的に応じた2つの種類がある

 ユーザー企業は誰しも「もっと本業の役に立つIT投資をしたい」と考えている。だが、実際には現時点で保持しているIT資産の維持に多くのコストを費やし、新しい活用方法へと踏み出せないでいる。そうなってしまった要因の1つが、この「by ITの投資」と「for ITの投資」の混同にある。言い換えると、自社が行おうとするIT投資がどちらなのかをきちんと把握することが大変重要になる。

 ここで注意していただきたいのは、ある1つのIT活用トピックが必ず「by ITの投資」と「for ITの投資」のいずれかに分類されるとは限らないという点だ。先のセキュリティ対策についていうと、「for ITの投資」ととらえられることが一般的である。しかし、取引先の信用調査を本業とする企業にとっては、セキュリティ対策を厳格に実施し、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)などの認証を得ることが本業における信頼向上に直結する。同じIT導入トピックであっても、自社の業種・業態によって意味合いが大きく変わってくるのである。

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