IFRSと日本基準で異なる収益認識――4つの対応法を示す:IT担当者のためのIFRS入門【第3回】
IFRSを適用する多くの日本企業が対応を考える必要がある「収益認識」。今回はその会計基準の内容と、ITシステムでの対応法を解説する。「複合取引」「売り上げの純額表示」も取り上げる。
多くの日本企業が共通して対応をしないといけないIFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)の項目とは何だろうか。それは「収益認識」と「固定資産」だ。日本基準との差が多いことに加えて、現場の業務プロセスやITシステムへの影響も大きい。今回は、日本IT会計士連盟が2010年5月20日に開催したセミナー「情報システムに関わる人のためのIFRS入門」での公認会計士 五島伸二氏の講演を基に、収益認識の課題とITシステムの対応について解説しよう。
収益認識とは「収益(売り上げ)の計上時期をいつにするかということ」(五島氏)。いつの時点で売り上げた、とするかは基準によって異なるのだ。製品を出荷した際に売り上げたことにするか、顧客の手元に届いた段階か、もしくは実際に売上金額が手元に届いてからか。考え方はさまざまなのだ。日本基準では、「物品を出荷した時点で収益を認識する出荷基準を適用する例が多い」(五島氏)。これは物品を運送業者に引き渡すなど、顧客向けに発送した時点で売り上げを計上する考え。国内の取引では発送後に比較的短時間で顧客が物品を受領し、検収することがほぼ確実なために、このような収益の認識が取られていることが多いという。
一方、IFRSでは「物品の所有に伴う重要なリスクおよび経済価値が買い手に移転した」など、収益認識についての要件があり、この要件を満たすには一般的には買い手が検収をした時点で計上する「検収基準」で認識することが求められるとされている(下記はIFRSの収益認識の要件)。日本基準の「出荷基準」はIFRSでは認められない可能性が高いと指摘されている。売り上げの計上はほぼすべての企業に関係するだけに、影響が大きいのだ。
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