「さらなるユーザー企業の参加が重要」──Smarter Retailing Forumとマイクロソフトの流通IT標準化活動:Smarter Retailing Forumインタビュー:マイクロソフト編
流通業界のITの標準化を提案する「Smarter Retailing Forum」のメンバー企業を紹介する連載企画。第1回は代表幹事を務めるマイクロソフトのキーパーソンに話を聞いた。
流通業界におけるマイクロソフトの貢献的活動
OSに始まりデータベース、ビジネスアプリケーション、クラウド基盤に至るまで、非常に広範囲に数多くのソリューションを持つマイクロソフト。同社は、.NETテクノロジーで統合された多種多様なソフトウェアをトータルに提供できることを強みに各分野でのシェア拡大を続ける一方で、テクノロジーのオープン化や業界標準技術の策定活動など、業界貢献的な側面にも注力している。
その1つが、流通業界でのIT活用促進と技術の標準化を目的に、2004年に設立された「Smarter Retailing Forum」(以下、SRF)というオープンフォーラムの幹事運営である。本特集では、SRFに参加する企業にスポットを当て、流通システムへの取り組みや課題などを明らかにしていく。初回となる本稿では、SRFの概要と代表幹事であるマイクロソフトの取り組みについて紹介したい。
POS分野に強みを見せるマイクロソフト
マイクロソフトの流通業への取り組みは、大きく3つの柱で成り立っている。
第1が、流通業向けIT基盤の提供だ。POS(Point Of Sales)システムや受発注システム、マーチャンダイジング、CRM(Customer Relationship Management)、SCM(Supply Chain Management)などのアプリケーションを使いやすくするための基盤を、流通業独自の業務シナリオに合わせて提案していくという活動だ。
特にPOSに対しては、Windows XP Professional SP3ベースの「Windows Embedded POSReady 2009」(以下、POSReady)でキャッシュレジスターやセルフチェックアウト、キオスクなどPOS機器の管理機能とセキュリティの強化を図るほか、.NET FrameworkとUnifiedPOS(UPOS)標準のクラスライブラリー「POS for .NET」でリテール周辺機器の接続性向上に貢献してきた。
第2は、協議会によるITの標準化活動だ。Windows 95の登場以降、PCベースとなったPOS機器は標準化や低価格化が進み、現在では国内POS市場の約9割をWindowsベースのOSが占めるという。
そして第3は、個別プロジェクトへの参画だ。標準仕様とマイクロソフトの製品を組み合わせることで、パートナー企業およびユーザー企業の個別プロジェクトへ価値を提案している。
技術の標準化とオープンコミュニケーションが目的のSRF
「SRFは、まさにこの第2と第3の取り組みになる。流通業のユーザー企業とIT ベンダー企業が共に情報交換しながら、主に企業内システムにおけるIT技術の標準化を進めている」。そう語るのは、マイクロソフトのエンタープライズパートナー営業統括本部 ビジネスソリューション営業部 流通・CPGビジネスグループ インダストリマーケット・デベロップメント・マネージャ 藤井創一氏だ。
藤井氏は、マイクロソフト入社以後の十数年間、一貫して流通業を担当し、大手パートナー企業向けソリューションの開発を手掛けてきた。現在はSRF運営の事務局兼普及部会リーダーとして中心的な役割を担っている。
SRFは、主に以下2つの協議会と、それらの内部組織である1つの研究会で構成されている。2010年8月現在、SRFには498社が参加し、「国内流通業関連の中でも大規模なコミュニティーとなっている」(藤井氏)。
協議会・研究会名 | 活動目的 |
---|---|
OPOS技術協議会 (OPEN POS Technology Council, Japan:OPOS-J) |
POSアプリケーションと周辺端末インタフェースの標準仕様策定・普及 |
.NET流通システム協議会 | 店舗システムを中心としたXMLスキーマ、データモデル標準仕様の策定・普及 |
次世代POS研究会 (WSPOS Initiative:WSPOS) |
Webサービスを基盤にしたPOSソリューション標準仕様の策定 |
これら協議会が策定した仕様を普及・推進するためのオープンコミュニケーションを実施する匿名のフォーラムメンバー(ユーザー企業、ITベンダー)が多数参加している |
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.