ポートフォリオの拡充を進めるデルのSMB向け「Dell EqualLogic」シリーズ:SMB向けストレージ製品紹介:デル
近年、デルはストレージ分野への積極的な投資により、製品ポートフォリオを急速に拡充させている。独自のストレージ技術や製品ラインアップの拡充を重要な戦略と位置付けている同社のSMB向けストレージを紹介する。
ストレージのポートフォリオを急速に拡充させるデル
米Dellは近年、ストレージ分野への積極的な投資を行い、ストレージ製品のポートフォリオを急速に拡充させている。2007年に仮想化iSCSI-SANストレージ「EqualLogic」を、2010年にクラスタファイル技術「Exanet」、重複排除/圧縮ソフトウェア「Ocarina Networks」、2011年に自動階層化ストレージ「Compellent」を統合してきた。2012年2月には仮想インフラ対応バックアップソフトウェアベンダー「AppAssure」の買収を発表している。
ストレージの拡充を重要な戦略と位置付けているデルの中堅・中小企業(SMB)向けストレージとは? 以下で詳しく見ていこう。
連載インデックス
- ストレージの利用率向上を階層型プールで実現する「IBM Storwize V7000」(日本IBM)
- 拡張性に優れたSMB向けユニファイドストレージ「FAS2240」(ネットアップ)
- ストレージへの高い投資対効果を目指す「ETERNUS DX S2」シリーズ(富士通)
- SMB向け機能とコストのバランスを重視したNAS「ReadyNAS」(ネットギア)
- ファイル仮想化を推進するSMB向けプラットフォーム「Hitachi Virtual File Platform 50」(日立製作所)
- 高性能とシンプルを追求したSMB向けストレージ「EMC VNXe」(EMCジャパン)
Dell Fluid Dataアーキテクチャ
デルはストレージ関連製品のコンセプトとして「Dell Fluid Dataアーキテクチャ」をうたっている。データ特性に応じて、Fluid(流動的)に適切なストレージで管理するという意味を持つ。SAN(Storage Area Network)やNAS(Network Attached Storage)、テープなどの個別ソリューションを本番環境やオフサイト、アーカイブ、バックアップ、さらにはクラウドを含めた環境に配置し、運用状況に応じて、効率的かつシームレスにデータを移動する、という考え方だ。
デル APJ CSMB エンタープライズプロダクトマネジメント プロダクトマーケティングマネージャーの友永和総氏は「これまで買収した、実績あるストレージ技術を基盤として効率的なデータの移動を行い、シームレスにデータのバックアップ、リストアなどを実行する。さらに、データ管理の効率を高めて必要なデータの活用度を向上させることで、増え続けるデータを戦略的な企業資産に変えて、そのビジネスを支援する」と述べる。
DASやNASの乱立状況を一気に解決する「Dell Fluid File System」
デルが主にSMB向けに提案しているストレージが、ユニファイド/仮想化IPストレージ「Dell EqualLogic」シリーズだ。友永氏によると、SMBではストレージに関して以下の3つの要望が多いという。
- コストを抑えながらストレージを統合したい
- ストレージの運用をシンプルにして手間を削減したい
- OSとアプリケーションとを統合したストレージ管理を行いたい
「Dell EqualLogicシリーズでは、そうした要望に応えるためのさまざまな機能を提供している」(友永氏)
例えば、旧Exanetの技術をベースに開発した「Dell Fluid File System」を搭載するNASコントローラー「EqualLogic FS7500」は、CIFS/NFS/iSCSIのマルチプロトコルに対応したスケールアウト型ユニファイドストレージだ。EqualLogicシリーズと接続することで、最大509Tバイトまでの大規模な単一のファイル容量を構成できる。サーバやクライアントPCはイーサネット経由でSANのディスクをNASとして利用できる。また、iSCSIにおけるSANストレージとしても活用できる。こうしたシステム構成によって、既存のSAN環境やNASを統合的に管理でき、DASやファイルサーバが乱立して運用管理が複雑化している状況を解決することも可能だ。
また、iSCSI-SANストレージ「EqualLogic PSシリーズ」は、専用GUIで導入から運用、アップグレードまでの作業を簡素化した仮想化対応ストレージ。スナップショットやレプリケーション、シンプロビジョニングなど、全ての機能をバンドルし、自動ロードバランシング機能も標準搭載している。
名称 | 機能 | 活用シーン |
---|---|---|
スナップショット | ポイントインタイムでのビューを提供 | 操作ミスなどによるデータ削除やデータ破壊からの迅速なリカバリ |
クローン | ボリューム全体のフルコピーを実行 | テスト環境、サーバへの提供 |
シンクローン | ボリュームのテンプレートからコピーを作成 | 仮想デスクトップ、開発環境 |
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アップグレードに追加コストが発生しない
Dell EqualLogicシリーズでは全モデルに標準ライセンスが含まれており、アップグレードしても追加コストが発生しない。そのため、新機能がリリースした場合は追加のライセンス費用を払わずに機能拡張できる。
「Dell EqualLogicシリーズでは、販売終了したモデルも含めてアーキテクチャの互換性を維持している。ストレージ更新の際にデータ移行が容易に行え、最新機能が追加されてもファームウェアをアップデートすれば陳腐化させずに使い続けることができる。投資効果を長期にわたって持続することが可能」と語るのは、デル コンシューマー&SMBマーケティング本部 MBマーケティング ブランドマネージャーの大川博史氏だ。
Dell EqualLogicシリーズでは、システムを稼働させたまま、システムの拡張やアップグレード、メンテナンスなどが実行可能で、筐体追加の際には容量や帯域、ストレージキャッシュなどをリニアにスケールアウトできる。また、「EqualLogic Group Manager」を活用することで、SANやNASが混在する環境を単一の画面で管理し、データ保護機能のカスタマイズや実行が可能。さらにユーザーグループを定義してリソースごとに使用権限を設定できる。その他、分散環境モニタリングツール「SAN HeadQuaters(SAN HQ)」やライブビュー画面によるストレージ使用状況の確認とトレンド分析といった管理機能を提供する。
仮想化環境の運用管理を簡素化するソフトウェアを提供
さらに「Dell EqualLogicはVMwareやHyper-Vなど仮想環境のバックエンドとして採用されることが多くなっており、仮想化環境との親和性が高い」(大川氏)
Dell EqualLogicでは「EqualLogic Host Integration Tools Kit for Microsoft」「EqualLogic Host Integration Tools for VMware」「EqualLogic Host Integration Tools for Linux」など、Microsoft、VMware、Linuxなどの仮想化環境に対応する管理ソフトウェアを利用できる。
テープバックアップの代わりにDell DR4000
また、デルがSMBでも活用できるバックアップストレージとして展開しているのが「Dell DR4000」だ。旧Ocarina Networksの重複排除/圧縮技術を活用したバックアップ専用アプライアンスで、可変長ブロックレベルのインライン重複排除と、計算効率とデータ最適化率を両立した効率のよいデータ処理アルゴリズムを採用し、データ削減率が平均15分の1(デル調べ)となる点が特徴。一般的なバックアップソフトウェアを活用し、プライマリストレージのバックアップデータを世代管理しながらオンラインでデータを保管したり、リモートサイトへのレプリケーションを行うこともできる。レプリケーション機能は標準搭載されており、ライセンスは不要。RTO(目標復旧時間)の短縮やRPO(目標復旧ポイント)を増やし、BCP/DR(事業継続/災害復旧)を低コストで実現することを支援する。
「ネットワークトポロジーなど既存の環境に変更を加えず導入できるので、現状のテープバックアップ装置をDell DR4000にそのまま置き換えるという運用も可能」(大川氏)
また、米Dellは2012年6月に開催した「Dell Storage Forum 2012」でもストレージ新製品を発表している。デルは今後もストレージ製品ラインアップの強化を進め、EqualLogicシリーズの製品拡充を継続するとともに、Compellentや最近買収したForce10やAppAssureなどの技術との統合を進めていく予定だ。
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