【技術動向】OpenFlowはなぜ誤解されるのか:OpenFlow/SDN、誤解の構造【第1回】
「OpenFlow」は2012年のIT業界において最も注目されるキーワードの1つになった。だが、その注目が、等身大の理解に基づいているとは言いづらい側面がある。OpenFlowに対する誤解の背景を説明する。
OpenFlowとSoftware Defined Networking (SDN)について、さまざまな誤解が広がっている。この誤解を解き、より正しい理解を促進したい。そこで本連載ではこの2つの言葉につき、4回に分けて分かりやすく解説する。第1回として、「OpenFlowはなぜ誤解されるのか」をお届けする。
なお、筆者は約20年前からネットワーク関連の取材をしてきたが、ここ数年はサーバ仮想化を含むITインフラ製品およびIaaS関連の取材がメインとなっている。OpenFlow/SDNについても多数の取材を行ってきた。本連載ではこのネットワークとサーバ/クラウド運用の双方の分野での取材経験を生かし、中立的な立場で説明したい。
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OpenFlowの意味付けが、仕様を離れて独り歩きしている
OpenFlowは技術仕様であり、本来なら誤解を生む余地はないはずだ。しかし、さまざまな人々がさまざまな形容詞を与え、「意味付け」をしてきた。よく目にするのは、下記のような表現だ。
- OpenFlow=SDNである
- OpenFlowはコントロールプレーンとフォワーディングプレーンを分割する
- OpenFlowでネットワーク機器の全てをコントロールできる
- OpenFlowはネットワークをプログラマブルにする
- OpenFlowは破壊的な技術
- OpenFlowによりハードウェアスイッチは陳腐化する
- OpenFlowは独自アーキテクチャの世界に対するオープン技術の勝利
- OpenFlowはハードウェアがソフトウェア化される流れを象徴している
- OpenFlowはDevOpsの流れの1つ
- OpenFlowはネットワーク屋に対するプログラマの勝利
これらの中には、正しいと思われる表現や、完全な誤解とは言い切れない表現もある。だが、これらを全てつなぎあわせると、怪物のようなイメージが出来上がってしまう。総じてOpenFlowの意味付けが、OpenFlowの現在の仕様を離れて独り歩きしてしまっている。このため、上記のようなことを口にする人たちも、「それで、OpenFlowで何ができるんだっけ」という話になると、途端に分からなくなってしまうことが多い。
こうした誤解が生まれやすくなっている要因の1つ目は、OpenFlowの仕様を策定し、OpenFlow/SDNを推進しているOpen Networking Foundation(ONF)や、OpenFlowによって新たな市場を切り開いていこうとする人たちの、「啓蒙活動」が効果を発揮していることにある。実際に、ONFのエグゼクティブ・ディレクターであるダン・ピット氏は、「OpenFlowはネットワークをプログラマブルにする」「OpenFlowは破壊的な技術」「OpenFlowによりハードウェアスイッチは陳腐化する」「OpenFlowは独自アーキテクチャに対するオープンイノベーション」といった発言を繰り返している。もう少し正確に表現すれば、ピット氏は「OpenFlow」と「SDN」の2つの言葉を使い分けながらも、「OpenFlowはSDNの不可欠な要素」との前提で上記のような話をすることが多い。OpenFlowを利用した製品を開発しているベンダーの一部も、ピット氏と同じようなことを主張している。
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ONFやOpenFlow関連ベンダーがこういった主張を繰り返しているのは、IT業界では日常的な、健全な活動の1つだ。新しい市場を作り出そうとする人々は、既存の市場に異を唱え、自らがどれほど意義深く、革新的なものを広めようとしているかを力説する。その意味で、ONFやOpenFlow関連ベンダーは当然のことをしているだけだ。とはいえこれらは主張あるいはビジョンであり、SDNについてはともかく、現在のOpenFlowを等身大に表現しているかどうかとは分けて受け止めるのが賢明だ。
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