【事例】羽田空港ビルを支えるERPはどう選ばれたか:日本空港ビルデングが基幹システムを刷新
羽田空港のターミナルビルを管理し、多数の店舗を運営する日本空港ビルデングが財務会計、人事給与、流通サービスなどの基幹システムを刷新した。同社のビジネスを支えるシステムとして選ばれたERPとは?
日本空港ビルデングは羽田空港国内線のターミナルビルを管理する民間企業。ターミナルビルの運用管理業務を行うと同時に、羽田空港内で約290の物販、飲食、サービス店舗を直営、またはテナントとして運営している。成田空港や関西空港にも免税店を出店するなどビジネスは拡大している。同社は“羽田空港ビルの大家”という顔はあるものの、売り上げの7割以上は店舗関連売り上げを占めるなど流通・小売業の色が濃いといえる。その日本空港ビルデングが4年4カ月をかけて基幹システムを刷新した。最大で7社が参加したパッケージソフト選定のコンペを勝ち抜いたのはどの製品だったのか。同社 経営企画本部 IT推進室 主幹代理 堀 史晴氏がプロジェクトを説明した。
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「空弁」の売り上げが分からない
近年、羽田空港は第2旅客ターミナルビルや、新国際線旅客ターミナルビルの利用開始など拡張が続いている。しかし、ターミナルビルを管理する日本空港ビルデングからすると、空港に来る人が増える一方で、管理対象のビルや店舗が増大し、そのコストが負担となる。同社にとっては空港の拡張に合わせて店舗などからの収入を増やし、増加するコストを吸収することが急務だった。
同社は情報システムにも課題を抱えていた。2003年度から使っている旧システムは、直営店と免税店、テナントの管理がばらばらで、部署間の連携も不十分だった。「直営店と免税店、テナントでレジのシステムが異なり、売り上げの情報を回収するために3倍の手間が掛かっていた。売り上げ分析なども難しく、例えば『空弁』が売れているといってもどの店舗で、どの空弁が売れているかなどの情報を把握できなかった」(堀氏)。店舗からの売り上げを増大させ、同時に管理コストを下げるには基幹システムの刷新しかないと決断。2007年度末にプロジェクトが動き始めた。
刷新した基幹システムは以下の6つだ。
- 財務会計
- 人事給与
- グループウェア
- 流通サービス
- ビルマネジメント
- 経営モニタリング
それぞれ本社だけではなく、15社のグループ会社に展開することを想定してプロジェクトを進めた。これらを全て同時に導入することは難しいため、以下のように開発のフェーズを分けた。
- 第1フェーズ:財務会計
- 第2フェーズ:人事給与、グループウェア
- 第3フェーズ:流通サービス、ビルマネジメント
- 第4フェーズ:経営モニタリング
拡張性とコストで選定
日本空港ビルデングはプロジェクトの中で特にパッケージ製品の選定に力を入れた。以下が、同社が行ったパッケージの選定プロセスだ。
選定に当たってはRFPをシステム別に作成した。外部のコンサルティングファームなどには任せず自社で作成し、事業・業務概要、業務の目的、機能要件、業務フロー、非機能要件などを盛り込んだ。ページ数は150ページ程度となった。また、RFPの補足資料としてシステム別に120ページ程度の業務マニュアルも作成した。堀氏は「ベンダーは情報システムの知識はあるが、業務知識は不十分なケースがある。そのため業務知識を漏れなく伝えるのがコミュニケーションでは大切で、欠かせない」と話した。
選定は複数製品から提案を受けて選ぶコンペ方式を取った。財務会計では7社、人事給与では6社、流通サービスでは7社、経営モニタリングでは2社がコンペに参加した。結果的には財務会計、人事給与、流通サービス(本部)、経営モニタリングの各システムでワークスアプリケーションズの「COMPANY」を選んだ(参考記事:「COMPANYシリーズ」を貫く“本来のパッケージ”という開発思想)。
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