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がん手術の迅速な病理診断にも効果的な「遠隔病理診断コンサルテーション支援サービス」遠隔診断支援サービス紹介:ソフトバンクテレコム

“Doctor of Doctors”と称され、患者診療の最終判断を担う病理医。人材不足が続き、地域間の医療格差にもつながるともいわれる。その解決策となる、遠隔診断ネットワークの構築を支援するサービスがある。

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病理医不足による病理診断の課題

 生体から採取された検体を検査することで、疾患の種類や悪性度、進行度を判断する「病理診断」。外科手術や内視鏡手術などにおける「術中迅速病理診断」では、病理専門医が術中に診断して、執刀医がその診断結果に基づいて手術範囲を決めたり、より適切な手術方法を選択したりすることができる。

 しかし、病理診断専門医が不足しており、病理専門医がいない地域では医療格差が問題になっている。日本専門医制評価・認定機構の調査によると、「国内の病理診断専門医数は、2012年8月時点で2124人」だという。病理専門医がいない病院では、定期的に派遣される病理専門医のスケジュールに合わせて手術を行う必要があり、患者に負担を強いることにもなる。

 こうした問題の解決策として、「遠隔病理診断」(Telepathology)に期待が集まっている。遠隔病理診断では、通信回線を利用して病理医のいる病院に病理画像を転送。受信側は送られてきた画像を基に病理診断を行う。その実施には、医療機関を結ぶネットワークの構築が必要となる。

 ソフトバンクテレコムは2013年1月、中小病院や診療所向けネットワーク構築サービス「遠隔病理診断コンサルテーション支援サービス」を提供開始した。本稿では、同社の製品担当者の話を基に同サービスの概要と導入メリットを紹介する。

遠隔病理診断ネットワークの構築を支援

 遠隔病理診断コンサルテーション支援サービスは、ソフトバンクテレコムのVPNサービス「ホワイトクラウドSmartVPN」と、クラーロのバーチャルスライドシステム「Fino」、三啓の画像転送/共有ソフトウェア「Pratico」で構成される。

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遠隔病理診断コンサルテーション支援サービスのイメージ

 遠隔病理診断には「動画方式」「バーチャルスライド方式」の2種類の方式がある。動画方式では、遠隔送信可能なカメラ付き顕微鏡に組織標本をセットし、動画として伝送。リアルタイムな情報伝達が可能で、術中迅速病理診断に適するといわれる。バーチャルスライド方式は、複数の検体スライドをスキャン・合成してデジタル化し、データを保存してブラウザ経由で閲覧する。検体全体を高詳細データとしてスキャンするため、一定の処理時間を要する。データの保存性が高く、症例のファイリングや複数の病理医による情報共有に適する。

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バーチャルスライドシステム「Fino」

 遠隔病理診断コンサルテーション支援サービスでは、FinoとPraticoを組み合わせることで両方の診断方式に対応する。Finoは、病理組織標本をスキャンしてデジタル化するバーチャルスライドシステム。2012年12月に販売開始され、従来のシステムよりも筺体サイズが小さく、低価格で導入できる点が特徴だ。Praticoは、遠隔地への顕微鏡や動画、バーチャルスライド画像の転送、Web会議による複数ユーザー間の共有機能を提供するソフトウェアである。

 実際の病理診断では、遠隔診断を依頼する病院はFinoとPraticoを、病理医専門医がいる中核病院はPraticoを用意する。病理医不在の病院が病理標本の顕微鏡画像やバーチャルスライド画像を、病理医専門医がいる中核病院に送信。病理医専門医は受診した病理画像を基に、腫瘍の良性/悪性判定や転移、切断端面への病変の広がりの有無などを判断する。

 このサービスでは、参画医療機関をセキュアな閉域網で連携し、各病院の院内LANと接続させないことでセキュリティを担保する。また、専用VPNクライアントを搭載したモバイル端末でも、インターネットVPN経由で出張先など院外での画像参照も可能だ。

がん医療における病理診断に効果

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ソフトバンクテレコムの山田氏

 ソフトバンクテレコム ヘルスケアプロジェクト推進室 担当部長、山田雄二氏は「このサービスでは、がん手術における病理診断の現状に着目した」と開発の経緯を説明する。

 がんによる死亡数が年々増加する中、がん医療の取り組みが強化されている。「がん対策基本法」(2007年)によって専門病院の整備も進み、「がん診療連携拠点病院」は2008年度の350施設から2012年4月時点で397施設まで増えた。しかし、「病理診断はがんの早期発見や手術時後の適切なケアで重要だが、病理医不足や地域の医療格差などの課題があった」(山田氏)

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