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医療情報交換システム普及の難題を解決したクラウドサービス全米の各州政府が注目

医療機関同士で診療データを共有する取り組みで先行する米国。各州政府はクラウドをベースとする医療情報交換システムの構築・運用を進めている。採用理由は普及の障壁となっていた問題を解決したからだという。

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 米マサチューセッツ州政府は2012年8月、医療情報交換(HIE)システムの構築・運営の補助金として、メディケイド(低所得者向け公的医療保険)から約1700万ドルの資金を受け取ったと発表した。この資金を用いて、同州はクラウドベースのHIEインフラを構築する計画だ。同州のみならず、全米の各州政府の間では近年、SaaS(Software as a Service)プロバイダーを利用してHIEシステムの構築に伴う障壁を緩和しようという動きが強まっている(関連記事:クラウドコンピューティングが変える医療の未来)。

 「州全体をカバーするHIEインフラを構築する」という取り組みほど、技術的に多くの課題を内包するITプロジェクトは他にはまずない。ソフトウェアの構成設定と、必要なハードウェアの確保は、この手のプロジェクトの2つの要素にすぎない。州政府はさらに、患者のデータを保護してプロバイダーの関与を管理するための体制を構築しなければならない。生じる問題の種類も多岐にわたるため、HIEシステムを軌道に乗せることはかなりの難題となりかねない。

 だからこそ、そうした難題をクラウドサービスプロバイダーにアウトソースする州政府が増えているのだ。マサチューセッツ州保健社会福祉事務局のCIOであり、同州の医療IT調整官でもあるマヌー・タンドン氏によれば、同州はプッシュ型メッセージ配信システムのクラウドホスティングについて、既に民間の団体と契約を結んでいるという。このシステムはメッセージの直接の交換を可能にするもので、2012年10月までに利用可能となる見通し。さらに同州は、医師向けのより堅牢な記録検索サービスを2014年か2015年までに展開する計画という。

 こうしたオペレーションを可能にするインフラはリモートでホスティングされることになり、マサチューセッツ州はインフラを所有しない。だが、タンドン氏によれば、その仕組みは「クラウド」と聞いて多くの人たちが思い浮かべるものとは若干異なるという。リモートサーバには患者のデータは一切保存されず、データ転送に必要なソフトウェアとサーバスペースだけが確保される。

 このシステムのクラウド部分のホスティングおよびHIEシステムの構築と運営のために、マサチューセッツ州が契約を交わした主たる業者は、Orion Health North Americaだ。「HIEシステムのホスティングにクラウドの手法を採用することで、インフラ構築の障壁を引き下げられる」と同社のポール・ビスコビッチ社長は語る。

 「1つには、コストの削減が可能だ」と同氏。クラウドシステムを運営する民間企業は、サーバとソフトウェアに関してスケールメリットを提供できるからだ。さらに、民間の組織と契約することで、州政府は独自にデータセンターを構築する必要を回避できるため、それがコストの大幅な削減につながる。

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