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オンプレミス、ホスティング……従来型インフラのメリット/デメリットをおさらいクラウドファースト時代に考えるITインフラ選定のツボ【前編】

多様なITインフラ形態が存在する中で、どれを選べばいいのか。特にクラウドの登場によって、ITインフラの選定基準は大きく変わろうとしている。前編では、オンプレミス、ハウジング、ホスティングを比較する。

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 2013年3月、TechTargetジャパンによって「クラウドコンピューティングの導入・利用状況に関するアンケート調査」(参考:クラウド導入に関する読者調査結果リポート(2013年3月))が実施された。フリーコメントの一部を読んで、興味深い点に気が付いた。回答者の大多数の悩みは、結局のところ、次の2つのいずれかに当たるようなのだ。

(1)クラウドといっても、セキュリティが心配だ

(2)クラウドといっても、いろいろなサービスがあってよく分からない

 (1)「セキュリティ」については、さまざまな識者や調査会社から意見表明やリポートが出ており、いずれ本稿でも整理して解説を加えたいと考えている。今回は、(2)「いろいろあってよく分からない」にフォーカスを当ててみたい。(2)を押さえれば(1)の理解も進むことだろう。

 筆者のところにも「クラウド化」のご相談をいただくことが多いが、「クラウド」という用語の捉え方や思惑が各人各様で、混乱が大きいことが確かにうかがえる。今まさに、原稿の執筆時点でも「地球上で最も包括的なクラウド」というキャッチフレーズの付いた某ベンダーのプライベートイベントが行われている。思わず「包括的」という言葉の意味を辞書で調べてしまったくらいだ。キーワードや煽り文句に惑わされず、冷静にサービスを比較できる目を持ちたい。

 この観点から、本稿では、クラウドよりも広く「ITインフラ」全般を捉え、それらの特徴を比較することから始めてみたい。ここでいうITインフラは、「サーバ」と「サーバ設置場所」を併せた概念とご理解いただきたい。以下では特定ベンダーの商品名やキーワードは極力避け、より一般的な用語を用いることにする。ベンダーによっては「一般的な用語」そのものを商品名として採用しているケースもあるが、本稿で解説する特徴を捉えていくことで本質が見えていくと考えられる。

 本稿では、下記のような概念を軸として取り上げる。多少用語の定義が曖昧だったり、専門家から見れば異論のある部分もあろうとは思うが、あくまでも目安ということでご容赦をいただきたい。なお、記事を2回に分けているのでご留意願いたい。

前編 1.従来型オンプレミス
2.ハウジング
3.ホスティング
後編 4.プライベートクラウド(オンプレミス型)
5.プライベートクラウド(ホスティング型)
6.プライベートクラウド(パブリッククラウド型)
7.パブリッククラウド

 また、比較のポイントとして次の項目を考えることとする。

  項目 意味
a サーバの所有権 ハードウェア(サーバ類)の所有権。自社/他社で区別する
b 場所の所有権 ハードウェアの設置場所が「誰の土地か」という点。自社/他社で区別する
c 安全性のコスト セキュリティ、可用性、災害対策などの点をコスト面から評価する。絶対的コストの算出は困難なので、本稿内では相対評価とする
d リソース伸縮のコスト リソース(仮想サーバ含む)の追加(増設)および縮退(廃棄)のコストを比較する。本稿内では相対的に高い/低いで表す
e 障害コントロール 障害が発生した場合に、利用者側が事態をどこまで把握できるかを考える。本稿内では相対評価とする

1.従来型オンプレミス

  項目 内容
a サーバの所有権 自社
b 場所の所有権 自社
c 安全性のコスト リスクを低めようとすると、自動的に高コストとなる
d リソース伸縮のコスト 高コスト。リードタイムも長い。廃棄にもコストが掛かる
e 障害コントロール 完全に掌握できる

特徴

 クラウド登場以前からある、典型的なシステムインフラの1つである。自社でサーバを購入し(リース含む)、自社所有の施設などに設置して管理・運用する形態を指す。基本的にシステムごとにサーバ構成が確定しており、変更が柔軟に行われることはない。対象業務が安定的に継続することを想定し、トランザクションの急激な増大や縮小が起きないことを前提に構築する。設置場所は自社ビル内のサーバルームや計算機室の他、決して好ましくはないが執務スペースのラックや床などに置いている例も珍しくない。

メリット

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