各サービスの中心となるか
Googleウォッチャーが目を離さない「ハングアウト」動向
Googleがユニファイドコミュニケーションツールである「ハングアウト」の機能を拡張し、Googleの各サービスを統合しようとしている。同社の動きは他のコミュニケーションツールにどう影響を与えるのか。
米Googleは最近、「Google Voice」の「Google Hangout」(以下、ハングアウト)への統合を発表した。同社は、Googleアプリケーションの集約による複合的なソーシャルエクスペリエンスの提供を進めており、その一環だ。
また、Googleはハングアウトプラットフォームで、オープンなインスタントメッセージング(IM)とプレゼンスコミュニケーションを実現する「XMPP(Extensible Messaging and Presence Protocol)」への対応を打ち切った。XMPPは、IMやプレゼンスプラットフォームの相互運用やフェデレーション(ID連携)の方法を提供するように設計されている。Googleがこのオープン標準に見切りを付けたことは、ベンダーがこれまで考えていたほど、メッセージングの相互運用性の優先順位が企業の要望の中で高いわけではないことを示しているのかもしれない。
Googleは、ユーザーをハングアウトに移行させることで、「GmailやVoiceなど各種Googleアプリケーションを使い分ける必要がない、包括的なコラボレーション環境を提供しようとしている」と米Nemertes Research Groupの副社長兼サービスディレクター、アーウィン・ラザー氏は指摘する。「実際、メールやチャットクライアントとしてGoogleアプリケーションを使っている企業の多くが、それらとユニファイドコミュニケーション(UC)を統合する方法を探っている」
音声、ビデオ、チャットといったUCアプリケーションを組み合わせたソーシャルプラットフォームであるGoogle+は、ユーザーの獲得にあまり成功していない。音声やメッセージングアプリケーションをハングアウトに統合することで、Googleは、多くの企業が使うソーシャルプラットフォームの分野で競争力を高めることができるかもしれない。「Googleはハングアウトを目玉にして、人々をGoogle+に引き付けようとしている」と、米TalkingPointz Researchのデーブ・マイケルズCEOは語る。
Googleアプリケーション:オープン標準に見切り
「ハングアウトは、Googleが未来のGoogle Voiceとして設計したものであり、通話の発信と受信は、このプラットフォームの初期段階の機能にすぎない」と、Googleの広報担当者のイスカ・ハイン氏は語る。ユーザーは、Gmail、Google+、Chrome拡張機能のハングアウトから電話をかけられるようになった。ハングアウトプラットフォームは、Googleトーク、Google+のメッセンジャーに加え、Google+で従来提供されてきたビデオチャットアプリケーションも利用可能になった。
Googleは異種UCアプリケーションを集約しようとしたが、それらの集約よりもむしろ、再構築が必要だった。また、「Googleは従来のGoogleアプリケーションにおけるXMPPの採用がセキュリティ問題を招いたと判断した」とハイン氏は説明する。「XMPPによるGoogleトークのオープン性のせいで、ユーザーをスパム攻撃のような嫌な目に遭わせるしまった。加えて、われわれはハングアウトによって現在実現している多様なコミュニケーションを、限定的にしかサポートできていなかった」
GoogleはXMPPによる相互運用性を早くから提唱していたが、他のIMやプレゼンスツールのベンダーは同調しなかった。「ここ数年、われわれはオープンメッセージングシステムを世界に提供しようと努めてきたが、どの企業もわれわれの取り組みに加わろうとしなかった」とハイン氏。「Googleトークは、フェデレーションをサポートする唯一の主要なネットワークだった。業界他社がこのオープンシステムの採用に踏み切らないのは明らかだ」
XMPPは、異なるベンダーのIMやプレゼンスツール間でのチャットのやりとりを可能にするが、そのための方法は他にもある。企業は、米NextPlaneやカナダのEsna Technologies(Esnatech)のようなミドルウェアベンダーの技術を使って、コミュニケーションツール間のフェデレーションを実現することもできると、ラザー氏は述べる。
業界は商用メッセージングツールに向かうのか
米IBMや米Microsoftなどのベンダーは、SIP(Session Initiation Protocol)ベースのSIMPLE(SIP for Instant Messaging and Presence Leveraging Extensions)プロトコルによって相互運用性を実現している。しかし、「XMPPがIMやプレゼンスツールにもたらす本当のメリットは、ツールやプラットフォームでは生かされなかった」と、米Frost & Sullivanのリサーチ担当副社長、メラニー・テューレック氏は語っている。
XMPPは、メッセージングやプレゼンスプラットフォームのオープン性を実現するが、業界では、IMフェデレーションは受け入れられていない。「チャットは重要なビジネスコミュニケーションモードだ。しかし、企業は、フェデレーションが可能なコミュニケーションツールを他にも持っている。電子メールがその1つだ」とテューレック氏。「IMやプレゼンスツール間のフェデレーションは、今まで実現されなかったのであれば、これからも決して実現されないだろう」
「GoogleはXMPPから手を引き、自社がコントロールでき、機能を追加できる独自のプロトコルを考案しようとしているのかもしれない」とNemertesのラザー氏は推測する。「多くのベンダーは、相互運用性の確保にあまり熱心ではない。何でも思い通りにしたいからだ」と同氏。「音声やビデオアプリケーションに関するGoogleの動きを見ると、プロトコルを共有してオープンソース化するのは素晴らしいことだが、彼らは結局、独自のコラボレーションプロトコルを持ちたがっているのではないかと思える」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[日本オラクル株式会社] ピンチをチャンスに変えたEPR製品は? 先行企業の導入事例3選 -
技術文書・技術解説
[日本オラクル株式会社] 無自覚なリスク 秘伝Excelファイルが監査の壁、不正・ミスの温床となる理由 -
製品資料
[日本オラクル株式会社] 戦略的経理の第一歩 失敗のない「脱Excel」を実現する秘訣とは? -
技術文書・技術解説
[日本オラクル株式会社] いまさら聞けないオンプレERPとクラウドERPの違い 最適な製品をどう見極める? -
事例
[株式会社ビザスク] 連結売上高が約2倍に成長、富士フイルムが実践した新規事業創出の戦略とは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
3
「ノートPC派」は損をしている? Dellと考える“自作PC”のメリット
-
4
「有線LAN環境」に関するアンケート
-
5
LINEヤフーはなぜ「社内の管理者」すら信用しないインフラを作ったのか
-
6
IT製品の導入に関するアンケート「PC&デバイス」編
-
7
「業務改善とツール活用」に関するアンケート
-
8
慶應義塾が「Notion」を選んだ理由 AI導入の盲点になる“情報のサイロ化”
-
9
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
10
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
2
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
3
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
4
バックアップは“取っているから大丈夫”なのか? ランサムウェア時代の備え方
-
5
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
6
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
7
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
8
5分で分かる Microsoft 365のデータ損失に備えるためのバックアップの仕組み
-
9
ネットワーク遅延の原因、「パケットロス」の基礎知識と効果的な解決策
-
10
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー