課題はデバイスか、アプリか
モバイルOSを統合? MicrosoftがAppleに追い付くための秘策を探る
新しいCEOの就任、クラウドの成功など、米Microsoftの変化は順調に進んでいる。ユーザーの関心は同社がモバイル市場でも大きな成功を収められるかだ。先行するApple、Googleに追い付くには?
米Microsoftは、2012年10月に全く新しいユーザーインタフェースを搭載した「Windows 8」をリリースした。しかし、一般消費者ほど簡単に変化に対応できない企業ユーザーをないがしろにしていると厳しい評価を受ける結果になった。また、2013年度の第4四半期には、「Surface RT」の在庫調整のために9億ドルの損失を計上した。
その後、Microsoftはエンジニアリング事業を整理し、「デバイス&サービスカンパニー」として再編を行った。それから程なく、CEOのスティーブ・バルマー氏が退任を表明し、2月に後任としてサトヤ・ナデラ氏がCEOに就任した(参考記事:「Nokia」「Surface」をどうする? 問われるMicrosoft 新CEOの決断力)。また、Microsoftは2013年にフィンランドのNokiaを72億ドルで買収した。米GoogleのAndroidデバイスと米AppleのiOSデバイスには遠く及ばないものの、この買収によりスマートフォン市場で第3位の企業となったとみられる。
しかし、Microsoftは、競争と変化の激しいハイテク業界で生き残るために変革を進めているIBMやDellなどの成熟企業と何も変わらない。
「バルマー氏が行った変革とMicrosoftが新しいCEOを迎えた事実の舞台裏には、さまざまなストーリーがある」と米ニュージャージー州の大手製薬会社でモバイルイノベーション部長を務めるブライアン・カッツ氏は指摘する。「多くの場合、Microsoftは適切な判断を下してきたが、今回は結果が出るまで分からない」
Microsoftは「Office 365」や「Windows Azure」などのクラウドサービスで一定以上の成功を収めている。Office 365は年間売り上げが10億ドルに達する見込みで、Windows Azureの導入も徐々に進んでいる。
Microsoftはモバイルの分野でも成功できるのか
Microsoftは退行しているようにも見える。ハードウェアビジネスの製品ラインにタブレットを加え、買収によってスマートフォン市場に参入した結果、実質的に、大手パートナー企業と競合することになっている。
米クリーブランドのMCPcでエンドユーザーとモバイルコンピューティング部門の最高技術責任者を務めるイラ・グロスマン氏は「Microsoftが販売チャネルとハードウェアメーカーによって代表される企業から、顧客との関係の上に成り立つ企業へとどのように変化するかは見ものだ」と話している。
法人市場ではデスクトップとサーバの分野におけるMicrosoftの輝かしい実績は有効だ。しかし、Microsoftの年次財務アナリスト会議の最後のプレゼンテーションでバルマー氏は、Microsoftがモバイル市場で機会を逸していることを認めている。Appleの「iPhone」と「iPad」は消費者市場と法人市場で地位を確立しており、ITのコンシューマライゼーションをけん引している。
「Microsoftにはモバイルに関するかじ取り役が不在だ。モバイル分野での勢力拡大を実現するには、モバイルの指揮権が必要だ」と米マサチューセッツ州ファルマスにあるSepharim Groupの主席アナリスト兼創設者のボブ・イーガン氏は指摘する。
関心は、MicrosoftのCEOナデラ氏が語る今後のモバイルとクラウド重視の戦略に注がれている。MicrosoftがSurfaceタブレットを大々的に売り出し、Nokiaを事業に取り込んだことで、デバイスとサービスを重視する姿勢がさらに明確になった。
2月にCEO就任後初めて開催された顧客とパートナー向けの公開会議でナデラ氏は次のように発言している。「デバイスは良い方向に進んでいる。『Surface Pro 2』に限界はない。デバイスで実行中の多くのアプリケーションのバックエンドシステムはクラウドにある」
Microsoftは収益の大きなモバイル市場を既に逃しているのではないかと疑問を抱くIT専門家もいる。
「Microsoftの『どのデバイスでも1つの体験を』という販促キャンペーンは良くできているが、遅過ぎるのではないか」と、米アラバマ州バーミンガムに拠点を置くAlabama Gas Corpでデスクトップシステムの管理者を務め、長年Microsoft製品を使用しているデイビッド・ドリッガーズ氏は話している。
Microsoftは、Surfaceの売り出し不振の後、より良いモバイルビジョンの実現に向けて懸命に取り組んできた。2014年度の第2四半期には、Microsoftは約9億ドルの収益を挙げ、2013年12月には在庫切れによる入荷待ちに悩んだ。現在、MicrosoftはNokiaとの合併の準備を進めているが、企業文化の問題に直面している。
「Nokiaの買収は、ソフトウェア企業がモバイルソフトウェアの将来性を確保するために行ったハードウェアの買収だ」と米ニューヨークの451 Researchでモバイル/ワイヤレス調査部門のディレクターを務めるクリス・ヘーゼルトン氏は指摘する。「これは2013年に行われた最大の買収だが、ここ数年で行われた最大の買収でもある」
最近、451 Research ChangeWaveは1481人のIT担当者を対象に調査を実施した。この調査によると、40%がスマートフォンの購入を予定していた。そのうち、2014年3月までに「Windows Phone」を購入すると回答したのは12%だった(複数回答)。一方、iOSデバイスを購入すると答えたIT担当者は65%、Androidデバイスを選ぶと答えたIT担当者は40%だった。
アプリは救世主となるか
Windows RTを排除することで、Microsoftはモバイルの分野で成功を収められるようになるかもしれないとカッツ氏は持論を展開した。
「Microsoftはタブレットに2種類のOSがあり、スマートフォン用にまた別のOSがある。これは多過ぎる」
カッツ氏は、Windows RTを撤廃し、SurfaceタブレットにWindows Phone OSを搭載することを提案している。SurfaceタブレットにWindows Phone OSを搭載すると、ユーザーは10万個以上のアプリを利用できるようになる。
「Windows Phoneはスケールアップできるので、これをやらない理由はない。Surface Pro 2とWindows Phoneの間には大きな違いがある」
米ワシントン州カークランドのITコンサルティング会社Directions on Microsoftで調査部門の担当部長を務めるロブ・ヘルム氏は次のように語っている。「Microsoftはアプリケーション開発者が納得できる投資ビジョンを示し、自社で開発したアプリケーションをプラットフォームに公開して投資を行動で示す必要がある」
「Microsoftは今後12~24カ月でアプリケーション開発者からの信頼を取り戻す必要がある」
そして、次のように続けている。「MicrosoftはWindows Phoneプラットフォームとタブレット用プラットフォームの統一を図っているようだ。これはアプリケーション開発者からの信頼性を高める一歩になるだろう」
しかし、モバイルはMicrosoftが幅広く展開するビジネスの一部にすぎない。Microsoft製品は、企業に定着しているので、企業がMicrosoft製品から撤退することは当分ないと業界の専門家やIT管理者は見ている。
米Gartnerのエンタープライズモビリティマネジメントリサーチの責任者クリス・シルバ氏は、「Gartnerは、Microsoftの戦略、サービス、Windowsクライアントを高く評価している。しかし、Nokiaを買収する以前の方が評価は高かった」と述べている。
この記事に関してMicrosoftからのコメントは得られなかった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[NTTインテグレーション株式会社] 取引先のセキュリティをどう管理する? 「SCS評価制度」対応の勘所を解説 -
製品資料
[NTTインテグレーション株式会社] SCS評価制度「★4」取得のカギ 最大の壁を突破する方法とは? -
製品資料
[NTTインテグレーション株式会社] 2026年度末から運用開始 「SCS評価制度」に備えて製造業がやるべきことは? -
事例
[ネットワンパートナーズ株式会社, アイビーシー株式会社] ハイブリッド環境の一元管理と快適な無線LAN環境、三井ホームはどう実現した? -
市場調査・トレンド
[TD SYNNEX株式会社] 調査で学ぶセキュリティ運用の実態 人を増やさず品質を維持する方法とは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
3
1200万円のSaaS導入を回避 スギ薬局「運用費10万円」のAIエージェント構築術
-
4
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
5
ITエンジニア1265人調査 生成AIを使い込むほど「人の確認」が重い理由
-
6
AIが本番環境を削除し復旧に13時間 「暴走」ではなかったAWS事例
-
7
高額GPUを買っても成果ゼロ? 「プライベートAI」の落とし穴
-
8
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
9
レガシー基幹システムをSAPに統合 山善が突き止めた「標準化と個別最適」の境界線
-
10
【漫画付き】"RAG導入失敗3例"と処方箋 「入れても使われない」を終わらせる
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
2
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
3
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
4
バックアップは“取っているから大丈夫”なのか? ランサムウェア時代の備え方
-
5
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
6
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
7
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
8
ネットワーク遅延の原因、「パケットロス」の基礎知識と効果的な解決策
-
9
5分で分かる Microsoft 365のデータ損失に備えるためのバックアップの仕組み
-
10
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー