OneDriveは容量増加で1Tバイトに
10万人が「Office 365」に移行開始、その時何が起きるか?
「Office 365」利用者に対する「OneDrive」の提供容量が1Tバイトに拡大する。Office 365の利用促進が米Microsoftの狙いだ。一方で、ロサンゼルス郡政府がOffice 365への移行を決めた。その導入の背景と効果を紹介する。
米Microsoftは、サブスクリプション形式のオフィススイート「Office 365」の契約者を対象にクラウドストレージ「OneDrive」の提供容量を1Tバイトに拡大する。クラウドストレージ市場の成長を背景に、Office 365を企業と個人に訴求したいというのが同社の狙いだ。
Microsoftのこうした戦略は、既存顧客と潜在顧客のどちらにとってもOffice 365の魅力を高めるものだ、とアナリストらは見ている。
「ストレージはもはや、オフィススイートやプラットフォームに含まれる当然の機能の1つになりつつある」と話すのは米ITコンサルティング会社、Directions on Microsoftの調査担当副社長であるウェス・ミラー氏だ。「ストレージの価格競争は、企業と個人にとってある程度の購買動機になるだろう」
しかしながら、企業がホスティング型サービスで重視するのは、もっと別のところだ。
「ほとんどの企業にとって、ホスティング型サービスで重要な点は『GバイトまたはTバイト当たりの料金』ではない」とミラー氏は語る。
実際、Office 365の利用者にしてみれば、1Tバイトのストレージはちょっとしたおまけのようなものだろう。ロサンゼルス郡政府も、これからその恩恵を受ける一員に加わる。
ロサンゼルス郡政府が認めるOffice 365の成熟度
ロサンゼルス郡政府は2014年6月、業務効率と部門間コラボレーションの向上を目指し、約10万人のユーザーを「Office 365 Government」(行政機関向けOffice 365)へ移行する作業を開始した。
数年前には、電子メールシステムを単一プラットフォームに統合する作業に着手した。それまでは「Lotus Notes」「Novell GroupWise」「Microsoft Outlook」など、部門ごとにばらばらのアプリケーションが使われていた、とCIO(最高情報責任者)のリチャード・サンチェス氏は説明する。ロサンゼルス郡政府では当時、クラウドに対するセキュリティ上の不安から、Office 365の採用は見送ったという。
「何年か前のOffice 365には今ほどの信頼性がなかった」(サンチェス氏)
ロサンゼルス郡政府は、メールシステムの統合を進める一方で、Office 365の成熟度や潜在的なセキュリティ問題について、Microsoftと話し合いを始めた。現在、Office 365は政府規制に準拠するようになり、サービス全体の総合的なセキュリティを確保している。
また、ロサンゼルス郡政府としては、CJIS(刑事司法情報システム)およびHIPAA(医療保険の相互運用性と説明責任に関する法令)にも準拠する必要があった。
「司法と医療のコミュニティーではコンプライアンスは必要不可欠であり、それが満たされていなければ上層部がOffice 365を検討することはなかった」(サンチェス氏)
さらに、Microsoftがコミットするデータセンターインフラの構築、セキュリティフォーカスの強化、OneDriveストレージの増量、コミュニケーションツール「Lync」、モバイルワーカーの端末1台当たりのOfficeライセンス数といった諸要素を考慮した結果、ロサンゼルス郡政府はOffice 365の採用を決定した。
決め手となったコラボレーション機能とモビリティ
ロサンゼルス郡政府には37もの機関があり、異なる組織に属する職員同士の共同作業は容易ではない。使用するアプリケーションもそれぞれ異なっていたため、別の機関とのデータ共有は特に困難だった。
例えば、法執行に携わる各機関は情報交換が必要だ、とサンチェス氏は話す。そして、Office 365を特に強く支持したのは保安官事務所であり、そこで働く1万7000人の職員を最初に移行する予定だという。
「社会福祉でも一般行政でも、あらゆる部門で(Office 365による)業務や共同作業の効率化が期待されている」(サンチェス氏)
また、モビリティもOffice 365採用の決め手の1つになった。OneDriveと「Microsoft SharePoint」、そしてモバイル端末を使うことで、職員の生産性は向上する。
「職員が接する相手にもモバイルユーザーは多く、技術の流れはその方向へ向かっている。モバイルアプリの使用は、多くの職員にとって必須となっていくだろう」とサンチェス氏は述べる。将来のモバイル開発では、Windows、Android、iOSなど各種プラットフォームをサポートする予定だ。
移行プロセスの難しさ
10万人のユーザーをOffice 365へ移行するのは気が遠くなりそうな大作業であり、ライセンスの交渉も複雑になる。ロサンゼルス郡政府は、複数のEnterprise Agreement(EA)とクライアントアクセスライセンス(CAL)を1つのサブスクリプションサービスへ切り替えなければならなかった。
全ての機関に適合する「Active Directory」や行政プロセスを構築するのも難題だ、とサンチェス氏は話す。法執行機関ごと、医療機関ごとに要件が異なるので、なおさら大変だという。
小中規模の部署で働く職員にどうやってOffice 365のトレーニングを実施するかという問題もある。標準的なOfficeアプリケーションだけでなく、Lync、OneDrive、SharePointの使い方も教育しなければならない。
Microsoftの目まぐるしい進歩にロサンゼルス郡政府がどうやってついていくかというのも問題だ。小規模な組織はそうした変化に慣れていないため、「部署内で一定の状態を維持するのが得策だろう」とサンチェス氏は語る。
大きな問題が起こらない限り、ロサンゼルス郡政府の移行プロジェクトは1年以内に完了する見込みだ。
サンチェス氏によると、このプロジェクトが完了すれば250万ドルの経費削減になるという。ストレージ、インフラ、設備、ライセンスは部署ごとに管理することになるので、実際にはそれ以上の削減が見込まれる。Office 365はロサンゼルス郡政府のプライベートクラウドで実行されるため、さらに削減額は大きくなると同氏は予想している。
Microsoftソリューションプロバイダーの米En Pointe Technologiesが今後5年間の移行をサポートする。今回の契約はライセンス収入7200万ドル相当であり、MicrosoftのOffice 365行政機関プロジェクトとしては2014年最大規模となる。
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