クラウドガバナンスとデータ主権をめぐる懸念
クラウドの王者Amazonに意外な弱点、ユーザーの不満はいつ爆発する?
米Amazon Web Servicesはクラウド界の王者かもしれないが、顧客の中にはクラウドデータの主権に対する同社の姿勢が不明瞭であることに疑念を抱いている向きもある。
世界各地に顧客を持つ企業にとって、クラウドガバナンスとデータ主権をめぐる懸念は大きな障害となる。だがこれは、単に「データが適切な場所に置かれているかどうか」だけの問題でなく、たとえ低レベルの保守作業であっても、「データがどこかに転送されることがないという保証を書面で得られるかどうか」の問題でもある。
米Amazon Web Services(以下、Amazon)はセーフハーバー協定(欧州連合諸国から米国に転送される個人データの保護に関する協定)に参加しており、特定のAWSリージョンからデータを転送しない旨をカスタマーアグリーメントで定めている。だがクラウドのアーリーアダプターからの報告によると、そうした保証は常に満たされているわけではないようだ。
米国のある人材派遣会社は最近、世界各地に分散する16のインスタンスのCRMソフトウェアを米Salesforce.comのクラウドに統合し、「Amazon Web Services」(以下、AWS)でカスタムコードを実行するプロジェクトに着手した。この会社は既にAWSを多用している。このプロジェクトを統括するITディレクターによれば、Salesforce.comからセーフハーバー協定への同意を得るのは「容易だった」が、AWSとの交渉は「難航した」という。
「AWSは本当のところ、セーフハーバー協定やセキュリティ、国際的なデータ、データの保存場所といったことの話し合いには関心がないようだ」と、このITディレクターは語る。
「会議やメールでのやりとりを進めるにつれ、AWSにはこの議題に対する関心がないように思えてきた。AWSはデータ主権について何も手を打っていないようだった。どの質問にも答え慣れていない感じがした」と、このITディレクターは当時を振り返る。
この人材派遣会社は、AWSの使用を諦めるのではなく、「全てのデータを暗号化して米国に保存すること」でこの問題を切り抜けた。法律顧問も、この方法であれば、会社として国際的なユーザーに対する義務を果たせると考えた。
この方法はセキュリティ担当者に好まれる適切な解決策に見えるかもしれないが、IT部門にとっては負担でもある。AWSは法的責任を負う事態を回避すべく、この顧客企業の暗号鍵の管理を断っている。「Amazon Relational Database Service(Amazon RDS)」など、AWSのその他のサービスでは時々あることだ。「セキュリティ担当者は暗号化を好む。私としては、管理がもっと簡単ならありがたいのだが」と、このITディレクターは語る。
一方、クラウドサービス事業者の間では、データ主権をめぐる透明性をアピールするところも出てきている。例えば、米国と英国にデータセンターを持ち、VMware vCloudベースのクラウドを運営する米iLandは、データ転送に関するポリシーを前面に掲げている。
「クラウド事業者の中には、リージョン間の負荷分散を特徴の1つとしながら、必ずしもそれを明言していないところもある」と、iLandの製品管理マーケティング担当副社長を務めるライラック・シェーンベック氏は指摘する。一方、iLandのクラウドサービスでは必要に応じて負荷分散を実行できるが(例えば、大西洋をまたいだディザスタリカバリを目的とする場合など)、その判断を下すのは「常に顧客」だという。
「それにひきかえ、AWSはそうした情報を提供しないばかりか、実際にどうしているかについても不明瞭だ。保証がないよりもなお悪いくらいだ」(シェーンベック氏)
Amazonは本稿に関するコメントを断っている。
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