「Azure RemoteApp」の詳細を見る
Mac、iPhoneでもWindowsアプリを利用可能 Microsoft純正サービスの実力は?
米Microsoftのクラウドサービス「Azure RemoteApp」を使用すると、IT担当者は「Windows」が搭載されていないデバイスにもパブリッククラウドからWindowsアプリを配信できるようになる。だが、このサービスには検討すべき幾つかの欠点がある。
米Microsoftのクラウドサービス「Azure RemoteApp」を導入して使用する作業はシンプルすぎるくらいだと早期テスターは言う。だが、レガシーアプリがサポートされないことに加え、シンプルさのトレードオフの中には導入を妨げる大きな要因となるものがある。
アプリの仮想化と異なり、Azure RemoteAppではアプリの「ラッパー」は不要だ。「Windows Server 2012 R2」で動作するアプリなら、ほぼ機能する。このサービスはパブリッククラウドの「Microsoft Azure」で動作する。そのため全てのアプリの管理タスクはMicrosoftが行う。
Azure RemoteAppは前途有望なサービスである。だが、最大の欠点は古いバージョンのWindowsがサポートされないことだろう。そう語るのは、米ヒューストンに拠点を置くエンタープライズクラウドソリューション/移行サービスプロバイダーのNimboでリードインフラアーキテクトを務めるアーロン・エバートウスキ氏だ。
「Microsoftは常にユーザーが何かをできるようにすることを語る。だが、今回はユーザーを置き去りにしている。1ユーザーとしてはその点が気になる。Microsoftは、この流れに乗らなければ取り残されるとユーザーに言っているようなものだ」とエバートウスキ氏は指摘する。
エバートウスキ氏は、Azure RemoteAppのテストを行っている。2014年7月中旬にヒューストンのAzureユーザーグループに対してセッションを実施した。同氏によると、多くのカスタムアプリやJava仮想マシンで動作するアプリもAzure RemoteAppでは機能しないという。
「ユーザーはフルデスクトップではなくアプリにアクセスすることを求めているとMicrosoftは主張している。これは事実だ。だが、ユーザーは使い慣れているレガシーアプリにアクセスできることを切実に望んでいる」(エバートウスキ氏)
「レガシーアプリのサポートがなければ、Azure RemoteAppは単なる最新アプリ専用の配信ファームでしかない」とエバートウスキ氏はいう。
「OpenGL 1.2」以上を使用するアプリも動作しない。これらのアプリではチップセットメーカーが提供する専用のドライバーが必要になる。Microsoftによると、現在Azure RemoteAppではOpenGL 1.1以下を使用するアプリがサポートされている。
Microsoftは、サポートの制限を憂慮しているようには見えない。このような制限があることで、ユーザーは一部のアプリを実行するために依然としてWindowsを使用しなければならないからだとエバートウスキ氏は指摘する。
Azure RemoteAppのシンプルさのトレードオフ
アプリをクラウドから配信することは目新しいことではない。企業は既にアプリを外部委託したり、各種クラウドで実行している。Microsoftはシンプルさによって差別化を図ろうとしている。
Microsoftのリモートデスクトップチームでプログラム管理の主席ディレクターを務めるクラース・ランアウト氏は「IT部門はOSやサービスを管理することを望んでいない。IT部門が望んでいるのは、承認済みのエンドユーザーにアプリを提供し、管理に関する悩みから解放されることだ」と話す。
IT管理者にとってAzure RemoteAppは簡単に使用できるサービスだ。アプリの管理、負荷分散、その他のアプリ配信タスクは全てMicrosoftが行う。
「Azure RemoteAppでアプリを実行するためにインフラやITスキルに投資する必要もない。このサービスを利用すると複雑さを排除できる」と米マサチューセッツのミルフォードにあるIT分析会社のEnterprise Strategy Groupでアナリストを務めるマーク・ボウカー氏はいう。
だが、シンプルさと引き換えに支払う代償もある。Azure RemoteAppでは、IT担当者は、これまでのように細かく制御することができない。
米Citrix Systemsの「Citrix XenApp」と比較すると、Azure RemoteAppが抱える大きな欠点は一目瞭然だ。XenAppには、コンテキストベースのルールが用意されている。IT担当者はこのルールを使用して、デバイスの特性やIPアドレスに基づいてユーザーのエクスペリエンスを制御できる。こう語るのは、米テキサス州オースティンに拠点を置くIT分析会社Virtualization Practiceで業界アナリストを務めるサイモン・ブラムフィット氏だ。
「Azure RemoteAppにはルールを作成する方法が見当たらない。一方、XenAppではポリシーを作成することができる。信頼できないデバイスのローカルストレージへのアクセスを防止したり、安全でない場所からアプリにアクセスできないようにすることが可能だ」(ブラムフィット氏)
Azure RemoteAppはパブリッククラウドサービスである。そのため、IT担当者は、アプリのパフォーマンス特性に基づいて、AzureのサーバとローカルのRemoteAppサーバを組み合わせるハイブリッドクラウドを構成することはできない。ディザスタリカバリや時期的な需要管理を目的とした場合も同様だ。現在、ハイブリッドクラウド構成のXenAppでは、この全ての操作を行うことが可能だとブラムフィット氏はいう。
Azure RemoteAppが本当に有益なサービスとなるには条件がある。それは、IT担当者がAzure RemoteAppでオンプレミスのアプリを実行できるようになることだ。この意見にエバートウスキ氏は賛同している。
「オンプレミスのアプリに付随する問題から解放されることについては全面的に支持する。だが、オンプレミスのアプリに時間とコストを掛け、耐えてきた企業には、オンプレミスのアプリをクラウドに移行する方法を提供すべきだ」とエバートウスキ氏は述べる。
GPUがサポートされないことで、シンプルさに拍車が掛かっている。一方、GPUのサポートがないことで、実行できるアプリの種類が限られるという弊害も生じている。IT担当者はAzure RemoteAppで高いグラフィック処理能力が必要なアプリを実行することを望んでいるとエバートウスキ氏はいう。
「個人的には、ぜひとも米Adobeの『Adobe Photoshop』をAzure RemoteApp環境に移行して、どのデバイスからでもアクセスできるようにしたい。だが、Photoshopのグラフィック処理負荷は高い。Azure RemoteAppでPhotoshopを実行してみたが、かなりの待ち時間があった。その一因はリモートプロトコルにあるだろう」(エバートウスキ氏)
米Amazon Web Servicesの「Amazon Workspaces」でもGPUはサポートされていない。ただし、米VMwareの「Horizon DaaS」など他のリモートデスクトップサービスではGPUがサポートされている。
結局のところAzure RemoteAppには制約がある。だが、最初の取り組みとしては悪くないとブラムフィット氏はいう。
「Microsoftが何かについて一度だけでも主導的な立場に立つことは喜ばしいことだ。あと3年待てば自力で優れたプラットフォームを実現するだろう」(ブラムフィット氏)
Azure RemoteAppのライセンスとテスト
現時点では、ライセンスと価格の詳細は明らかになっていない。ただし、リモートアプリへの接続とアプリ自体が使用する帯域幅はAzure RemoteAppのサービスに含まれる。また、RDSのクライアントアクセスライセンスは不要だ。Microsoftが公開しているFAQのページによると、Azure RemoteAppにはサービスを使用するために必要な全てのライセンスが含まれるという。MicrosoftはAzure RemoteAppを2014年中に一般提供する予定だ。
それまでの間、Microsoftはβ版のテスターから寄せられるフィードバックに基づいて新しい機能を追加するだろう。また、より多くのIT担当者にAzure RemoteAppをテストするよう積極的に働き掛けるだろう。
「Azure RemoteAppは簡単に使い始めることができる。だが、皮肉にもこのことがユーザー離れを引き起こす原因になっている。簡単な品質検査ではなく、さまざまなことを試してみて欲しい。われわれは10ユーザー、20ユーザー、100ユーザーという規模でテストが行われることを望んでいる」とランアウト氏は話す。
Microsoft Azureアカウントを持っていれば、Auzre RemoteAppをテストしてフィードバックを送ることができる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
技術文書・技術解説
[Jamf Japan 合同会社] MDMだけでモバイルセキュリティは十分? 不足する対策を16項目でチェック -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 世界的な家電メーカーが実践する「クリエイティブプロセス効率化」の方法とは? -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 世界的テクノロジー企業に学ぶ、プロセス標準化とプロジェクト納品自動化の秘訣 -
事例
[Wrike Japan 株式会社] ソニー・ピクチャーズ テレビジョンに学ぶ、次世代サービスデリバリーのヒント -
事例
[Wrike Japan 株式会社] ソミック石川に学ぶ、ICT浸透後に直面した「工数管理」の課題と解決策
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
2
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
3
「Microsoft一択」で本当にいいのか 知らぬ間にライセンス費用が膨らむ真相
-
4
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
ANAが専用回線から移行した「NaaS」の全貌 ネットワーク準備が数カ月から数週間に
-
7
「プログラマー不要論」にThe Linux Foundationが示した答え
-
8
VBAマクロ“原則ブロック”後に「Office」でマクロを実行する方法
-
9
【基本情報技術者試験】「デュプレックスシステム」と「デュアルシステム」の違いは?
-
10
「VMware離れ」は本当か 3000社がVCF 9にかじを切った現実的な理由
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
2
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
3
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
4
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
5
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
6
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
7
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
8
ドラマで分かる、標的型攻撃メールの被害を受ける企業と回避できる企業の分岐点
-
9
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
10
少額減価償却資産が40万円未満へ拡大、令和8年度税制改正で押さえるべき変更点
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー