プレビュー版を検証
「Windows 10」と「Office for Windows 10」を検証、本当に便利に使えるユーザーは?
米Microsoftの次期OS「Windows 10」は何を目指すのか。Windows 10と「Office for Windows 10」のプレビュー版を検証して見えてきたことを語る。
「Windows 10」の最初のプレビュー版を見る限り、米MicrosoftがノートPCを主要なターゲットにしていることは明らかだ。Microsoftが押し付けがましいスタート画面を廃止し、デスクトップPCに適したUI(ユーザーインタフェース)を採用するというのは、新OSをWindows 10と名付けるのにふさわしい判断といえるかもしれないが、機能的には「Windows 7」と「Windows 8」の中間にある線をまたいだような格好だ。
タブレット一辺倒からの回帰
市場の標準という制約条件を考えれば、これは致し方ないことだろう。MicrosoftがWindows 8を開発したのは、各社のノートPCの販売が落ち込み、タブレットの販売に勢いが出始めていたころであり、同社は有力なタブレット戦略を必要としていた。だがその後、状況は変化した。米調査会社Gartnerによると、「Surface Pro 3」などハイエンドの“2 in 1”型デバイスに後押しされ、2015年にはノートPCの販売が好転する可能性があるようだ。一方、米調査会社IDCによると、純粋なタブレットの販売は2014年10~12月期に3.2%減少した。これは2010年以来、初めてのことだという。
Microsoftはタブレットユーザーからの不満を抑えるべく、「Continuum」機能を備えるWindows 10はタブレットに適していると宣伝している。ContinuumはWindows 10をタッチ操作に適合させる機能だ。だが、実際にはWindows 10は、Windows 8や「Windows 8.1」のような「タブレット向けのOS」というよりは「タブレットに対応したOS」と呼ぶのがふさわしいようだ。
Continuum機能によってデバイスが「タブレットモード」に設定されていても、マウス操作用のショートカットが含まれるタスクバーが常に表示される。タスクバーが非表示になるのは、「auto hide」と呼ばれる自動非表示の設定になっているか(しかも、Windows 10の初期ビルドでは、タスクバーが隠れないこともあった)、真のフルスクリーンモードをサポートする数少ないアプリを起動しているときだけだ。
スタート画面自体も、これまでのスワイプに適したUIおよび横方向の画面操作に適したデザインから、縦方向の操作を基本とするデザインに変更された。そして、画面の3分の1が小さい「場所」(Places)ショートカットと「よく使うアプリ」(Most used)ショートカットによって占有される。もちろんこれらはタッチ操作でも利用可能だが、Windows 8.1と比べれば操作性はかなり劣る。UIの全体的なデザインがWindows 8/8.1よりも高い精度を要求し、特に今回われわれがテストに用いた8インチ型タブレットでは、マウスを使った方がはるかに操作しやすかった。垂直型の画面レイアウトはスクロールホイールの使用を前提としているように思える。
「仕事のためのOS」の復権
Windowsファンが「iOS」および「Android」と同OSを比較する際によく持ち出すのが、「これは仕事用のOSだ」という議論だ。WindowsとノートPCはコンテンツ作成者向けであるのに対し、AndroidとiOSおよびこれらに対応したタブレットはコンテンツを利用するユーザー向けなのだという。
だが、こうした主張も根拠がやや乏しくなってきた。すっきりとしたデザインでタッチ機能に対応しながらも、かなり本格的な機能を備えた「Microsoft Office」のAndroid版およびiOS用アプリが最近リリースされたからだ。しかも、MicrosoftはこれらのアプリをWindows 8用にはリリースしなかったため、Windowsでは従来型のデスクトップ向けソフトウェアしか利用できないのだ。
OfficeのアプリがWindows 10向けに提供されるのは、Windowsファンにとって朗報だ。ユニバーサルアプリ「Office for Windows 10」の「Microsoft Word」「Microsoft PowerPoint」「Microsoft Excel」「Microsoft OneNote」は、Android用およびiOS用の各アプリとほとんど同じだ。
すなわち、これらのアプリは軽量で、マウスとタッチ方式の両方に対応し、非常に使いやすいということだ。デスクトップ版と比べると機能的には大きく見劣りするものの、家計簿の作成や簡単なワープロ機能、シンプルな業務用プレゼンテーションといった基本的な機能しか必要としない大半のユーザーにとっては、Windows 10用の新しいOfficeアプリの機能は十分だといえる。
モバイル版Officeの場合と同様、ExcelのピボットテーブルやWordの変更履歴などの特に有用な機能の幾つかは、「Microsoft Office 365」のサブスクリプションを購入しなければ利用できない。これらのWindows 10版Officeアプリもまだ開発段階にある。印刷機能が利用できるようになったのもアプリの発表後だった。「OneDrive」のサポートは組み込まれている。「Windowsストア」のリストページでは「Dropbox」との連係機能が宣伝されているが、初期ビルドにはその機能がどこにも見当たらなかった。Android用およびiOS用のバージョンでは同機能がサポートされている。
これらのOfficeアプリはWindows 10と同時にリリースされる可能性があり、Microsoftがそれまでにアプリの修正・改良作業を行うのは間違いない。Windows版独自の機能が追加される可能性もある。Wordに手書き機能が含まれれば、Surface Proユーザーに歓迎されるに違いない。また、Office 365に登録していないユーザーも変更履歴機能を利用できるようにしてほしいものだ。
今後の予想はさておき、現時点で特筆すべきことは、これらのOfficeアプリがWindows 10のプレビュー版で非常に安定してサクサクと動くということだ。われわれは5日間にわたってアプリのテストを行ったが、どれ1つとしてクラッシュしたりフリーズしたりすることがなかったばかりか、動きが遅くなることさえなかった。起動と終了も迅速だった。テストに使用したマシンは非力な「Dell Venue 8 Pro」である(米インテルの「Atom」プロセッサ《Z3740D/1.33GHz》を搭載し、メモリは2Gバイト)。現時点での総合的なパフォーマンスは、各種のAndroidタブレットでテストした製品版よりも優れている。
巨大な潜在市場
Windows 10へのアップグレードに関するMicrosoftの戦略は極めて大胆だ。Windows 10リリース後の最初の1年間は、Windows 7/8/8.1を搭載した全てのデバイスは無料で同OSにアップグレードできる。違法コピーの存在や、Microsoftが正確な数字を明らかにしていないこともあって、Windowsの正確なインストールベースは不明だが、米Net Applicationsの推定によると、全世界のPCの約91%でWindowsが動作しており、Windows 7はそのうち約56%、Windows 8.1は10%、Windows 8は3.8%となっている。
つまり、巨大な潜在市場が存在するということだ。Windows 10が比較的軽量なOSになるとされていることも追い風になるだろう。2014年に最初にリリースされた「Windows 10 Technical Preview」の最低要件は、1GHzのCPU、1Gバイトのメモリ(32ビット版の場合)およびHDDの空き容量が16Gバイトというものだった。
もちろんこれはプレビュー期間中のWindows 8にも当てはまる。またMicrosoftは、Windows 8のスタート画面に対してディスプレー解像度の最低要件を追加したが、これは多くのネットブックや旧式PCの仕様を上回るものだった。こうした要件は、最近のWindows 10のデモで披露されたしゃれた機能(仮想現実機能や同一ネットワーク上で「Xbox One」をプレーする機能など)にも適用される可能性がある。
とはいえ、Windows 7デバイスの方が圧倒的に多く、Windows 7デバイスにはタブレット型がほとんど存在しないことを考えれば、Windows 10をノートPCの直感的なマウス操作に対応させるのは賢明な動きといえる。さらに、ハイエンドの2-in-1型デバイスやSurface Pro向けにタッチコントロールを追加するのも賢明な方針だ。
Surface Proなどのデバイスの登場でタブレットとノートPCの間の境界線がぼやけてきたのを背景に、Windows 10は適応力の高いOSになるだろう。Webサイトの表示がディスプレーのサイズに応じて拡大/縮小するのと同じように、Windows 10も異なる入力方法に柔軟に対応する。だが新OSで重視されるのは、Windowsユーザーの圧倒的多数を占めるマウスとキーボードを使うユーザーの方だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社シーイーシー] 脱VMwareに成功した企業は何をどう実践した? 事例に学ぶ戦略立案&実装のコツ -
製品資料
[株式会社オービックビジネスコンサルタント] ランサムウェア攻撃を“二重の防御構造”で防ぐ、クラウド型基幹システムの実力 -
製品資料
[株式会社オービックビジネスコンサルタント] 動画で知るランサムウェア被害企業のリアル、会計データが無事だった理由とは -
市場調査・トレンド
[セコムトラストシステムズ株式会社] EDR導入を成功に導くロードマップ:選定/稟議/運用のつまずきを防ぐコツ -
事例
[日本オラクル株式会社] ピンチをチャンスに変えたEPR製品は? 先行企業の導入事例3選
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
2
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
3
慶應義塾が「Notion」を選んだ理由 AI導入の盲点になる“情報のサイロ化”
-
4
生データを隠してデータ連携 KDDIが4000万人の顧客情報を安全に分析できた理由
-
5
「ノートPC派」は損をしている? Dellと考える“自作PC”のメリット
-
6
「また同じ説明か」 消費者の半数が離脱するAIチャットbotの“記憶喪失”
-
7
「企業におけるAI導入検討度とIT投資優先度」に関するアンケート
-
8
IT製品の導入に関するアンケート「サーバ&ストレージ」編
-
9
鹿島建設のDXを阻む「10年前のAWS」 安全性と自由度を両立したモダナイズ
-
10
1200万円のSaaS導入を回避 スギ薬局「運用費10万円」のAIエージェント構築術
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
3
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
4
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
5
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
6
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
7
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
8
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
9
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー