2015年に最も注目されるSDNテクノロジー「SD-WAN」、導入本格化はいつ?:急増する新規参入ベンダー
SD-WANが話題だ。しかし、米TechTargetが最近行った調査では市場の新規参入/既存ベンダーの数とは裏腹に、2015年にSD-WANが実際に導入される件数は限られていることが明らかになった。
SD-WAN(Software Defined WAN)は、コスト削減を実現しワイドエリアネットワーク(WAN)よりも柔軟な接続を提供する。2015年に最も注目されているSDNテクノロジーの1つとなっている。
だが、米TechTargetが最近実施した調査では、今後12カ月以内にSD-WANの導入を予定している企業はわずか10%という結果だった。
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今回の調査の顧問となってもらった米ZK Research創業者で主席アナリストのゼウス・ケラバラ氏は、現状を次のように分析している。「多くの企業はこの新しいテクノロジーについて、まだ懐疑的である。だが、SD-WANはWANの次の進化形で、徐々に業界で受け入れられることが予想される」
TechTargetが1437人を対象に行った購買傾向調査によると、SD-WANの導入を検討する理由として最も一般的だったのがWANのコスト削減だ。導入を検討している企業の54%が、これを理由として挙げている。一方、今後12カ月以内に高価なMPLS(Multi Protocol Label Switching)接続と安価なブロードバンドインターネットリンクを統合してSD-WANの導入を計画している企業はわずか10%だった。SD-WANベンダーは、物理WAN上に仮想ネットワークを重ねて配置して、ハイブリッドネットワークの作成と管理をサポートしている。
SD-WANを使用するメリットは、WANのコストを大幅に削減できることと、支社およびデータセンター間の帯域幅と接続の使用効率を高められることだ。では、なぜSD-WANの導入はあまり進んでいないのだろうか。企業が依然としてブロードバンド接続の品質と信頼性について懸念しており、SD-WAN導入の成功実績が少ない間は移行に踏み切れないというのがケラバラ氏の見解だ。
「この3カ月間、米Silver Peak、米VeloCloud、米CloudGenixのSD-WANについてウェビナーを行った。最も多く寄せられた質問は、「インターネット接続のQoSが維持されるか」「インターネット接続でVoIPを利用できるか」「インターネット接続で動画を再生できるか」というものだった。つまり、SD-WANは信頼されていないに等しい状態だ。SD-WANベンダーは、このような疑問を解消する情報を提供して、ユーザーを納得させる必要がある。SD-WANのパフォーマンス特性が、MPLSと変わらないことを提示しなければならない」とケラバラ氏は語る。
調査で明らかになったのは、コスト削減に加え、帯域幅の追加が多くの企業にとって不可欠であることだ。今後12カ月以内にWANへの投資を計画している企業の25%が、帯域幅の追加を最優先事項として挙げている。だが、問題は帯域幅の不足ではなく帯域幅を適切に使用していないことにあるとケラバラ氏は指摘する。
SD-WANベンダーの課題は、インターネット接続と変わらないパフォーマンスが得られることを顧客に納得させることだ。
ケラバラ氏によると、大手有名ベンダーのうちSD-WANを積極的に売り出しているのは米Cisco Systemsだけだという。だが、少なくとも10社のスタートアップ企業がこの分野で勢いを増している。各ベンダーは模倣を避けるため、SD-WANに対して微妙に異なるアプローチを採用しているが、全体的には各社の目標は同じものだとケラバラ氏はいう。
「WANは非常に非効率である。WANはアクティブ/パッシブモデルに基づいており、全てのSD-WANベンダーはそれに対応しようとしている。各ベンダーは異なる方法で取り組んでいるが、価値提案の根本にあるのは、プライベートIP接続の10%のコストでパフォーマンスが優れたWANを導入することだ」(ケラバラ氏)
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