モバイルデバイスのコンプライアンスに苦心するIT管理者【後編】
「iPhone」「Android」ユーザーの“わがまま”を放置すると法令違反を招く?(1/2 ページ)
モバイルデバイスを活用する企業にとって、コンプライアンスを難しくしている原因とは何か。コンプライアンス維持に役立つツールとは。
前編「『iPhone、AndroidはPCと同じ』と思い込んでいると法に違反してしまう?」では、モバイルデバイスの企業利用が進んだことで、政府や業界固有の法令を順守することが困難になっている現状を説明した。後編では、モバイルデバイスのコンプライアンスを難しくしている背景をさらに深掘りし、コンプライアンスに役立つツールを紹介する。
認識していないものは保護できない
モバイルデバイスの影響が最も大きいコンプライアンス要件の1つは、個人情報の保護だ。個人情報とは、個人の名前や住所、社会保障番号、免許証番号、身体的特性などのデータを指す。スマートフォンやタブレットのアプリケーションでは、このようなデータが多く利用され、処理されている。個人情報を扱う全ての企業は、国や自治体のプライバシー関連法に従い個人情報を保護する義務がある。
例えば、Travelportの従業員は旅行者の個人情報を扱っている。同社は国際情報伝送法と、カード情報を扱う企業向けのセキュリティ国際基準「PCI DSS」の要件にも従う必要がある。PCI DSSの要件は、クレジットカード情報を安全に処理および保存するために企業に課されるものだ。
Travelportは従業員にモバイルデバイスを支給している。「IT部門は、モバイルデバイス管理(MDM)ソフトウェアでユーザーの操作に関するレポートを収集し、従業員が機密顧客情報を適切に処理しているかどうかを確認している」と、米アトランタのトラベルコマースプラットフォームプロバイダーTravelportで、サイバーセキュリティ部門のディレクターを務めるジェフ・ジェンキンスは説明する。
「MDMソフトウェアで、動向や操作を把握できる。例えば、従業員がデバイスで不適切な処理をして、セキュリティホールを生み出していないかどうかを確認することが可能だ。こうした対応は、コンプライアンスの観点で非常に有効である」(ジェンキンス氏)
だが企業が、クレジットカード情報がモバイルデバイスで保存・処理されていることを把握していない場合はどうなるだろうか。モバイルデバイスのコンプライアンスを考えるとき、これが最大の問題になる。セキュリティサービスを提供するPrinciple Logicの独立系セキュリティコンサルタント、ケビン・ビーバー氏によると、多くの企業がこの問題に直面している。
一部のIT部門は、ネットワークに接続されているデバイスを把握しておらず、デバイスが個人所有なのか会社所有なのかも認識していない。そのため、従業員が使用しているアプリケーションや、従業員がアクセスする可能性のある企業データも把握できない。こうした問題は、「会社支給のデバイスに関する規定を定めていなかったり、厳格な私物端末の業務利用(BYOD)の方針を定めていない場合に発生する」とビーバー氏は指摘する。「認識していないものは保護できない」(同氏)
このように認識が不足していると、IT管理者はデバイスやデータに適切なセキュリティ対策を講じて監視することができない。その結果、コンプライアンス違反につながる可能性がある。
専門家がモバイルデバイスに関する最大のコンプライアンス違反だと考えるのは、モバイルデバイスで扱うデータの暗号化、ユーザーパスワードの強制、安全なストレージ/ネットワークの用意などを企業がしていない場合だ。例えば、PCI SSC(PCI Security Standards Council)は、ネットワークをセグメント化してクレジットカードの所有者情報とその他の保存データを個別に管理するように強く推奨する。だが多くの企業は、この勧告を認識していない、もしくはモバイルデータのセグメント化を実装していないのが実情だとビーバー氏は言う。
モバイルデバイスのコンプライアンスはある意味、クライアントPCのコンプライアンスと似ている。例えば、どちらの場合も管理者はユーザーにパスワードを要求して、最新のパッチを適用する必要がある。
また、モバイルデバイスにマルウェア対策が不要だと考えるべきではないとビーバー氏は警告する。これには、マルウェアの被害を受けることが比較的少ないAppleの「iPhone」「iPad」も含まれる。
閲覧が禁止されているWebサイトや有料サービスなどの不正なリンクから、ウイルスに感染する可能性がある。ただし、モバイルデバイスはタッチ画面なので、クリックするリンクの完全なURLを確認できない。そのため、不正なリンクを判別するのが難しいとビーバー氏は話す。「これだけでも、マルウェア対策をモバイルデバイスに導入する十分な理由になる」(同氏)
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