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ユーザーと開発者の双方に自由をもたらすWebアプリの“検討すべき代償”Webアプリ vs. ネイティブアプリ

Webアプリは大量のユーザーを相手にする場合や、私物端末のストレージ容量が少ない従業員には最適だ。だがWebアプリでは、デバイスに備わっている機能をほとんど利用できない。

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 ユーザーの好き嫌いを問わず、モバイル用Webアプリケーション(以下、Webアプリ)は定着するだろう。

 モバイルのネイティブアプリケーションと違って、Webアプリはインターネットブラウザで実行でき、エンドポイント端末には常駐しない。IT部門があらゆる業務プロセスをスマートフォンやタブレット向けのネイティブアプリに転じる「アプリケーション化」の時代にあって、Webアプリが存在すること自体、奇妙ではある。

 だがWebアプリを従業員や顧客にとって役に立つものにする手段は豊富にある。Webアプリはどんなモバイルプラットフォームにも対応でき、ローカルデバイスのストレージ容量の限界を克服する一助になり、IT部門の自由な裁量で導入や更新のスケジュールを管理できる。

ストレージ容量

 大量のユーザーが使うことを想定して設計されたアプリケーションは、モバイル用Webアプリ利用の好例だ。モバイルストレージは価格の高さで悪名高く、多くのユーザーは自分の端末で容量の少ない貴重なストレージの管理に多大な時間を費やしている。この点でWebアプリは助けになる。企業は顧客のモバイル端末のストレージを消費させることなく顧客に簡単にリーチできる。企業の開発者にとって、ユーザーの携帯電話が下位の機種だったり最低限のストレージしか備えていない端末だったりする環境で、このアプローチは特に役に立つ。

多くのプラットフォーム、少ない時間

 アプリケーション開発者が全てのモバイルOSと異なるバージョンに追い付くのは難しい。モバイル開発スタッフを大量に採用している組織もあれば、1回の開発で多数に導入できるツールを利用する組織もある。ゼロコード、あるいはアプリケーションリファクタリング製品を使ったり、1つか2つのプラットフォーム(一般的にはAppleのiOSとGoogle Android)にしか目を向けなかったりすることもある。だがどれほど慎重に計画を練ろうと、ユーザーが多様なOSや機種を持ち込んでくるのは確実だ。

 Webアプリは本質的に中立のプラットフォームであり、プラットフォームが多過ぎる問題に対する優れた解決策になる。完全なレスポンシブデザインのモバイル用Webアプリでは、ユーザーが持つ機種やOSのバージョンを問わず、業務プロセスへのアクセスを実現できる。このアプローチでは開発者がアプリケーションのコードを1回書くだけで済むことから、開発コストも大幅に削減できる。

自由に導入

 モバイル用Webアプリのもう1つの大きな利点は、AppleのApp Storeによる承認といった、リリーススケジュールを左右しかねないサードパーティープロセスにIT部門が依存せずに済む点にある。さらに、Webアプリの更新については、ユーザー側は何の操作も必要としない。これはWebページであり、ユーザーが閲覧したり更新したりすれば、最新バージョンが表示される。もちろん、IT部門は、会社の他部門の担当者との間で何らかのリリーススケジュールについて決めておく必要がある。

 加えて、もし従業員にも顧客にも同じWebアプリを提供するのであれば、社内外での同時配信と更新が可能だ。場合によっては、もし顧客が自分から頻繁にアプリケーションの更新を行わなければ、この2つのバージョンをしばらくの間、著しく違うものにすることもできる。

代償

 Webアプリで行くと決める前に、検討すべき代償もある。まず、ほとんどのWebアプリと同様に、デバイスが独自に用意したハードウェアを使うネイティブ機能は利用できない。 HTML5を使ったWebアプリの中には、端末のカメラでバーコードをスキャンするといったネイティブ機能を組み込んだものもあるが、HTML5はまだそれほど普及していない。調査会社Strategy Analyticsによれば、開発者の39%はWebアプリの開発にHTML5を使っているものの、HTML5を最優先のWebアプリ開発技術と見なしている開発者は2015年の時点で14%にとどまる。

 従って一般的に、例えばデバイスやOSに組み込まれた音声や動画機能を使ったアプリケーションの開発を目指すのであれば、Webアプリを選ぶべきではない。そうした1例として、営業報告用のアプリケーションが挙げられる。営業担当者は外回りが多いので、報告書のひな型に入力するよりも、音声で録音してオフィスに送る方が手っ取り早い。これはネイティブの音声録音アプリケーションでできることであり、Webアプリではほぼ実現できない。

 第2に、Webアプリはインターネットへの常時接続を必要とする。つまりローカルにキャッシュを持たないことから、動く列車の中などWi-Fiや4G接続が不安定な環境ではWebアプリは使いにくい。しかも、こうしたアプリケーションではデータセンターサーバに継続的に情報を送信することから、データ通信量が増える傾向にある。社外での利用を想定したWebアプリを導入する前に、大容量データプランを契約していないモバイルユーザーのことを考慮する必要がある。

 第3に、モバイル用Webアプリは目立たないため非常に忘れられやすい。ネイティブアプリケーションの利点の1つは、アイコンが常にスマートフォンのホーム画面でユーザーに見える場所にあることだ。だがWebアプリの場合、ユーザーがブラウザの特定のWebページ用のアイコンをホーム画面に作成することは可能だが、それができるのはそのモバイル端末のネイティブブラウザ(AndroidではGoogle Chrome、iOSではSafari)に限られる。この利便性の悪さのために、繰り返し利用してもらえないリスクもある。これはアプリケーションの成否を左右する問題であり、IT部門はユーザーに何度も戻って来てもらえるよう、愛着を持たせる方法を確立し、維持する必要がある。

 現在のような「何もかもアプリケーション化」する思考の中では、モバイルWebアプリは極めて簡単に埋もれてしまいやすい。一方で、単純に公式のアプリストアからダウンロードできるものとは違うメリットをユーザーにもたらしてくれる側面もある。モバイルWebアプリは、その種類やユーザーの運用次第では、組織に多大な価値をもたらす可能性を持つことを開発者もユーザーも留意しておくべきだろう。

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