「学校が欲しいタブレット」を形にした“スクールタブレット”の魅力とは?:学校で使うからこそ細部にこだわる
授業を止めず、故障の心配なく利用でき、学習者の表現力も高められるタブレットはないだろうか――。そんな教育現場からの声をもとに生みだされた“スクールタブレット”の全貌を明かす。
授業や学習に適したタブレットがある
近年、教育現場のIT活用に向けた国を挙げての環境整備が進んでいる。2020年までに児童・生徒が1人1台の情報端末を保有することを目標とし、学校でも家庭でもITを活用した学習が可能となる環境の整備を目指している。
これに応じて、佐賀県や東京都荒川区のように、1人1台の情報端末保有を実現している自治体も登場している。まだ上記の目標達成には至っていないが、昨今のIT事情を考えれば、教育現場が急速に変化していくことは疑いようがない。
従来の教育IT活用と言えば、「パソコン教室」「PCルーム」といった特別学習教室を設けて、特定の授業のときのみにデスクトップPCを利用する形態が一般的だった。ノートPCを用意して、ある程度広範囲で利用できる環境を整えている学校もある。
これからの教育IT活用で求められているのは、より活用シーンが広がるタブレットだ。不慣れな学習者であっても使いやすく、持ち運びしやすいタブレットは、さまざまな利用形態が考えられる教育現場には最適である。
しかしながら、世界中のメーカーがタブレットを製造・販売しており、極めて安価なものからハイパフォーマンスな高級機まで、さまざまな製品がある。教育機関に適した端末を選ぶことはなかなか難しい。安価で粗悪な製品を選んだために満足に授業ができなかったり、想定外の利用で故障や事故が発生して悩まされたりするケースも顕在化しており、慎重な選定が求められている。
そうした教育市場でさまざまな実績を積み、ノウハウを蓄積してきたのが富士通だ。同社は、教育現場でのIT活用や情報端末の利用状況、学習者の行動や好みを細かに研究・分析。利用者・教育者の声を吸い上げ、いわば「スクールタブレット」とも呼ぶべき、教育機関に最適なタブレットの開発に注力してきた。そうした長年の研究・開発によって、文教市場向けのスクールタブレットとして初めて製品化したのが「ARROWS Tab Q506/ME」である(写真1)。
富士通 ユビキタスビジネス戦略本部 タブレットプロダクト統括部 第一プロダクト部 マネージャーの待鳥俊樹氏は、「教育の現場を何度も見ていく中で、企業向け製品とは使われ方に違いがあることが分かった。具体的には、教育現場で求められるタブレットには3つのポイントがあると気付いた」と語る。それが以下の3つだ。
- 学校という特殊な環境に適した「堅牢さ」
- 学習、教育において重要な「表現力」
- 管理性を向上し「授業を止めない」こと
ARROWS Tab Q506/MEは、「これら全てにおいて配慮が行き届いた、教育機関に適した情報端末だ」と、待鳥氏は自信を見せる。
※社名と部署名は取材時のものです。
事故や故障が起きにくいボディー
教育現場で実際の活用を担う教職員にとって、気になるのはタブレットの故障であろう。予備端末の用意はもちろん、故障によって授業に支障が出ることも避けたい。
タブレットによって、活用の場所はPCルームという閉じた場所から校内全域に広がり、教室や体育館、校庭、プールなど、さまざまな環境でITが利用されるようになる。例えば、器械体操の様子を撮影して改善点を見つけ出したり、花壇の草花の成長を記録したりといった利用が考えられる。
従来のオフィスやコンシューマー用途とはまったく異なる使われ方をするのが、教育機関のタブレット活用の特徴だ。子どもでも使いやすく、堅牢な製品を選ぶことで、故障による想定外のコストの肥大化を避けることができる。
ARROWS Tab Q506/MEは、子どもでも持ち運びしやすい10.1型の筐体を採用。堅牢でありながら軽量、コンパクトなタブレットとして設計された。校庭やプールでも安心して利用できるような防水・防塵(じん)設計(防水等級IPX5/IPX7/IPX8、防塵等級IP5X)で、耐薬品対応もカスタムメイドで選択可能だ。
学校にある学習机は、想像以上に狭い。授業のときには、タブレットだけでなく教科書やノート、ペンケースも机の上に置く必要がある。「ノートへ筆記するためにタブレットを端に寄せて、机から落としてしまうこともよくあります。そこでQ506は、落としても壊れにくいだけでなく、そもそも落としにくい形状に仕上げました」と待鳥氏は説明する(写真2)。
コンシューマー向けデバイスの場合、見栄えをよくするためにフレームを狭くした「狭額縁」を採用する動きが広がりつつある。しかしながら、ボディー側面からディスプレイまでの距離が短くなるので、落下時の衝撃が液晶画面にダイレクトに伝わり、破損を招きやすくする可能性が否定できない。
ARROWS Tab Q506/MEは、フレームを厚めにし、かつボディーの四隅を衝撃に強い内部構造にした(写真3)。日本工業規格(JIS規格)で定められている学習机の最大高さである76センチからの落下試験を行い、堅牢性を高めている。振動試験や圧迫試験もクリアして、通学の際の持ち運びにも配慮した作りになっている。
さらにARROWS Tab Q506/MEは、従来機である「ARROWS Tab Q555」から画面サイズを変えずに縦幅を約18ミリ縮めて、占有面積を抑えた。また重心を筐体の下寄りに配置しており、机の奥側に寄せても落ちにくく、キーボードに接続しても省スペースで倒れにくくする工夫を凝らした。キーボードの底面にはゴム足が付けられており滑りにくく、表面にもストッパーがあるので、タブレット本体を重ねて使うことが可能だ(写真4)。
この他にも、両手でタブレットを持ったときに、電源ケーブルやUSBケーブル、各種ハードウェアボタンなどが手に引っ掛からないレイアウトとし、キーボード入力がしやすいステップ型キートップ、インタビュー授業などに適したマイク配置など、子どもたちが安心して気持ちよく学習できるように、徹底した研究の成果と細やかな配慮が生きているのだ。
まるでノートと鉛筆 新しいのに慣れた使い心地
授業ではタブレットと電子黒板とを連係させ、教員がタブレットに記入した回答を表示して解説したり、学習者同士でディスカッションしてもらったりするケースもある。学習者にタブレットを用いて学習内容を発表してもらったり、画面に直接筆記してもらったりすることもあるだろう。
こうした表現力が問われるシーンで活用しやすくするために富士通がこだわったのは、まず入力インタフェースであるスタイラスペンだ。従来のタブレットの場合、やはり液晶ディスプレイやガラス面への“入力”という感覚が抜けず、手書きしている感触を得ることはなかなか難しかった。
「私たちが目指したのは、使い慣れたノートでの筆記に近づけることでした」と、待鳥氏は強調する。まず工夫したのは、ペン先とディスプレイの摩擦抵抗であり、書き味を紙と鉛筆に近づけた(写真5)。また、ソフトウェアの性能を向上させ、高速な筆記でもペン操作と描画の時間差をできるだけ抑え、漢字テストや100マス計算といった素早い筆記が求められる課題であっても、学習者は従来と変わらない感覚でこなすことができるようになっている。さらに「センサー部を工夫してペン先と実際の入力ポイントとの視差を可能な限り減らし、鉛筆でノートに書いている感覚で使えるようにした」と待鳥氏は説明する。
特に書き味は、言葉にすることが難しいほどに“鉛筆感”を再現している。これはARROWS Tab Q506/MEに直接触れる機会を設けて、ぜひ試していただきたいところである。他にも細かな工夫が随所に設けられており、子どもが気持ちよくペンを利用し、困ることがないような設計になっている。さらに形状を六角形にし、実際の鉛筆に近づけた「鉛筆ペン」も別売で用意している。
もう1つのポイントは、教育機関のタブレット活用の主役ともいえるカメラだ。授業でカメラを利用する際には、光源を工夫したり、フラッシュを焚いたりすることは難しい。例えばデジタルカメラを使えば、確かに総じて見た目のよい画像が撮れる。ただし撮影の仕方や設定を工夫しないと、例えば体育の指導時に運動の様子を撮影しても、ブレてしまうことが少なくない。そうなると、指導前後の動作の違いを見比べたりすることは困難だ。
ARROWS Tab Q506/MEであれば、比較的暗い体育館や校舎の陰であっても、運動やダンスの写真をブレずに撮ることができる(写真6)。いかに美麗に撮影するかに重点を置いたデジカメとは異なり、「記録する」ことに主眼を置いたソフトウェアチューニングを施しているからだ。さらに画像ツールを活用すれば、指導の前後の変化を見比べたり、今後の指導に生かしたりすることも容易である。
運用しやすくトラブルを起こさない工夫
学校にとって、タブレットは従来にない教育ツールであり、運用や管理に不安を覚える担当者も少なくないだろう。特に専任のIT担当者を設置できない場合には、教職員が自ら管理しなければならない。
1クラス30〜40人の学習者が一斉にタブレットを利用し、ネットワークに接続して授業をする環境は、企業のオフィス環境とは全く異なる状況といっていい。授業中に無線LAN接続ができない、キーボードが動かないといったトラブルは大いに考えられる。共用端末の管理不備で、充電が不十分で使えないといったケースもあるだろう。「教育のツールとして、タブレットのトラブルは、できるだけ避けなければなりません。使い勝手がよいだけでなく、授業を止めないことも、私たちに課せられた使命でした」と待鳥氏は振り返る。
ARROWS Tab Q506/MEには、標準で「端末診断ツール」が搭載されており、トラブルが発生したときには状況がポップアップされる。例えば無線LANのトラブルであれば、ワンクリックで設定をリセットするといった対処を可能にして、学習者自身がトラブルを解決できるようにした。また、より詳細な情報が得られる教員用の管理画面も用意して、現場の教員が問題を素早く認識して解決できるようにした(画面1)。こうした工夫により、授業の停止を最小限に留めることができるわけだ。
共用端末として利用している場合には、授業が終わると生徒自身が充電機能付きのラックにタブレットを返却する運用方法を取る教育機関は少なくない。このとき、電源ケーブルの接続が不適切で、正しく充電できないといったトラブルもよくあることだ。そこでARROWS Tab Q506/MEは、側面にLED(発光ダイオード)ライトを配置して、教職員や管理担当の学習者が、一目で状況を把握できるように工夫している。
「より軽く持ち運びしやすい可搬性、さらに過酷な環境でも安心して利用できる堅牢性、小学校の1年生から高等学校の3年生まで幅広く満足できる表現力を一層高めるために、今後も研究と開発を継続していきます」と待鳥氏は強調する。「読み、書き、話し、聞くという学習に必要な要素をどのように組み込むべきか、社内の教育関連部門とも連携しながら、よりよい経験を提供していきたいと考えています」
富士通がこうして開発・蓄積してきた技術やノウハウは、ビジネスをはじめ他の用途にも応用できる(写真7)。実際、スクールタブレットの堅牢性や表現力が評価され、製造業や流通業での採用・検討が増えているという。次世代の教育ITは、経験に裏打ちされた富士通のテクノロジーがけん引していくことだろう。
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