IPアドレスの「クラス」って何? IPv4の基礎知識:IPネットワーク再入門【第2回】
IPアドレスには「クラス」という概念がある。これはIPアドレスの割り振りなど基本的な仕組みを知っておくために欠かせない。なぜクラスは必要なのか。
ネットワークの住所に当たる「IPアドレス」は、ネットワークを識別するための「ネットワーク部」と、ネットワーク内のどのクライアントかを識別するための「ホスト部」に分かれている。
IP(インターネットプロトコル)のバージョン「IPv4」の場合、IPアドレスのネットワーク部とホスト部は固定されていない。IPアドレスには異なるサイズのネットワークを効率的に管理する分類方法として「クラス」という考え方があり、クラスによってネットワーク部とホスト部の位置も変わるからだ。IPアドレスのクラスとはどのようなものなのか。詳しく見ていこう。
IPアドレスの「クラス」とは何か
併せて読みたいお薦め記事
連載:IPネットワーク再入門
いまさら聞けないネットワークの基礎
管理するネットワークの規模に応じてIPアドレスを割り当てることで、効率的にネットワークを管理する――この考え方を基にして生まれたのが、IPアドレスにおけるクラスだ。クラス分けによって大規模なネットワークには多くのホストを収容できるクラスA、中規模のネットワークにはクラスB、小規模なネットワークにはクラスCと割り当てる。
IPアドレスには2種類ある。インターネットに接続する際に割り当てられる「グローバルIPアドレス」と、特定のネットワーク内で割り当てられる「プライベートIPアドレス」だ。IPv4のアドレス数には上限があり、約43億個しか用意されていない。企業や家庭内のLANといったプライベートネットワークでプライベートIPアドレスを使えば、約43億個とは別に幾つかのIPアドレスを用意できる。
プライベートIPアドレスの範囲は世界共通でクラスAからCに分けられており、その範囲は以下の通りとなる(表1)。
■表1 プライベートIPアドレスの範囲
クラス | 範囲 | デフォルトのサブネットマスク |
---|---|---|
クラスA | 10.0.0.0 | 255.0.0.0 |
クラスB | 172.16.0.0 | 255.255.0.0 |
クラスC | 192.168.0.0 | 255.255.255.0 |
IPアドレスの割り当て方法の一つである「クラスフルアドレス」では、クラスがAからEまで5つに分かれる。範囲が広い順にAからCが割り振られている点は同じだ(表2)。
■表2 クラスフルアドレスの範囲
クラス | 最初のオクテット(8bit) | ホスト数 | 説明 |
---|---|---|---|
クラスA | 1〜126 | 約1670万個 | 大規模ネットワーク用 |
クラスB | 128〜191 | 6万5536個 | 中規模ネットワーク用 |
クラスC | 192〜223 | 254個 | 小規模ネットワーク用 |
クラスD | 224〜239 | なし | マルチキャスト用 |
クラスE | 240〜254 | なし | 実験用 |
クラスDのアドレスは、単一のデバイスから複数のデバイスにデータを一斉送信する「マルチキャスト」の通信に使われる。ホストが何千ものデータストリームを他のデバイスに送信できるようにする。
クラスEも標準的なIPv4ネットワーキングでは使用されない。その代わり、IPアドレスの研究者が実験や開発目的でクラスEアドレスを使用している。
クラスフルアドレスはアドレスを無駄にすることがある。例えば、クラスBのネットワークは6万5000個のホスト部を提供し、クラスCのネットワークは254個のホスト部しか提供しない。ネットワークに2000台のデバイスがあり、管理者がクラスBを選択した場合、約6万3000個のIPアドレスが無駄になる可能性がある。
利用可能なアドレスをより効率的に使用するために、必要に応じてネットワーク部を定義できる「クラスレスアドレス」という仕組みがある。サブネットマスク(IPアドレスのうち、ネットワークアドレスとホストアドレスを識別する数値)を利用して、ネットワーク部とホスト部の境界を必要な台数に応じて設定できる。
クラスレスアドレスでは表記方法に「CIDR」(Classless Inter-Domain Routing)表記を採用している。CIDR表記では、IPアドレスの後にスラッシュ(/)とサブネットマスクのbit数を記述する。サブネットマスクのbit数はネットワーク部の長さだ。以下に例を示す。
- IPアドレス:172.16.0.0
- サブネットマスク:255.255.0.0
- CIDRの表記方法:172.16.0.0/16
サブネットマスクとそれに対応するCIDR表記、サブネットごとのIPアドレス数の例は次のようになっている。
■表 サブネットマスクとCIDR、サブネットごとのIPアドレス数
CIDR表記 | サブネットマスク | サブネットごとの合計IPアドレス数 |
---|---|---|
/21 | 255.255.248.0 | 2048 |
/22 | 255.255.252.0 | 1024 |
/23 | 255.255.254.0 | 512 |
次回はサブネットとサブネットマスクの関係を解説する。
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.