セキュリティ対策は1回で完結するようなものではない
「ベンチャー気分のIoTは“炎上”する」 専門家が警告するIoTの落とし穴
「IoT(モノのインターネット)のデバイスには早い段階でセキュリティを組み込むべきである。さもないと大変なことになる」――これが「RSA Conference 2016」からのメッセージだ。
市場調査会社のGartnerによると、2016年には推定で64億台のインターネットに接続型デバイスが使用され、2020年にはその数が210億台と大幅に増加する見込みだ。インターネット接続型デバイスを製造する企業が情報セキュリティ対策を全面的に見直し、それを早期に開発プロセスに織り込まなければ、IoT(モノのインターネット)は“即死する”だろう。
この警告を発したのは、サンフランシスコで開催された「RSA Conference 2016」においてIoTに関するパネルディスカッションに参加した次のセキュリティ専門家たちだ。
- Hitachi Data Systemsでセキュリティとプライバシーを担当するエリック・ヒバード最高技術責任者(CTO)
- 米連邦取引委員会(FTC)のプライバシー/ID保護部門のニーサン・サナッパ上席弁護士
- 法律事務所Drinker Biddle & Reathで情報ガバナンス/電子情報開示部門の責任者を務めるジェイ・ブラッズ氏
「セキュリティという観点から見て恐ろしいのは、規模の巨大さだ。われわれセキュリティ専門家は既に、既存のIoTデバイスに対処するだけでも苦労している。2020年にはこれらのデバイスが爆発的に増加することを考えれば、少し気がめいる」とヒバード氏は語った。
同氏によると、問題の一端は、多くのIoTメーカーがコンピュータとネットワーキングの分野への新規参入者で、この分野での経験がないことにあるという。加えて、IoTセキュリティ標準がまだ整っていないこともあって、セキュリティが中途半端な状態になっている。
「標準化が進み始めるのは3、4年先になると予想している。法曹界は早い時期にこの動きに関与してくるだろう。セキュリティが欠落した製品やサービスを開発しているメーカーやサービスプロバイダーにとって、これは大きな警鐘になりそうだ」とヒバード氏は語る。
ブラッズ氏も「多くのIoTベンダーがベンチャー企業の気分でビジネスを実施している。すなわち、手っ取り早く売れてお金になる安直な製品を投入しているのだ」と指摘する。こうしたやり方で十分なセキュリティ機能が組み込まれるとは思えないという。「これは製品をリリースして、後から修正するという開発方法の問題だ」と同氏は語る。
FTCのサナッパ氏も同意見だ。同氏によると、一般消費者向けIoT製品の分野は新しい分野であり、IoTセキュリティの欠陥に関するFTCのこれまでの指導は、ネットワーク、ソフトウェアおよびモバイル機器のセキュリティをめぐる企業の失敗を教訓としたものだという。
「セキュリティのアーキテクチャや設計の審査を怠る、侵入テストをしない、外部の研究者からの脆弱(ぜいじゃく)性報告に対処しない、といった共通の問題が見られる」とサナッパ氏は語る。
サナッパ氏によると、購入判断をするのに必要な情報を消費者に提供しない企業もあれば、セキュリティの欠陥についてFTCから警告を受けても、製品が消費者の手に渡る前に必要な措置を講じるのを拒む企業もあるという。
同氏は、PCハードウェアメーカーのASUSのルーターの欠陥をめぐるFTCと同社の最近の和解についても触れた。問題となったルーターにはよく知られた脆弱性が存在し、同社はこの問題について警告を受けたにもかかわらず、製品を販売する前にセキュリティを改善しないばかりか、不正なアクセスやウイルスからユーザーを保護するセキュリティ機能を搭載した製品だとして販売したという。
IoTセキュリティに関するガイダンス
サナッパ氏によると、IoTセキュリティを実現するための手順の第1段階は、FTCのこれまでの指導および事例を参考にして、何をすべきでないか、そして合理的な情報セキュリティプログラムのベストプラクティスとは何かを理解することだという。
1つの基本ルールとして、IoTセキュリティは一度で済ませるものではない。
「各社のデバイスのアップグレードパスに関する具体的な方針について企業と話し合った。われわれは企業が標準的な製品寿命が終わるまでユーザーをサポートするか、あるいは少なくとも必要な情報をユーザーに提供するよう求めている」と同氏は話す。
ヒバード氏が勤務する企業は、全世界でスマートシティー構想に取り組んでいる。「セキュリティの不備が自社および業界に与えるダメージを理解し、早期にIoTのセキュリティ問題に対処することが重要だ」と同氏は指摘する。この業界の多くの企業がセキュリティを競争優位の要素と見なしていないケースを同氏は直接見聞きしているという。
「IoTデバイスの購入、あるいはアジア太平洋地域への生産委託を検討している企業は、相手がセキュリティを重視するという前提に立ってはいけない。後からセキュリティを追加できないので、必要であれば最初に指示しなくてはならない」とヒバード氏は話す。
ブラッズ氏は「IoTメーカー各社は実施したセキュリティ対策を記録する必要もある」と述べた。
「やった仕事を見せなければならない」と同氏は述べる。「実施した作業はきちんと記録しておく必要がある。後で証拠になるからだ。FTCに対して『記録が残っていない』などと言うのは恥ずかしいことだ」
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