スマートグリッドテクノロジーと予測分析が電力会社を変える:最大1300億ドルもの価値を創出
公益事業会社は、以前にも増して高度な分析手法を業務管理に取り入れるようになっている。本稿では、あるプロバイダーが大成功を収めた方法を紹介する。
電力会社は、電気が消えないようにするために発電タービンを回し続けなければならない。アリゾナ州に本拠地を置くある公益事業会社は、高度な分析手法を利用することで、同地域における業績を改善している。
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スマートグリッド
Salt River Project(SRP)はフェニックス都市圏に電気を供給し、アリゾナ州中心部の大部分に水を供給している米国内屈指の公共事業会社だ。アリゾナ州は米国でもとりわけ気温が高く、乾燥した地域であるため、同社のインフラに対する要求レベルは高い。
稼働時間を改善するために、SRPのエンジニアはスマートグリッドテクノロジーを利用することにした。このテクノロジーは、発電機から送られてくるセンサーデータのストリーミングを監視する。エンジニアはタービンが動いていない時間帯を把握できるため、作業員を派遣して予防策的なメンテナンスを実施できる。また、このデータを長期間にわたって分析して、機械のメンテナンスが必要になりそうなタイミングと機械が使用中になる可能性の高いタイミングの予測も行っている。
「以前はそうとは知らなかったが、タービンを点検できる日はたくさんあった」とSRPで上級ソフトウェア開発者を務めるスティーブ・ぺトルソ氏は話す。
公益事業業界では、この種の取り組みがますます一般的に行われるようになっている。McKinsey & Companyは、スマートグリッドテクノロジーによって2019年までに米国で最大1300億ドルもの価値が生み出されると試算している。この数字は、一般消費者による電力使用量が減少することと、停電に起因する経済の混乱が減ることを主な根拠としている。公益事業会社は、発電設備、送電線、電力消費地点にスマートメーターというセンサーを配置している。こうした全てのスマートメーターによって、分析に十分使える大量のデータが生み出される。
SRPのチームの取り組みは、同社の機械のデータを監視して予防策的なメンテナンスを行うことにとどまらない。予測分析を応用して電力の需要と供給に関する予測を立て、過剰な発電を行うことなく電力を適切に利用できるようにしている。
このために、SRPのチームはニューラルネットワークによる予測モデルを構築した。このモデルでは、過去の気象データを以前の需要レベルと比較する。それから、気象予報、消費者による最近のエネルギーの使用パターン、発電機のデータを分析し、特定の時点においてシステムによる発電量を増やすべきか減らすべきかを判断する。
「データポイントを増やせば、それだけ電力需要予測も改善されるだろう」とSRFでアナリストを務めるコービー・ガーディナー氏は語る。
SRPがインフラサービスから取得するデータは全てOSIsoftのツールを経由している。このツールは、機械のセンサーからストリーミングデータを収集し、分析や視覚化用のアプリケーションで利用できるようにする。このケースで、SRPはSAS Instituteの「SAS Analytics」を使用して予測のモデル化を行っている。
この2つのツールを併用することで、アナリストは毎分実行できる小さなバッチ処理のジョブとしてデータを取り出せる。そのため、SRPチームは最新の情報を取得でき、この情報に基づいて発電量の増減を決めることができる。
SRPは、スマートグリッドテクノロジーで収集する新しいデータを活用して、送電規制の管理にも利用することを計画中だ。連邦法の元、発電機は送電に関する取り決めで規定されている以上の電力を給電できない。連邦規制機関は、1時間当たりの平均送電量を監視することでこの規制を施行している。分刻みのデータがあれば、SRPによる電力供給が平均を確実に上回らないようにできる。
「スマートグリッドを採用する前は、1時間ごとのデータ確認に翻弄されていたようなものだった。だが、この作業はあまり役に立っていなかった」とガーディナー氏は語る。
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