検索
特集/連載

AWSだけではないIaaSプロバイダー選び、使用アプリで変わる“最適解”インフラだけでなくアプリのニーズで(1/2 ページ)

IaaSプロバイダーがポートフォリオを拡大してより高いレベルのサービスを提供するようになるにつれ、インフラだけでなく、アプリのニーズもベンダーを選ぶ基準になりつつある。

Share
Tweet
LINE
Hatena

関連キーワード

Amazon Web Services | IaaS | Microsoft Azure


画像
Amazon Web Services(AWS)の売上高は前年比58%増の28億8600万ドル、営業利益は135%増(2倍以上)の7億1800万ドル(出典:Amazon)《クリックで拡大》

 フットワークが悪い状況を何年も経た結果、ほとんどのIT部門はクラウドインフラに抵抗することは無益だという結論に至った。業界大手のAmazon Web Services(Amazon)が提供する「Amazon Web Services」(AWS)やMicrosoftの「Microsoft Azure」の月間売り上げは10億ドルに届こうとしている。さらに、Capital One、GE、Netflixといった大企業も、ビジネスに関するITの運用をIaaS(Infrastructure as a Service)に移行している。

 今、大半のIT部門にとって問題となるのは、クラウドサービスを使用するかどうかではなく、どのサービスを、いつ、どこで使用するかだ。クラウドコンピューティングを使用するタイミングを理解するのは、企業戦略とITクラウドの成熟に関する重要事項となっている。しかし、どこでどのサービスを使用するか(移行するアプリ一式と導入するIaaSプロバイダーの決定)は、数え切れない要因に左右される。具体的には、レガシーインフラ、プライベートクラウドとハイブリッドクラウドの計画、アプリのアーキテクチャ、サービスの要件、既存のベンダーとの関係、規制の要件、グローバルリーチや配信の要件などがある。

 適切な判断を下すには、IaaSプロバイダーの候補の能力、メリットおよびデメリットについて詳しく調べる必要がある。それから、既存のアプリのポートフォリオと導入を計画しているアプリのポートフォリオを照らし合わせて、IaaSプロバイダーを評価するのが良いだろう。

成長するIaaS市場

 クラウドインフラの世界市場は今も断片化した状態が続いている。だが、一握りのベンダーのサービスの収益が、クラウドインフラ市場の総収益の半分強を占めている。具体的にはAWSやGoogleの「Google Cloud」、IBMの「IBM SoftLayer」、Microsoft Azure、Salesforce.comの「Salesforce」だ。Synergy Researchがまとめた統計によると、AWSが単独でIaaS市場の3分の1を占めているが、AzureとGoogle Cloudはどちらも毎年3桁の成長を遂げている。

 AWS、Azure、Google Cloudは、パブリックIaaSプロバイダーの選択肢として最も一般的なものである。その一方で、IBMは、オープンソースのIaaS、IBMのPaaS(Platform as a Service)、ホスト型のベアメタルサーバという面白い組み合わせを提供している。IBMはIaaSとハイブリッドクラウドに「OpenStack」を使っているため、DreamHost、Internap、Rackspaceと合わせて、より広範なOpenStackパブリッククラウドエコシステムにまとめられる場合がある。ただし、IBMには、前述の選択肢よりも豊富なポートフォリオがある。

 VMwareは、同社の「vCloud Air」とサービスパートナーのネットワークの点から注目に値するIaaSプロバイダーだ。同社は、ビジネスデータセンターに好まれる仮想化プラットフォームとして確固たる地位を築いており、VMwareのvCloudはパブリッククラウドサービスの重要な区分を示している。それはハイブリッド展開に対するサポートの度合いだ。どのベンダーも社内インフラとパブリックのリソースを安全に接続する方法を提供しているが、AWSとGoogleは共有サービスとしてのみ利用できるという面が注目されている。それとは対照的に、OpenStackとvCloudは社内のIT部門が展開して管理できるサービスである。

 Salesforceは幾つかの洗練されたアプリ開発サービスを提供している。だが、Salesforceはアプリケーションプラットフォーム(PaaS)ではなく、パッケージアプリケーション(SaaS)として主に利用されている。その結果、Salesforceは他の4社のクラウドリーダーとは性質が異なる。

 かつて、インフラサービスやプラットフォームサービスは、明確に定義された個別のサービスパラダイムだと考えられていた。時間の経過とともに、従来のIaaSベンダーは高度な機能を数多くポートフォリオに追加してきた。例えば、機械学習、ビジネスインテリジェンス(BI)、ストリーミングデータの採集、モバイルアプリのバックエンド、サーバレスのイベントドリブンなマイクロサービスなどだ。その結果、AWSやAzureといった製品と従来型の専用PaaS製品との間で、見過ごせないほど機能が重複する状況が生じている。現在は複数の企業が管理するプロジェクトである「Cloud Foundry」やSalesforceの「Force.com」、Herokuの「Heroku」、Red Hatの「OpenShift」などが後者に該当する。

 AWSとAzureはインフラサービスとプラットフォームサービスの間に明確な線引きをしていないが、GoogleとIBMは明確に識別してブランド化されたPaaSスタックで線引きを行っている。IaaSとPaaSの融合によって、インフラのみに関わる選択ではなくなるため、IT部門だけでクラウドプロバイダーの選定を行えなくなっているのが実情だ。アプリケーションサービスが多様かつ高度になり、コンテナやイベントドリブンなコンピューティングサービスといった展開の代替手段も提供されるようになっている。このような状況では、クラウドIaaSプロバイダーの評価において、開発者が重要で中心的な役割を担うことも増えている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る