電子カルテの入力ミスが3割減、AIアシスタントは医師をどう支えているのか:音声認識で医師のオーダーを確認
医師は多くの業務に追われ、必要なオーダーを出し忘れることがある。こうした状況を改善すべく、人工知能(AI)を導入し、医療ミスの回避に役立てている米国の長期急性期病院の事例を紹介する。
ランドマーク病院はジョージア州、フロリダ州、ミズーリ州など、全米7カ所で長期急性期病床(注1)病院を運営する医療機関だ。同病院にかかる患者の多くは重症度が高い。
※注1:LCAT(Long Term Acute Care)。重篤で複数の合併症を持ち、長期入院が必要な患者に専門性の高い急性期ケアを提供する病床のこと。
「患者の大半はメディケアの患者だ」とランドマーク病院の院長(CMO:Chief Medical Officer)を務めるアンソニー・サーゲル氏は語る。メディケアとは、高齢者と体が不自由な人を対象とした米国の公的医療保険制度だ。「重症のメディケア患者が、基本的には他の大規模な集中治療室(ICU)などから転院してくる。人工呼吸器を付けているような、極めて重い病状の患者が多い」とサーゲル氏は話す。
重篤な患者が多いとなれば、医師が出さなければならない投薬指示や検査指示はかなりの数に上る。医師にとって、こうした煩雑な業務をこなすのは容易なことではない。ときには、必要な指示を出し忘れることもある。こうした状況を改善すべく、ランドマーク病院は人工知能(AI)を搭載するバーチャルアシスタントを導入した。
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「何年間も医療に携わる中で気付いた問題がある。カルテに記入しているうちに、指示を出し忘れる医師が少なくないということだ。そのせいで多くの医療ミスが起きている」とサーゲル氏は語る。とりわけランドマーク病院が診ているような重篤患者の場合、医師はさまざまな医療措置を講じなければならず、この問題は特に重要となる。
「重症のメディケア患者の中には、20種類以上の薬を服用している人もいて、入院時に投薬指示を出さなければならない。複数の症状を抱えている患者には、検査指示を10種類ほど出さなければならない場合もある。気管チューブを装着した患者であれば、ひとまずポータブル胸部X線撮影をし、翌朝にフォローアップ検査が必要という場合もある」とサーゲル氏は語る。
ランドマーク病院は現在、インテリジェントなバーチャルアシスタント「Florence」の助けを借りて、投薬指示や検査指示の出し忘れを防ぐための取り組みを進めている。Florenceは音声認識や画像診断ソフトウェアを手掛けるベンダーNuance Communicationsが提供する、クラウドベースのアプリケーションだ。実際に、成果は上がっているという。Florenceを導入してから1年半で、ランドマーク病院は医師によるオーダーミスを約30%減らすことができている。
音声認識が鍵に
Nuance Communicationsの医療ソリューションマーケティング担当上級ディレクター、ジョン・ドライヤー氏によれば、FlorenceはAIと自然言語処理を使って、医師によるオーダーを追跡し、遂行を見届けることができるという。処方内容が正しいかどうかも確認する。
さらにFlorenceはNuance Communicationsの音声認識技術「Dragon Medical」を搭載し、医師がマイクに話しかければ、その内容が電子カルテに直接入力されるようになっている。
「Dragon Medicalはユーザーの音声をテキストに変換し、電子カルテへの入力を容易にするという重要な役割を果たす。Florenceはさまざまな利用場面に活用できる」とドライヤー氏は語る。
ランドマーク病院の場合は、Florenceを医師によるオーダーエントリーに役立てている。
AIアシスタントでオーダーエントリーのミスを軽減
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