検索
特集/連載

未来型「IoT導入成功事例」の作り方とは自社ビジネスに「革命」を起こす準備 できていますか(1/3 ページ)

Rockwell Automationは、モノのインターネット(IoT)導入に成功した1社だ。同社のIoT環境は、構築に数十年を要したという。企業がIoT導入を通して成長を遂げる鍵と、現状のIoTが示すビジネス変革の可能性を探る。

Share
Tweet
LINE
Hatena

画像
企業は、IoT導入に生産ラインなどの「効率化」以上の目標を求める段階に入った

 Rockwell Automation(以下「Rockwell」)は、製造業系の顧客向けに30万種類以上の装置や部品を提供する。

 同社は、80カ国以上の企業に産業オートメーション用の各種装置や情報機器を提供し、製品のカスタマイズも請け負う。同社の事業内容を考えれば、ある製品の発注から納品に2カ月を要しても、誰も驚きはしないだろう。ところが、Rockwellは、ここ数年で製品の納期を8週間から8日間に短縮した。

 同社の情報ソリューション部門でグローバルマーケット開発マネジャーを務めるポーラ・プエス氏は、納期短縮について、あらゆる機器がネットワークと通してつながるIoT(モノのインターネット)導入の功績を指摘する。

「当社のサプライチェーン全体が変化を遂げ、製造現場でリードタイムを短縮できた点は、当社の顧客企業が、資材をその分早く調達できる点に直結する。私たちは、年間で前年比5%の生産性向上を見込んでいる」と、プエス氏は語る。納期短縮は、同社の事業強化にも貢献しているという。

 実に115年の歴史を持つRockwellの社内ネットワークは、製造現場に設置された各デバイスから、企業全体に広がるシステムに接続する。同社は、数十年をかけて少しずつ社内の接続環境を拡大していった。こうした試みはにより、同社が必要な情報を適切なタイミングで社内ネットワークを通して入手し、データ分析を通して得た知見を利用して、業務プロセスを改善することが可能になった。同氏は、この点が事業全体の改善にもつながったと語る。

IoT投資が抱える課題とは

 Rockwellの例は、IoTの成功事例の1つといえるだろう。

 世界を変えるテクノロジーの1つとして「モノのインターネット」(IoT)を挙げる専門家やビジネスリーダーは、最近ますます増えつつある。大企業向けアプリケーションを開発、販売するIFSは、「デジタル変革(トランスフォーメーション)」をテーマに、16カ国の企業内意思決定者750人を対象にした調査を実施した。同調査によれば、IoTは、ERPシステム、ビッグデータおよびアナリティクスと並び、企業における資金調達の優先順位上位3分野の1つに挙げられている。多くの企業が、デジタル変革を後押しし、企業の競争力を高めるテクノロジーとして、IoTの重要性を認めていることが明らかになった。

 ただし、デジタル変革を目指す企業が多額のテクノロジー投資を続けている一方で、今日のIoT導入事例の大半は、抜本的なデジタル変革を成し遂げたとはいえない。むしろ、多くの企業は、I社内の業務プロセスをIoT導入によって改善し、徐々に利益を増やしている。IFSの調査へ回答を寄せた北米企業にとって、IoT導入の“推進力”は、社内の業務プロセスに存在する“非効率な部分”を特定することだった。同様の条件を抱えてIoTに投資した企業のうち37%が、導入成果を挙げたという。

IoTアプリケーションの「複雑な真実」

 産業用モノのインターネット(IIoT)に特化したHarbor Researchでコンサルタント兼プロジェクトマネジャーを務めるハリー・パスカレラ氏は、「当社では、IoTを『スマートシステム』と呼ぶ。私たちは、個々のコネクテッドデバイスは、スマートシステムの要ではないと考えている」と話す。

 パスカレラ氏は、スマートシステムは大規模なインターネットに接続する必要はないと強調する。非公開ネットワークを使用しても、組織は作業環境にセンサーを配備したことのメリットを享受できるという。

 「真の意味でデバイスが人間、プロセスとつながり、そしてデバイス同士で相互につながった環境だ。この環境が発揮する知能と処理能力が重要だ」と、同氏は話す。

 ただし、パスカレラ氏が語るレベルのテクノロジーを実装できた企業は、現時点でほとんどないという。「今日運用されている(企業内作業)環境の大多数は、コネクテッドデバイスを部分的に導入している程度だ」と、同氏は語る。

 例えば、ネットワークに接続されたサーモスタットは、確かに“コネクテッドデバイス”と呼べるけれども、必ずしもスマートシステムに貢献しているとは限らない。そうした機器が、単純なアプリケーションとしてしか機能していない場合もあり得る。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る