2018年の医療ITトレンド4選、ブロックチェーンや人工知能はいよいよ実用段階へ:注目すべき米国の医療ITトレンドを専門家が予測
2018年、米国の医療機関はブロックチェーンの応用と人工知能(AI)の活用拡大に備えることになるだろう。電子医療記録(EHR)ベンダーによるデータ分析技術の発展も拡大するかもしれない。
業界専門家は、2018年に注目すべき医療ITのトレンドを予測するのに忙しい。TechTargetのチームも、2018年に医療業界がどのようなトレンドに注意を払うべきかを予測してみた。
ブロックチェーンは2017年に理論から実践に移るだろうと、医療IT分野のある専門家が推測した。それ以降、2018年の医療ITトレンドのリストにブロックチェーンが返り咲いている。TechTargetでニュース記事と特集記事を担当するショーン・サトナーは「2018年に初めて実際の医療現場でブロックチェーンのテストが開始されるのではないか」という仮説を立てている。
「医療機関のデータを分析する技術に対して、電子医療記録(EHR)ベンダーがこれまで以上に関わるようになるだろう」と推測するのは、TechTargetで論説員を務めるスコット・ウォラスクだ。
医療機関での診断行為や画像診断に人工知能(AI)の活用が始まっている。TechTargetのニュース記者、クリスティン・リーは「2018年もAIが進化を続ける」と予測している。
2018年に注目すべき医療ITトレンドの予測を締めくくるのが、デジタルヘルスだ。デジタルヘルスは医療機関にも患者にも急速に受け入れられつつある。
本稿では、TechTargetの論説員やニュース記者の意見を紹介しながら、こうした予測をさらに詳しく解説する。
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期待から実用に移るブロックチェーン――ショーン・サトナー(ニュース記事と特集記事の担当記者)
ブロックチェーンは単なる一時的な流行や熱狂にはとどまらない。だが、医療用IT製品や臨床現場には数多くの厳しい要件があるため、ブロックチェーン自体の価値や、ブロックチェーンを医療に取り入れる価値はいまだ証明されていない。
ブロックチェーンが、2018年の医療ITにおいて最も注目されるトレンドの1つであることは間違いない。
だが、2018年は特に、この急速に進化するテクノロジーを初めて大規模に取り入れるためのテストが大々的に行われる年になるだろう。医療用データの保護ややりとりを容易にするために、医療機関がブロックチェーンを採用するのかどうか、採用するとしたらどのように利用するのかを医療ITコミュニティーの人々が注視している。
2018年には、大手ベンダー、多くの新興企業、独立系ソフトウェア企業が医療用IT製品におけるブロックチェーンの完全な実装に向けて急速に動きだすことに疑いの余地はない。この動きは、ブロックチェーンがビットコインや主流商業に進出した約2年前には想像もできなかったほどの速さになるだろう。
IBM、Intel、Google、Microsoftなどの企業が、医療用を含め、ブロックチェーン製品開発専用の部署を設けるようになっている。米国の医療IT当局は、ブロックチェーンを大々的に推進している。
Change Healthcare(前McKesson ITホールディングス)は、医療製品における同社独自のブロックチェーンを2017年に発表し、2018年には取引を開始する。
だが、これに懐疑点が残るのはもっともだろう。
医療分野には、まだ実用化されていないテクノロジーに対して明らかな制約があることはほぼ間違いない。それだけではなく、医療ITは、既に医療データの相互運用性やサイバーセキュリティ障害のような解決困難な問題に対する他の「解決策」に取り組んでいる。
ただ、明らかなことが少なくとも1つある。ブロックチェーン技術の医療現場への進出に大きな期待が寄せられているということだ。
分析に積極的に関わるEHRベンダー――スコット・ウォラスク(論説員)
電子医療記録(EHR)システムは医療業界全体に浸透している。そのため、EHRベンダーは2018年には患者データの分析業務に一層力を入れることになるだろう。公衆衛生への取り組みを強化したり、さまざまな医療専門家へリアルタイムでレポートを提供したりといったことを実現できる、データ分析のメリットは明らかだ。
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