コードの共有を促進
Swift開発者が「iOS」アプリをモジュール化する、これだけのメリット
アプリケーションをモジュール化するメリットは、多くの開発者が認識している。かつてはハードルが高かったモジュール化作業も、Appleの新しい取り組みにより、活用機会を広げている。
アプリケーションのモジュール化は基本的な開発手法の1つだが、Appleの新しい取り組みにより、「iOS」開発者の間で優先度が高まっている。
アプリケーションのモジュール化は、アプリケーションを小さな処理しやすいコンポーネントに分割する作業だ。アプリケーションをモジュールに分割するときは、機能ごとに分けることが多い。例えば、認証プロセスを担う認証モジュール、ログインプロセスを担うログインモジュールなどだ。2018年6月、Appleのプログラミング言語「Swift」のイベント「SwiftFest 2018」に参加した開発者たちは、モバイルアプリケーションをモジュール化する目的やアプローチ方法について話し合った。
アプリケーション開発チームにとってモジュール化はさまざまな利点がある。例えば、コードの分担がより明確になるため、時間を無駄にしないで開発プロセスを進められる。また、コード品質やバグを管理しやすくなる。
混乱の解消とスケーラビリティの向上
eコマース会社Wayfairで上級iOSエンジニアを務めるブラッド・スミス氏は、自社アプリケーションをモジュールに分割する作業に着手したところだ。同社では、1つのチームに40人も開発者がいるため、アプリケーション開発時のコードの分担について混乱が起こっていた。スミス氏がモジュール化を進める目的は、ビルド回数を少なくし、ボトルネックを解消し、生産性を高めることだという。
モバイル開発会社Intrepid PursuitsのiOSソフトウェア開発者、アルビン・アンディーノ氏は「自分の担当するコードについて人にうまく説明できないようなら、体系化を改善する必要がある」と話す。
Swiftでモジュール化をすれば細かいアクセス制御ができるため、それぞれの開発者は担当するモジュールしか作業できなくなる。その結果、混乱を解消できる。アンディーノ氏のチームは6人だが、コードの分担に関する悩みはWayfairのような大きなチームの場合と同じだ。アプリケーションをモジュールに分割すれば、新しくチームに参加する開発者にも分かりやすい。
Washington Postの開発チームがモジュール化を進めた目的の1つはスケーラビリティを高めることだった。そう語ったのは、同社でリードiOS開発者を務めるアーサー・サビンツェフ氏だ。Amazonの創業者でCEOのジェフ・ベゾス氏が2013年に同社を買収した後、同社ではコンテンツ管理用の「Arc Publishing」というSaaS(Software as a Service)を開発した。このツールはBoston GlobeやLos Angeles Timesなど他のメディアも利用している。
「そこまでのレベルにスケーリングするには、Postの業務と密接に結び付いていたコードを分割する必要があった。全てを小さな要素に分割してから、(クライアントが求める)新しい機能を追加するのが最善の方法だった」(サビンツェフ氏)
モジュール化を進める前は、このSaaSプラットフォームがサポートする分析サービスは「Adobe Omniture」だけだった。モジュール化を進める間に、生データをGoogleの「Firebase」やSnowplowの「Snowplow」など他の分析プラットフォームで認識可能な形式に変換するレイヤーを構築した。
アプリケーションのモジュール化の進歩
アプリケーションをモジュールに分割することは開発の基本的な考え方だが、Appleが導入した変更によって以前より進めやすくなってきている。
まず、「iOS 8」でも動的フレームワークを利用できるようになり、Swiftで静的ライブラリを作成できるようになった。さらに、「tvOS」や「watchOS」の登場でOSの種類が多彩になった。そう話すのは、eコマース会社Rue La LaのiOS開発者、カルビン・チェスナット氏だ。OSの種類ごとに要件や機能は異なる。例えば、iOSとtvOSではテーブルビューを使えるが、watchOSでは使えない。しかし、アプリケーションのコードをモジュールに分割すれば、異なるOS間でコードを共有しやすくなるという。
Appleは2018年の「Worldwide Developers Conference」で、iOS用アプリケーションを「macOS」に移植できるようにするユニバーサルフレームワークの計画を発表した。これが実現すれば、ますますコードを共有しやすくなる。
Amazonのジョルジオ・ナティーリ氏は「あらゆる開発者がそれを望んでいる。(Appleが)コミュニティーの声に耳を傾けているよい兆候だ」と語った。
Appleに多様な種類のOSがあるからといってモジュール化の促進にはつながらないという意見もある。モジュール化を効果的に実現するには、これまで以上に明快でアクセス制御可能なインタフェースを共有ライブラリに作成できなければならない。そう話すのは、ソフトウェア会社MathWorksのエンジニアリングマネジャー、ブライアン・アーノルド氏だ。ただ、Swiftはシンボルを使い分けることができるため、モジュール化に役立つという。
アーノルド氏は次のように述べた。「Appleは(モジュール化を)容易にしてくれた。しかし、非常に限られた場合を除き、複数のアプリケーションでコードを共有している企業がさらにモジュール化を進めるには(フレームワークや拡張は)十分ではない」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[フォーティネットジャパン合同会社] 複雑化しがちな「SASE運用」 IT・医療・金融などの事例に見る導入成功の秘訣 -
製品資料
[フォーティネットジャパン合同会社] 「SD-WAN」導入で失敗しないための5つの重要事項 -
技術文書・技術解説
[フォーティネットジャパン合同会社] VPNの代替候補「ZTNA」を理解できるようになる“3大要素”とは? -
事例
[フォーティネットジャパン合同会社] すぐ分かる「SD-WAN」選定のポイント 成功企業はどんな成果を出した? -
製品資料
[SCSK株式会社] 「Dropbox」管理・運用の困りごと解決ガイド
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
「エージェントを作るな、スキルを作れ?」 Anthropicが提唱するAI運用の勘所
-
3
なぜ人はいるのにDXが進まない? ライオンも直面した“老害”レガシーシステム
-
4
Microsoft月例パッチ1400件超で過去最多 「限界点」を迎えたパッチ管理
-
5
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
6
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
7
SAP導入後も残る“Excel依存” 京急電鉄は「kintone」でどう解消した?
-
8
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
9
みずほ証券が「液冷サーバ」を採用 1日3.6億件の計算を支えるための要件
-
10
いまIBM iエンジニアが直面する「5つの技術的課題」とその解決策
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
7
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
-
10
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー