移行後のトラブルを減らす、マイグレーションプロジェクトの品質を確保する方法:マイグレーション品質向上の鍵
システムのサポート終了に伴い、レガシーマイグレーションに挑む企業が次々と壁にぶつかっている。もつれた糸のようなシステムをどう移行させ、正常稼働にこぎ着けるのか。
メインフレームやオフコンなどのレガシーシステムを長らく運用してきた企業の多くが、曲がり角に差し掛かっている。多くのメーカーが開発の縮小方針を打ち出し、サポートの終了が現実味を帯びてきたのだ。これまで延命させてきたレガシーシステムの将来について決断を下すべき時期が近づいている。
もともと、レガシーシステムを維持、運用するにはメーカーに膨大な額の保守費を払い続ける必要があり、企業の予算を圧迫していることは長年の課題だった。また、開発や運用のスキルを持つエンジニアも不足し、新たな人材の確保が困難になりつつある。こうした背景も後押しとなり、今重い腰を上げ、レガシーシステムを最新のオープン系プラットフォームにマイグレーションをする企業が増えている。
しかし、レガシーシステムのマイグレーションには多くの困難が伴う。実際にマイグレーションに着手した企業の多くからは、「マイグレーション後にシステムトラブルが頻発した」「プロジェクトのコストや期間が超過してしまった」「要員を確保できない」といった声が聞こえる。こうした課題を乗り越え、レガシーシステムのマイグレーションを成功裏に終えるには、どのような手を講じればよいのだろうか。ポイントはマイグレーションの際の「テストの効率化」と「移行後の定着」にあるという。有識者が語った。
「待ったなし」のレガシーマイグレーション
金融や製造をはじめ、さまざまな業界においてメインフレームやオフコンなどのレガシーシステムが使われ続けている。特に財務経理システムや生産管理システムといった企業の基幹業務を担うシステムは、安定稼働が最優先とされるため、長期間にわたる稼働実績を持つ技術的に枯れたレガシーシステムが今でも重用されている。
しかし、レガシーシステムの利用には安定稼働というメリットをはるかに上回るデメリットが目立ってきた。EOSL(End Of Service Life)とコスト負担はその最たるものだろう。ソフトウェアの品質保証、テストの専門企業であるSHIFTで、技術推進やサービスの開発、事業化を担う鬼山浩樹氏は、これまでに大手企業の基幹系ミッションクリティカルシステムのマイグレーションを数々経験してきた。同氏によれば、レガシーシステムの運用コスト負担は年々重くなっているという。
「国産メインフレームメーカーをご使用でかつ安定稼働にこだわる企業は、今でも既に高額の延長保守を契約されており、IT予算を圧迫しています。しかし、その保守延長さえもメーカー側の開発終了やEOSLの潮流で難しくなってきました」(鬼山氏)
ある金融機関では、500億円のIT予算のうち実に100億円がレガシーシステムの老朽化対応に費やされているという。近年では「デジタルトランスフォーメーション」を合言葉に、AI(人工知能)やFinTechといった先進技術やサービスのビジネス活用が進むが、コストが高いレガシーシステムを抱え込んでいる限り、そうした新たな分野へのIT投資もままならない。そもそもレガシーシステムの古い技術やプラットフォームは新たなテクノロジーと親和性が高いわけではない。企業のIT予算が増える傾向にある今、思い切ってレガシーシステムのマイグレーションにかじを切り、より生産性の高い領域に予算を振り向けられる体制を選択することが、将来的に企業の生命線となることは間違いない。
レガシーマイグレーションの品質のカギとなる「現新比較テスト」
レガシーシステムの開発や運用を担う人材の不足も深刻だ。システムのアーキテクチャやCOBOL言語に長けたベテラン技術者の数は減り続けており、いずれ人材が枯渇するのは目に見えている。その前に最新のオープン系プラットフォームに移行しない限り、近い将来システムの運用は立ち行かなくなるだろう。
こうした危機感に駆られ、既に多くの企業がオープン系プラットフォームへのマイグレーションに踏み切ったが、そのほとんどが何らかのトラブルに見舞われているという。中でもプロジェクトの3〜5割を占める「現新比較テスト」(現行システムと新システムの実行結果を比較検証するテスト)はシステム品質保証に対する重要な行程であるが故、実施計画を間違えれば課題の原因にもなり得る。SHIFTが行った調査では、コスト制限もある中でテストの負担が大きいと回答した企業が全体の6割にも上っている(※)。
「現新比較テストでは、現行システムと新システムの実行結果をExcelなどに貼り付け、あらゆる観点から比較検証しなければならないため膨大な工数がかかります」(鬼山氏)
また、重要な工程にもかかわらず、予算や時間の制限から省力化の対象になりやすく、「結果的に移行後の不具合を招くケースが多い」と鬼山氏は話す。
「レガシーシステムのマイグレーションプロジェクトは、実情を知らない人から見ると『単にソースコードを変換するだけ』の簡単な作業に見えるため、十分な予算や時間を確保できないことがほとんどです。ましてやテストの重要性は認識されにくく、省力化の対象になる傾向があります。しかし、テストの網羅性を欠いてしまうと、結果的にマイグレーション後のシステムでトラブルが頻発してしまうのです」(鬼山氏)
※SHIFT「マイグレーション実態調査レポート 2018」(有効回答者数107人、2018年8月8〜31日実施)
ブラックボックス化したシステムが移行後もネックに
レガシーマイグレーションをきっかけに、現行システムのブラックボックス化が明らかになり、さまざまな支障を来すことも多い。多くのレガシーシステムは数十年も前に設計、開発されたため、仕様書や設計書といったドキュメントが残っていないケースが多々ある。あるいは残っていたとしても、長年にわたる運用の過程で無数の改修が施され、既存ドキュメントに反映されていないことも珍しくない。もつれた糸のようになり、ブラックボックス化したシステムがマイグレーションの工程を難航させ、移行後の業務の進行を妨げることにもつながるという。
「システムだけでなく、それを使って行う業務フローがドキュメント化されておらず、全体の業務を知る人も異動または退職してしまっているケースは少なくありません。どのようにシステムが動けば正解なのかが分からないため、移行した後にシステムを使って正常に業務を回すためには、現場が骨を折らなければならないのです」(鬼山氏)
レガシーマイグレーションをテストの側面からサポート
SHIFTはこうした課題を抱える企業をサポートするため、2018年10月から「マイグレーション支援サービス」の提供を始めた。前述したようにマイグレーション後のシステムで発生するトラブルの多くは、予算や時間の制限によるテスト不足が原因だ。そこで同サービスは、マイグレーションプロジェクトにおけるテスト工程を大幅に効率化し、その網羅性を高めることで移行後のシステム品質を高める方法を提供している。
具体的には、マイグレーション前後のデータファイルを自動的に比較し、正しくデータが移行できているかどうかを確認できる「ファイルコンペアツール」や、マイグレーション前後でシステムの動作が変わっていないことを検証した結果を自動的にまとめる「エビデンス作成ツール」など、マイグレーションに必要なツールの提供をはじめ、品質保証の観点から企業のマイグレーションを成功に導くさまざまなソリューションをサービスとする。
企業は、これらのサービスを活用することで予算や期間が限られた中でも十分な網羅性を持つテストを実行でき、移行後のシステム品質も高められるという。また同社は自動化ツールを提供するだけにとどまらず、テスト工程全体を最適化するための支援として「PMOサービス」、すなわちマイグレーションにおけるプロジェクト管理支援サービスも提供する。
「エンジニアはそれぞれ独自の方法をもってテストを進める傾向にありますが、SHIFTは自社の品質保証ノウハウと独自の方法論を用いて業務プロセスを分解し、改善可能な部分の効率化を図ります。さらに、テスト工程の平準化もサポートします」(鬼山氏)
SHIFTは、これまでにも国内を代表するソフトウェアの品質保証、テストの専門企業として、さまざまなマイグレーションプロジェクトをサポートしてきた。これらの豊富な経験を生かし開発したマイグレーション支援サービスは、より多くの企業のマイグレーションプロジェクトを成功へ導くだろう。
業務シナリオテストで移行後の業務継続性を確保
同社のマイグレーション支援サービスで特筆すべきは、移行完了後にシステム切り替えを正常に運ぶためのサポートを行うことだ。具体的には新システムを使った業務を正常に実施できるかどうかを検証する「業務シナリオテスト」を提供する。前述したように、マイグレーション後の安定稼働は最も重要な経営課題の一つである。テスト時にプログラムやデータ、画面、帳票などの互換性がきちんと検証できていたとしても、実際に新システムを業務に適用してみると、他システムとの連携などがうまくいかずに業務が滞ってしまうことは往々にしてある。同社のマイグレーション支援サービスはこの事態の発生を未然に防ぐため、業務シナリオ作成を代行し、網羅性の検証も行う。
「レガシーシステムの場合、業務の内容や手順が明文化されていないことも多く、業務シナリオの検証をますます困難にしています。しかしそうした場合でも、当社では、あらためて担当者にヒアリングを行い、既存のドキュメントを精査し、業務シナリオを独自のノウハウで再ドキュメント化します。その上で、その後の業務フローが正常に実行できるかどうかを検証します」(鬼山氏)
顧客の元には業務フローを可視化したドキュメントが残るため、これを将来のシステム改修やマイグレーションの際に役立てることも可能だ。このドキュメントは業務の属人化を防ぐことにも活用でき、多くの顧客から好評を博しているという。
マイグレーション後のシステム品質を確保する類を見ないサービス
このように、SHIFTのマイグレーション支援サービスはテストの観点から、移行後のシステム品質、ひいてはマイグレーションプロジェクト全体の品質を向上させるための総合的なサポートを提供する。他社のマイグレーション支援サービスとは明らかに一線を画すものだと鬼山氏は力説する。
「世のマイグレーション支援サービスのほとんどは単にソースコードのコンバージョン手段を提供するのみで、マイグレーション後の安定稼働を保証するものではありません。一方、弊社のサービスは新システムや移行後の業務フローが問題なく実行できるよう、マイグレーションプロジェクトの品質そのものを確保します。そのメリットをできるだけ多くのお客さまに享受していただけるよう、今後1〜2年の間でマイグレーション支援サービス専任の100人規模のチームを編成し、より広くサービスを展開しようと考えています」(鬼山氏)
鬼山 浩樹
株式会社SHIFT
ビジネストランスフォーメーション事業本部 技術推進部 技術推進グループ
20年以上にわたり外資系メーカーのコンサルティング部門に所属し、プロジェクトマネージャー、ソリューションアーキテクト、ソリューションマーケティングを歴任。ミッションクリティカルな基幹業務システムのマイグレーション、データ移行プロジェクトにて数多くの実績を積む。ソフトウェア技術以外にもITビジネスインフラに関する知識も持ち、災害対策、データ移行やシステム切り替え、非機能運用管理コンサルティングに関する業務実績も有する。SHIFTでは、品質保証における技術推進やサービス開発・事業化に関する業務を担う。
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