「技術屋」で終わるか「参謀」へ昇格か 多忙な情シスが“15分”でキャリアを逆転させる術:AIに代替される情シス、生き残る情シス
AIの普及でIT担当者の価値が再定義される今、認定資格の取得に注目が集まる。合格を目指して、どう時間を確保し、どのような勉強すればいいのか。具体的なチップスを紹介する。
今のIT環境は、AI(人工知能)技術の急速な普及、攻撃の高度化、インフラの利用形態の変化という、三つの巨大な潮流によって根本的な再定義を迫られている。こうした不確実性が高まる時代において、IT担当者が自己の専門性を証明し、キャリアアップを図るための手段として、認定資格の重要性がかつてないほど高まっている。しかし、多忙な業務の中で学習時間を捻出し、モチベーションを維持することは容易ではない。
本稿では、IT担当者が認定資格を取得するための戦略的なアプローチを、学習方法、時間管理、モチベーション維持の観点から解説する。
市場動向とスキル需要の相関分析
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IT担当者にとって有望な認定資格とは
IT担当者のキャリア形成は、市場の技術投資動向と密接に連動している。2026年のIT市場をみれば、企業はAIの導入を加速させているが、その成功の鍵は「AIそのものの知識」以上に、AIを安全かつ効率的に運用するための周辺スキルにあることが明らかになっている。そのため、IT担当者に求められるスキルセットは、従来のインフラ管理から、より高度な抽象化レイヤーの操作へと移行しつつある。
こうした動向は、IT担当者がどの認定資格を優先すべきかの指針となる。例えば、2025年には予算制約によってセキュリティチームが深刻な人手不足に陥ったが、2026年にはこのギャップを埋めるために、自動化ツールを使いこなせるセキュリティプロフェッショナルの採用が活発化するとみられている。
AIの進化は一部の職務を代替する可能性があるが、同時に人間にしかできない業務の価値を浮き彫りにしている。例えばAIに代替されにくい職務としては、複雑な意思決定を伴うITマネジャーや、倫理的判断を必要とするガバナンス担当者が挙げられる。認定資格の取得は、こうした「AI耐性」のあるキャリアを構築するための武器となる。
成人学習者向けの高度な学習戦略
IT担当者は成人学習者で、学生時代の学習法をそのまま適用しても成果は上がりにくいと考えられる。成人学習者が高難易度のIT試験に合格するためには、脳の仕組みを理解した効率的なアプローチが必要だ。以下に、IT担当者に特化した学習のヒントを説明する。
- 小単位で学ぶ
- 試験範囲を15分から30分で完了できる小さな単位に分解する。これによって、業務の合間や移動時間を利用したマイクロラーニングが可能になる。
- 思い出す力を鍛える
- 教科書を繰り返し読むよりも、練習問題を解いたり、学んだ内容を何も見ずに書き出したりする「アクティブリコール」(思い出す作業)を重視する。
- 長時間学習はしない
- 一度に長時間学習するのではなく、数日おきに同じトピックを復習する。これは忘却曲線を克服する効果的な方法だ。
- 既存知識を生かす
- 新しい技術(例:Kubernetes)を学ぶ際、既知の技術(例:仮想サーバや物理ネットワーク)との共通点と相違点を整理する。
- 学んだことを記録
- 学んだ内容を記録する。テキストベースで構造化された情報は、後から検索しやすく、実務のドキュメント作成スキル向上にもつながる。
- さまざまなメディアを利用
- 公式ドキュメントだけではなく、動画講座、ハンズオンラボ、ポッドキャストなどを組み合わせ、視覚、聴覚、触覚を刺激する。
- 「教える」ことで理解を深める
- 学んだ内容をブログに書いたり、同僚に説明したりする。説明できない部分は、理解が不十分な箇所だと特定できる。
- 模擬試験の活用
- 学習の初期段階で一度模擬試験を受け、自分の弱点を把握する。
- スマホをオフに
- スマートフォンの通知機能をはじめ、集中の妨げとなるものを完全に遮断する。
- 自分を客観的に観察
- 「自分は今、何を理解していて、何が分かっていないか」を客観的に観察する。
- 実機操作の重視
- 理論だけで終わらせず、テスト環境で実際にコマンドを打つ。
- 専門用語の定義を確認
- 基本用語の曖昧な理解が後の大きな壁になることを防ぐ。
- 休息をとる
- 睡眠中に記憶は固定されるとみられる。試験前の徹夜は、論理的思考力を著しく低下させるため、避けるべきだ。
- 肯定的なマインドセット
- 認定資格を「苦行」ではなく、自分の価値を高める「投資」と捉える。
時間管理の鍵は「アイゼンハワー・マトリクス」の適用
IT担当者の時間は常に奪われている。学習を余った時間でしようとすれば、永遠にその時間は訪れない。時間管理のフレームワークであるアイゼンハワー・マトリクスを使い、意識的に時間を作る必要がある。アイゼンハワー・マトリクスとは、タスクを緊急度と重要度で整理し、タスクに優先順位を付けやすくする手法だ。
例えば、システム障害の発生を「緊急かつ重要」と位置づけ、「学習はここではできない」とする。一方、形式的な会議や重要度の低い通知対応を「重要ではないので削減できる」と捉え、この時間を学習に充てる。
IT担当者が学習時間を確保するためには、周囲への宣言も有効だ。「毎週水曜日の18時以降は学習時間のため、緊急時以外は連絡を受け付けない」といったルールをチーム内で共有することで、組織的なバックアップを得やすくなる。
モチベーション維持のこつ
認定資格の学習は、数カ月に及ぶ長丁場になることがある。その間、モチベーションを維持し続けるには、心理的な仕組みを活用する必要がある。
「クワイエット・クラッキング」を防ぐ
クワイエット・クラッキング(静かな退職)は、過度な期待と不十分なサポートによって、従業員が静かに生産性を失い、最終的に離職する現象を指す。これを防ぐには、学習を「やらされ仕事」にしないことが重要だ。
ITマネジャーは、従業員との面談を通じて「その資格が本人のキャリアのどの部分に役立つのか」を共に考える必要がある。「会社に必要だから取れ」というアプローチでは、内発的な動機付けは生まれない。本人が「この技術をマスターすれば、自分の市場価値が上がり、将来の選択肢が広がる」と確信できたとき、学習のモチベーションも高まる可能性がある。
ソーシャルラーニングの力
孤独な学習は挫折率が高い。SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)や社内チャットツールを活用し、学習の進捗を公開する手法が有効だ。他者からの「いいね」やアドバイスは脳を刺激し、学習の継続を助ける。IT分野のカンファレンスや勉強会にも参加すれば、最新トレンドに触れることで「自分もこの技術を使いこなしたい」という前向きな気持ちになる可能性がある。
企業によっては、認定資格の取得を支援する制度を設けている場合がある。例えば、合格時に受験料を会社が負担したり、学習ツールの法人プランを契約して従業員が動画講座を視聴できる環境を整えたりする、といった具合だ。IT担当者は支援制度があるかどうかを確認し、ある場合、積極的に利用すると良いだろう。
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