HR Tech(HRテクノロジー)が「無意識の偏見」を明らかにする:テクノロジーは「推進役」にすぎない
「#MeToo」の動きに促された人事部はハラスメントの問題に取り組んでいる。有力な手段としてHR Techが脚光を浴びつつあるが、当然ながらソフトウェアにはできることと、できないことがある。
性被害を訴える「#MeToo」の動きに促され、HR(人事)テクノロジー(以下、HR Tech)ベンダーとそのユーザー企業との間で、あることが活発に議論されている。HR Techを使って職場での多様性に関する問題を特定する方法と、スキャンダルになる前にこうした問題を解決する方法に関する議論だ。
近年、テクノロジーを使用して職場の多様性を確保しようとする取り組みが盛り上がっている。ビジネス向けソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を運用するLinkedInのレポート「Global Recruiting Trends 2018」によると、企業の78%が多様性の改善を優先課題にしているという。47%の企業は面接担当者の偏見に対処すべく、雇用プロセスを見直している。
こうした企業が使用しているツールは、オンラインの人事評価や仮想現実(VR)環境での試験、映像を使った面接などを実現する。ジョブディスクリプション(職務記述書)に含まれる無意識の偏見を見つけ出し、スキルや性格的な特徴に基づいて候補者を選考できるよう支援するツールの開発も進んでいる。こうしたツールを活用すれば、民族的な名前や自宅の住所などを基にした、望ましくない偏見の入り込む余地を排除できる。
#MeTooによって、不適切な振る舞いを特定しなければならないという重圧が、雇用主に大きくのしかかっている。モラル面と法律面でのリスクをもたらすからだ。こう指摘するのは、人材コンサルティング会社RedThread Researchで主席アナリストを務める、ステイシア・ガー氏である。
性別の多様性に関する過去の議論は「野心的な方向に寄っていた」とガー氏は指摘する。支持者は多様性が企業に与える良い影響に注目し、それを裏付ける数字を用意した。例えばコンサルティング会社McKinsey & Companyの報告によると、経営陣の性別の多様性で上位4分の1にランクインした企業は、下位4分の1の企業と比べて、平均以上の収益性である可能性が21%高かった。
現状の雇用主は多くの場合、「Wall Street Journal」「New York Times」といった大手新聞の表紙を飾りかねない、ハラスメント事件に対処しようと取り組んでいる。大々的な報道によって、目覚ましい大規模な変革がいや応なしに引き起こされている。
同様の例は最近Nikeでも見られた。同社は、CEOを務めるマーク・パーカー氏の確実な後継者と見られていた人物が、数人の幹部と共に辞職へと追い込まれた。従業員からの不満の訴えを人事部が繰り返し無視した後、差別的な文化に対処するリーダーを求める圧力が、企業内で高まったためだ。
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