「人の脆弱性」がセキュリティ最大のリスク どうやって「最悪の事態」を想定する?:事例で分かる、中堅・中小企業のセキュリティ対策【第17回】
どれだけシステムにセキュリティ対策を施しても、最後に残るのは「人の脆弱性」。全社員に「情報漏えいが起きたら大変なことになる」と意識付けるにはどうすればよいか――ポイントは「情報の洗い出し」です。
「『野放しのテレワーク』はNG 自然にセキュリティ意識が上がるルール作りのコツ」では、テレワーク導入の仕組みを構築するために、PCの利用実態を時間単位で把握しながら運用ルールを作り上げる方法を紹介しました。利用実態を把握することは、必然的にセキュリティ強化につながります。
セキュリティ対策において、最終的な脆弱(ぜいじゃく)性になるのは「人」です。どれだけシステムに強固なセキュリティ対策を施したとしても、介在する人に脆弱性があれば、そこが攻撃の入り口になってしまい、情報漏えいなどの事故が起こる可能性は否定できません。
人の脆弱性をなくすためには、従業員の一人一人にセキュリティの重要性を認識してもらい、「情報を守るのは自分の仕事の一つである」と本人が理解することです。これはテレワーク利用者であるか否かは関係なく、PCやインターネットを利用しているビジネスパーソン全員に当てはまることです。
「人ごと」から「自分ごと」に認識が変わった瞬間、具体的な行動につながるものです。そのためには、セキュリティ問題を身近に感じてもらわなくてはいけません。そのためにお勧めするのが「自分たちが取り扱っている情報の棚卸しと見直し」です。「実はこんなに重要な情報を扱っていたのか」「漏えいや紛失が起きたら大変なことになるぞ」と、事の重要性に気付いてもらうことで、自発的にセキュリティ対策を強化する方向に導くのです。
具体的には以下のように取り組みます。
- 現在、自分が取り扱っている情報を「紙」と「電子データ」の2軸で洗い出す
- 洗い出した情報がどこに保管されているのかを整理する
- 洗い出した情報に対して優先順位を付ける(優先順位は「機密度」「重要度」ごとにそれぞれ「高」「中」「低」に分類)
- 優先順位の高い情報が「漏えい」「紛失」「喪失」した場合、最悪の状態としてどのようなことが起こってしまうかを想定する
- 最悪の状況を回避するために、何に着手すべきかを整理する
それぞれの取り組みを具体的に考察してみましょう。
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深刻化する標的型攻撃
1.現在、自分が取り扱っている情報を「紙」と「電子データ」の2軸で洗い出す
まずは、自分がどのような情報を保有し、利用しているのかを洗い出します。ここでは「Microsoft Word」「Microsoft Excel」などのアプリケーション情報を確認するのではなく、「情報の内容」を洗い出します(表1)。
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