製造業が「オンプレミスERP」を選ぶ理由【前編】
製造業がクラウドERPではなく「オンプレミスERP」を選ばざるを得ない理由
デジタルマニュファクチャリングの実現にはクラウドERPの活用が鍵となる。しかし全ての製造業に当てはまるわけではない。オンプレミスのERP製品を選ぶしか手段がない場合もある。
クラウドサービスは大流行している。ERP(統合業務)製品も従来のオンプレミスモデルから、クラウドサービスへと着実にシフトしている。だが大半の製造業者の間では、オンプレミスのERP製品と、ERP製品の機能をクラウドサービスとして利用できる「クラウドERP」との比較論争に決着がついたとは言い難い。
迅速なサービス提供、簡単なメンテナンス、規定の月額料金など、クラウドサービスのメリットは広く認められている。それでも、クラウドERPが単純に全ての製造業者に最適というわけではない。特に、規制の厳しい業界に属していたり、管理やカスタマイズの能力を維持し続けたいと考えていたりする製造業者にとっては適切とはいえない。
製造工程をデジタル化する「デジタルマニュファクチャリング」を大きく推進する大規模企業の間では、特にクラウドERPが勢いを増しているのは間違いない。調査会社Gartnerによれば、大企業におけるERPシステムの新規導入事例のうち、少なくとも35%がSaaS(Software as a Service)つまりクラウドERPを利用し、オンプレミスの製造実行システム(MES)と疎結合させる計画だという。
オンプレミスERPとクラウドERPを比較検討する企業は、当面、自社のオンプレミスERPシステムを全て維持することに決めている場合が少なくない。主な理由として、自社のERPシステムが複雑なこと、自社独特のカスタマイズが必要なこと、クラウドERPが現実には必ずしも約束通りすぐに使えるものではないことなどが挙げられている。
クラウドに価値を見いだせないオンプレミスERPユーザー
調査会社Mint Jutrasの調査によると、オンプレミスで導入した既存のERP製品やその他のビジネスソフトウェアを10年以上維持することを計画している企業が31%あったという。特に、複数の業界に事業展開する企業や、多額の投資をして細部までカスタマイズしてきた企業には、クラウドはそれほど価値がないように見えている――こう話すのは、ブロックチェーン関連事業を手掛けるConsenSysで、製品責任者を務めるティエリー・ボンファンテ氏だ。ボンファンテ氏は以前、ERPベンダーEpicor Softwareでグローバルプロダクトマネージメントのバイスプレジデントを務めていた。
「一部の企業は、これまで長い年月をかけてERP製品を細かくカスタマイズしてきたため、それを手放せない。クラウドに価値を見いださない大きな理由はそれだろう」と、ボンファンテ氏は指摘。こうした企業はシステムのアップグレードにも奮闘し、自社のシステムに多くの時間と費用を費やしてきた過去があると説明する。
複数の拠点を抱える企業も、クラウドERPで問題に直面する可能性がある。そうした拠点の中には、一定のデータ伝送速度を確保できない地域に所在する場合もあるためだ。コンサルティング会社Panorama Consulting Groupのクライアントであるホームセンターがこれに当てはまる。このホームセンターは、カリブ海諸島8島に及ぶ広範囲で運営しているため、導入できるERP製品の選択肢が限られていた。
Panorama Consulting Groupでソフトウェアの選定を担当するマネジャー、クリス・デヴォールト氏は「純粋に通信速度不足だけが原因で、クラウドサービスを利用できなかった」と説明する。一部の地域では、インターネットに一貫してアクセスできない企業も依然見受けられる。北米でも田舎では光ファイバーが設置されておらず、必要なデータ伝送速度を得られないことがある。あるいは、遠隔地の工場では携帯電話の通信網に常時アクセスを確立できないこともある。
後編では、オンプレミスERPからクラウドERPへ移行し、オンプレミスERPに出戻ったDalsin Industriesの事例を紹介する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
製造業が「オンプレミスERP」を選ぶ理由
クラウドERPはさまざまな企業から人気を集めているが、全ての企業に最適というわけではない。特に、規制の厳しい業界に属する製造業者や、管理やカスタマイズの能力を維持し続けたい製造業者にとってはオンプレミスERP製品の方が適しているケースもある。オンプレミスERPを選択するべき理由について考察する。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[o9ソリューションズ・ジャパン株式会社] 「改正物流効率化法対策」徹底解説 総物流費を抑制するサプライチェーン戦略 -
製品資料
[o9ソリューションズ・ジャパン株式会社] 「サプライチェーン最適化」実践ガイド:効果的な意思決定を実現する秘訣とは? -
製品資料
[株式会社リンプレス] 非デジタル/IT人材を「自走するDX推進者」に変えるための育成ロードマップ -
市場調査・トレンド
[ワンアイルコンサルティング株式会社] AI時代の組織設計:「判断と責任」を人に残すための2つの原則とは? -
技術文書・技術解説
[ワンアイルコンサルティング株式会社] システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
1200万円のSaaS導入を回避 スギ薬局「運用費10万円」のAIエージェント構築術
-
2
ソフトウェア開発生産性向上に取り組む企業は4割 調査で学ぶ「停滞」の正体
-
3
クラウド資格コレクターは評価されない? 年収1000万を分ける“OSの理解度”
-
4
「完璧な設計」なのに3000万円溶けた AWSの失敗事例から学ぶ3つの教訓
-
5
無料の「Apple Business」で十分? 情シスが陥りがちなポイント
-
6
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
7
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
8
なぜクラウド全盛の今「メインフレーム」が再び脚光を浴びるのか
-
9
フィッシング詐欺の説明として最も正しい記述は?
-
10
1200万円のSaaS導入を回避 スギ薬局「運用費10万円」のAIエージェント構築術
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
2
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
3
「Google Workspace」活用事例34選、先進の生成AIによる組織変革の全貌
-
4
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
5
「人員を増やす」という選択肢はない 情シスが負の連鎖から抜け出すには?
-
6
Windows PCとMacの選択制で生産性向上 LINEヤフーが実践する運用管理方法とは
-
7
生成AIで文書活用を進めるには? 効率化と安全性をどう両立する
-
8
「問題が深刻化しやすいプロジェクト管理」から脱却する方法とは?
-
9
Linuxのスキルを証明する“激推し”の認定資格はこれだ
-
10
NTTドコモが実践したクラウド統合監視 業務量2倍でも残業削減を実現できた理由
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー