上場の陰で問題が頻発
Slackで発生した「12時間以上の大規模障害」を振り返る
2019年6月28日、Slackが障害に見舞われた。大きな接続問題が起きたのは、2019年に入ってこれで5回目だ。同社はこれまでのところ、原因について詳細を明らかにしていない。
2019年6月20日のSlack Technologies(以下、Slack社)上場から約1週間後の同月28日、同社のコラボレーションサービス「Slack」が12時間以上にわたって部分的にダウンした(注1)。一部の顧客はメッセージ送信などの作業ができなくなった。同社によると、Slackの障害は同日に一部のサーバが「利用不能」になったことが発端だった。その日のうちに「別の問題がサーバの負荷を増大させ」(同社)、事態はさらに悪化した。
※注1:Slackは2019年7月29日にも一時ダウンした(現在は復旧)。
サーバが利用不能になった原因について、Slack社は明確に説明せず、「別の問題」とは何だったのかについても明言を避けた。同社はAmazon Web Services(AWS)社の同名クラウドサービス群に大きく依存しているが、問題がAWS側にあったのか、それともSlack側にあったのかについても明らかにしなかった。
Slack社公式サイトの情報によると、この障害が原因で、ピーク時にはメッセージの送信やファイルのアップロードといった作業の10~25%ができなくなった。午後になると約30分の間、一部のユーザーがSlackに一切アクセスできなくなった。合計すると、サービス障害は2019年6月28日午前4時半から午後7時20分まで続いた。
Slackだけが悪いのか
調査会社Nemertes Researchのアナリスト、アーウィン・レーザー氏によると、MicrosoftやCisco Systemsもここ最近、障害に見舞われていた。従って、Slackにことさら問題があるとは考えにくい。今回の障害は「クラウドに障害が発生した場合に備え、組織がコミュニケーションやコラボレーションを継続できるようにするための、バックアップ計画の必要性を物語る」とレーザー氏は語る。
2019年6月28日の障害の約1週間前に、Slackは上場を果たしていた。これは同年におけるIT企業の上場の中でも特に注目を集めたビッグニュースといえる。
上場に当たって当局に提出した書面の中で、Slackは今回発生したようなサービス事案に関連した財務リスクについて、投資家に警告していた。書面では、障害が発生した場合、Slackの評判に傷がつき、顧客に損害が出る可能性を指摘している。具体的には次のように記している。
「われわれの継続的な成長は、部分的には、現在Slackを使っている組織および使う可能性のある組織が、1日24時間年中無休で支障なく、あるいは性能が落ちることなくSlackにアクセスできる能力に依存する」
Reutersの報道によると、障害の発生を受けてSlackの株価は2019年6月28日の時間外取引で1%下げた。Slackは少なくとも2019年に入ってからは、5月までは毎月99.9%を超すアップタイム(稼働時間)を維持してきた。今回の障害が発生した6月は99.8%台に下がったものの、高い水準を維持している。
Slackの障害カレンダーが語る問題の頻発
2018年夏に相次いだ障害がメディアの注目を浴びたことを受けてか、Slackはステータス状況のWebサイトのデザインを変えた。この変更は、接続問題の全体像を把握することを難しくした。以前はユーザーからサービス問題が報告されると、程度にかかわらず毎日、このWebサイトのカレンダーに黄色か赤のインジケーターを表示していた。今、このカレンダーには、最も重大なインシデントが起きた場合のみ、障害を表す赤いシンボルマークが表示される。Slackは引き続き他のイベントも記録しているが、カレンダー内でそれぞれの日をクリックしなければ、そのイベントは表示されない。
例えば2019年のカレンダーを参照すると、赤い障害シンボルが付いている日は、1月から6月までの間で5日しかなく、全部でわずか5回しかインシデントが起きていないように見える(注2)。だが、それぞれの日をクリックすると、これ以外にも小さな問題についてユーザーから報告された件数は60件を超えていることが分かる。
※注2:Slack社は、2019年7月29日の障害にも赤い障害シンボルを付与した。
2019年6月28日の障害は、クラウドの信頼性に関してよくある疑問を生じさせる。調査会社Forester Researchのアナリスト、アート・シェラー氏は、この問題がオンプレミス製品の成長を後押しする可能性があると指摘する。とはいえオンプレミスのシステムにも障害は起きる。
「Slackと、チーム間のメッセージのやりとりを中心としたコラボレーションツール市場は成長を続けるだろう。障害はあっても、オンプレミス勢はますます縮小を続けて少数派になる。そして障害はこれからも起きるだろう」(シェラー氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」攻略ガイド:効率的に落札するためのポイントを徹底解説 -
製品資料
[株式会社うるる] 入札情報に特化した「販路拡大」「効率化」のためのサポートツールとは? -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] 公共入札に成功する企業と失敗する企業の「5つの違い」 -
製品資料
[日本ビジネスシステムズ株式会社] 専門家が教える、Microsoft 365の「テナント統合/分離」を成功に導く秘訣 -
製品資料
[rakumo株式会社] Microsoft 365での情報埋没を防ぐ、社内ナレッジを資産化する情報ポータル活用
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
2
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
3
「テザリング依存」に潜む落とし穴 “遅いVPN”を解消するネット構築術
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
6
AI導入が失敗する“真犯人”は現場のマニュアル 7割が陥る「標準化」のわな
-
7
Claude利用8割のGMO、AI人材の評価軸が「トークン管理」に変わった
-
8
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
9
被害額は過去最高額 それでも「サイバー犯罪者が捕まらない」3つの理由
-
10
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
7
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
-
10
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー