脆弱なパスワードの使用を強制する
全Bluetoothデバイスに盗聴や改ざんのリスクをもたらす「KNOB攻撃」とは?
脆弱な暗号鍵をBluetoothデバイスに強制する方法が見つかった。攻撃者が「中間者攻撃」を仕掛け、デバイスから情報を盗み取る恐れがある。
研究チームがBluetoothに関する脆弱(ぜいじゃく)性(CVE-2019-9506)を発見した。全てのBluetoothデバイスが影響を受けるという。攻撃者がこの脆弱性を悪用すると、データの送信者と受信者の間に割り込み、データの傍受や改ざんをする「中間者攻撃」につながる恐れがある。
発見者はシンガポール工科デザイン大学(Singapore University of Technology and Design)の大学院生ダニエル・アントニオリ氏、セキュリティ研究機関Helmholtz Center for Information Security(CISPA)の教授であるニルス・オレ・ティッペンハウアー氏、オックスフォード大学(University of Oxford)コンピュータサイエンス学部准教授のカスパー・ラスムセン氏だ。彼らは「The KNOB is Broken」と題した論文の中で、この脆弱性を利用した攻撃手法を「Key Negotiation of Bluetooth」(KNOB)攻撃と命名した。
KNOB攻撃の手口
論文は、KNOB攻撃の仕組みを次のように説明する。
今回発見したBluetoothの脆弱性を使うと、第三者が暗号鍵などの秘密情報を一切知らなくても、2人あるいはそれ以上の標的に対し、暗号鍵を単純なものに強制できる。攻撃者はこの単純さを悪用する。ネゴシエーション(鍵の共有)された暗号鍵に対して総当たり攻撃を仕掛け、傍受した暗号文を解読し、暗号化済みのメッセージをリアルタイムで挿入できるようになる。
KNOB攻撃のためには、攻撃者が標的デバイスのBluetooth通信圏内にいるか、標的デバイスとペアリング済みのデバイスを使わなくてはならない。「攻撃が成功すれば、標的デバイス間の通信を盗聴できる」と研究チームは述べる。
標準化団体の提唱と主要ベンダーの対処
研究チームは2018年11月、この脆弱性とKNOB攻撃に関する詳しい情報を、Bluetoothの標準化団体Bluetooth Special Interest Group(Bluetooth SIG)に報告した。研究チームがテストしたのは17種類のBluetoothチップだったが、「標準に準拠した全Bluetoothデバイスに脆弱性が存在すると考えられる」と付け加える。
Bluetooth SIGによると、この脆弱性が実際に悪用された形跡は2019年8月時点で見つかっていない。一方で上述の論文は「暗号鍵ネゴシエーションはBluetoothユーザーの目には見えないため、攻撃がひそかに実行される場合もある。実際に攻撃が仕掛けられていたとしても検出できるかどうかは分からない」と指摘する。
KNOB攻撃の脅威を緩和するため、Bluetooth SIGはBluetoothの仕様「Bluetooth Core Specification」を改訂した。さらにBluetoothデバイスのベンダーに対し、通信方式がBR/EDR(Basic Rate/Enhanced Data Rate)の場合、7オクテット(56bit)以上の長さの暗号鍵を推奨する。この要件をBluetooth認証プログラムのテスト項目として追加する計画だ。加えて、既存の製品やサービスを更新し、BR/EDR接続の暗号鍵を最低7オクテット以上にするよう勧告する。
主要なベンダーは、2019年8月にKNOB攻撃の対策パッチをリリースした。Microsoftは月例更新プログラムの一環で、Googleは「Android」のセキュリティパッチで対策を講じた。Appleは「iOS」のバージョン12.4、「macOS」のセキュリティアップデート「2019-004」をリリース済みだ。Cisco SystemsはWeb会議サービス「Webex」およびIP電話「IPフォン」の一部に向け、パッチを公開した。
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