影響と危険度を解説
無線LANを安全にするはずのWPA3に見つかった脆弱性「Dragonblood」とは?
無線LANのセキュリティ規格「WPA3」に脆弱性が見つかった。「Dragonblood」の名が付いたその脆弱性は、攻撃者が「ダウングレード攻撃」「サイドチャネル攻撃」に悪用する恐れがある。
無線LANのセキュリティ規格「Wi-Fi Protected Access」(WPA)の新規格「WPA3」について、新たに脆弱(ぜいじゃく)性が見つかった。それらの脆弱性は以下の攻撃を引き起こす可能性があるという。
- ダウングレード攻撃
- 攻撃者がセキュリティレベルの低い暗号化技術を使ってクライアントに通信させ、トラフィックを盗聴する攻撃
- サイドチャネル攻撃
- 攻撃者がクライアントの利用時間や消費電力を観測して機密データを読み取る攻撃
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脆弱性「Dragonblood」は何を引き起こすか
WPA3の脆弱性を発見した研究者のうち、マティー・バンホフ氏はニューヨーク大学でネットワークセキュリティと応用暗号技術を専攻する博士研究者(ポスドク)だ。バンホフ氏はWPA3の前版に当たる「WPA2」の脆弱性「KRACK」の発見にも関わった。もう一人のエーヤル・ローネン氏は、テルアビブ大学コンピュータサイエンス研究科と、ルーベンカトリック大学コンピュータサイエンスおよび工業暗号化グループの博士研究者だ。
Dragonbloodという名称は、WPA3が用いている無線LANのハンドシェイク(接続確立手法)の「Dragonfly」に脆弱性が見つかったことに起因する。研究者は「DragonflyはWPA3の大きな利点であり、ネットワークのパスワードをクラッキングすることはほぼ不可能なはずだった」と語る。にもかかわらず、なぜDragonbloodのような脆弱性が見つかったのか。
バンホフ氏とローネン氏によると、たとえWPA3を使っていても、標的のLAN内にいる攻撃者は無線LANの接続用パスワードを取得できてしまうことが分かった。具体的には、WPA3によって安全な暗号化を施したはずの情報を攻撃者が盗み見ることができる。通信路暗号化によるトラフィック保護「SSL/TLS暗号化」など追加の対策がなければ、「クレジットカードやパスワード、チャットメッセージ、メールといったセンシティブな情報を攻撃者が盗み出せてしまう」と両氏は指摘する。
さらにバンホフ氏とローネン氏は、認証方法を追加実装するための「拡張認証プロトコル」(EAP)にも脆弱性を発見した。攻撃者がこの脆弱性を突けば、ユーザーのパスワードを取得できてしまう恐れがある。加えて「どんなユーザーにもなりすますことができ、ユーザーのパスワードを知らなくても無線LANにアクセスできる」(両氏)。
ダウングレード/サイドチャネル攻撃の怖さ
WPA3の脆弱性のうち2件はダウングレード攻撃、2件はサイドチャネル攻撃に関する脆弱性だった。「こうしたWPA3の脆弱性に関連するリスクの程度は、どの攻撃が用いられるかによって変わってくる」。ネットワークセキュリティベンダーWatchGuard Technologiesの製品管理ディレクター、ライアン・オーシ氏はそう指摘する。
「ダウングレード攻撃を悪用した攻撃は実行しやすい」というのが、オーシ氏の見方だ。攻撃者はスマートフォンやノートPCといった無線LANクライアントを不正に持ち込む。これらを正規の無線LANアクセスポイント(AP)に見せ掛け、接続したデバイスの情報を盗み取る“悪魔の双子”として使う。具体的には、持ち込んだ無線LANクライアントをWPA2通信のAPとし、無線LANを中継させる。それまで正規のWPA3通信に接続しており、共有鍵を持っている無線LANクライアントに、脆弱なWPA2ハンドシェイクを実行させる手口だ。それにより、攻撃者は既存のWPA2クラッキングツールを利用できるようになる。
サイドチャネル攻撃では、攻撃者は標的の無線LANクライアントをおびき寄せ、MACアドレスを偽装したAPに接続させる。そうしてマルウェアをその無線LANクライアントに仕込む。マルウェアはCPUのパフォーマンスを測定し、パスワードを推測するヒントを得る。オーシ氏は、ダウングレード攻撃よりもサイドチャネル攻撃の方が「より複雑で、悪用は難しい」と述べる。
「リスクはそれほど高くない」と言える理由
WPA3を策定した無線LANの業界団体Wi-Fi Allianceは、声明の中でDragonbloodのリスクは「それほど高くない」との見解を示した。影響があるのは「限られた数の初期段階でのWPA3実装」のみだという。
Wi-Fi Allianceによると、WPA3の個人利用向けセキュリティモード「WPA3-Personal」はまだ導入の初期段階だ。影響を受ける幾つかのデバイスベンダーは既にパッチの導入に着手している。こうした問題は、デバイスの機能に一切影響を及ぼすことなく、ソフトウェアアップデートを通じて回避できる。「脆弱性が悪用されていることを示す痕跡はない」とWi-Fi Allianceは説明している。
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